切原赤也の初恋物語3






(・・・・・・・)
(・・・・・・・)


「……はぁ?」





(どういう意味なんでしょうか)
(はて……言葉通りの意味かの、いや)



頬を染めて、言い辛そうに言葉を発した切原。
その視線は、丸井を真っ直ぐに見つめていてー



「それ聞いて、どーすんだ」

「いるか、いないかで答えてください」

「……いるっつったら?」

「!!」



その一言に、染めた頬は一瞬にして青に変わった。
心なしか肩が落ち、目までうつろになってしまったのか、色が無い。



(…で、どういう意味なんでしょうか?)
(さて……赤也がブン太…いやいや、まさかの)



「おいおい、なんなんだよ」

「…先パイ」

「?」

「……もういっこ質問いいッスか?」

「おう」

「………か?」

「ん?わりぃ、聞き取れかった。何だって?」



(聞こえませんでしたね。何て言ってました?)
(俺の聞き間違いじゃなければ……って、そんなことブン太に聞いて、どうするんじゃ)



「先輩って、ヤったことありますか?!」




ブーッッッ



思わず、口に含んだ水を切原めがけて吹いてしまった。


「げほっ…わ、わりぃ」

「いえ…」



(…それを聞いて、どうするんでしょうか)
(さぁ…とりあえず最後まで聞いてみるぜよ)



「な、なんだ。どーしたんだ、お前」

「答えてくだサイ」

「ヤッたって、おま、何をー」

「先輩、童貞っすか?」

「!!」



(ずいぶんストレートに聞くものですね)
(まぁ、男しかおらんしの)



「…それ聞いて、どーすんだ」

「俺の今後に関わるんス」




(よくわかりませんが…ずいぶん真剣ですね)
(ブン太、どーするんかの)



「……」

「どっちなんです?」



(引かないですね、切原くん)
(俺が教えてやってもええが―)
(あなたは黙ってなさい)
(プリ)



「……ある」

「…っ!!」




(中学の頃、恋人いましたしね)
(あぁ。赤也も見かけてるはずだが。毎回違う彼女だから、そういう認識無かったんかの)
(丸井君も、アナタに言われたくはないでしょうね)
(おまんも人んこと言えんぜよ。年上のお姉サンとー)
(少し黙っていたまえ!)



「……それって、今つきあってる人ッスか」

「はぁ?」

「相手。今つきあってる人?」

「……違ぇよ」



(丸井君、今は誰ともお付き合いされていないですよね)
(しばらくフリー。あんなにしょっちゅう彼女が変わってたとは思えんな)
(珍しいですね)
(本命でも出来たんかの)



「つーか、別にいまつきあってるヤツ、いねぇし」

「!!」


とたん、切原の表情がパァ〜っと明るく輝いた。

が、そのトーンの変わりように、若干引いたのか、丸井は変なものを見るかのように、つい凝視してしまう。



「な、なんだ?恋愛の悩みか?」



とある予感が脳裏をよぎったが、気のせいであって欲しいので…
とりあえず、後輩の可笑しな言動をポジティブに考えてみることにした。



「先輩、俺…」

「あぁ」

「気になるっつーか、なんつーか」

「ん、なに?俺の知ってる子?」

「…はい」

「お!まじか〜2年?」

「2年ッス」

「年上か〜…って、俺の知ってるヤツっつーと」

「つーか、先輩が多分、一番知ってるッス」

「へ?」



(丸井君が一番知っている2年生…?)
(2年でブン太と一番仲良い女子なんて、いたかの)



「わっかんねーな、特別仲いいヤツっていねぇし」

「いつもラケット持ってて…」

「は?」

「俺より背ぇ小さくて、いっつもお菓子持ち歩いてて」

「……たいていの女の子は、お前より小さいだろぃ」

「(無視)テニスもうまくて、トリックプレーが大好きで」

「…はい?」

「一緒にラリーしてっと、いっつも前に出てきて、ボレーばっかなんスけど」

「……。」

「目ぇキラキラさせて、すんげぇ可愛くて」





(…それって)
(ブン太が一番よく知っている……なるほど)
(遠まわしな告白、でしょうか?)
(直球な気もするがの…見んしゃい。ブン太、冷や汗かいてるぜよ)



気のせいであって欲しい。いや、血迷うな!
丸井は若干青ざめつつ、慎重に切原の言葉を聞くがー







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