俺はただ君の手を握って、君は黙ったまま頷いて。



「え…」

月城の瞳が不安げに揺れてる。その様子を見て取れるほどの至近距離。
戸惑ったように瞳を伏せて、俯いた。

「月城は?」
「…」

俯いた月城は何も言わない。

「俺のこと嫌いか?」
「…嫌いやないよ」
「やったら、俺のこと好き?」
「…………好きや」

深く深く俯いたまま、蚊のなくような小さな声で月城が言葉を落とした。
思わず息を飲んだ。
その途端に顔を上げて、潤んだ瞳で俺を見て真っ直ぐに言うた。

「…私も財前くんが、好きや」

言い終わってまた恥ずかしそうに俯いた月城を、ぐしゃぐしゃに抱き締めたかった。
けどぐっと堪えて、ただぎゅっと力を込めて手を握った。
握った手を少し動かして、指を絡めて握り直せば月城の手がびくりと緊張する。
赤なってる耳が見えて、なんや可愛くて、手を引っ張って引き寄せて月城の肩に自分の額を当てる。

「ざ、財前くん?」
「あ〜…」
「ど…どうしたん?」
「あかん、あかんわ」
「なにがやねん」

顔を上げて赤なってる月城の耳に唇をそっと寄せて、

「あかん、月城のことめっちゃ好きや」

そう言ったら月城は赤い顔で笑って、私もめっちゃ好きやと言った。










俺はただきみの手を握って、きみは黙ったまま頷いて。
(隣同士がどこよりも心地よい)


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