残念ながらベタ惚れ
「財前くん…まだ?」
「まだや」
「もうそろそろ限界やねんけど…」
「あかん」
「恥ずかし死んだらどないするん…」
「生きろ」
「ええぇ…」
月城と付き合ってはや三ヶ月。
昼休みの屋上で背後から抱きしめとる状態が彼女は不満らしい。いや不満って言うか恥ずかしいんやろうけど。後ろから見える耳が真っ赤やし。
このまま後ろから見てたい気持ちもあるけどそろそろ顔も見たいから、パッと手を離しそのまま体を反転させてこちらを向かせると昔程ではないにしろ顔は赤くなっていた。
上目遣いで睨んでも効果なんてあらへんってそろそろわからへんのかな。
そのまま今度は正面から抱きしめたれば抵抗するように胸に手を突っ張ってくる。まあ男女の力の差もあるし俺はこれでも全国に通用するレベルのテニス部でレギュラー張ってるわけで、抵抗なんて全く効かへん。
諦めたんか力を抜いたその体を更に抱き寄せる。密着してその首に顔を寄せるとフワッといい匂いがした。シャンプー?あー落ち着く。
「ちょっ…ざっ財前くん!もう無理や!し、心臓が…」
爆発しそう…と小声で言う彼女。なんやそれ。逆効果やろ。可愛すぎて襲いたなる。
ちょっと体を離すと安心したように息を吐いた。その頬に手を滑らすとびくっと震えてこちらを見る。
「紘」
初めて呼んだ名前に彼女の目は見開かれる。そんなとこもかわええなんて思うなんて俺もう末期やん。
「紘」
「ひ…光」
「!…紘、好きや」
名前を呼ばれて嬉しなって、そのまま唇を塞いだ。
好きや、ほんまに。
びっくりしたように見開かれたままの瞳は二回目に触れる時にはゆっくりと閉じられていった。
残念ながらベタ惚れ
(こんなん俺らしくはあらへんけどな)
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