38


「ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!!!」


林にこだまする声に少しびっくりして声の聞こえた方を向く。


『…今の、東堂さんでしょうか?』

「ですね。」

『…みなさんが虎杖くん襲撃を失敗した理由、なんとなく分かりました。』


目の前で眉間に皺を寄せている三輪さんを観察する。刀を武器として使っていて、私の一つ上の先輩。私が真希先輩から聞いていた前情報はそんなところだ。


『…なんで加茂さんから離れたんですか?…術式、京都校のみなさんにも隠してたりするとか?』


どうしても先程の虎杖くんのことが気がかりで、つい発言に圧がかかる。すると三輪さんは気まずそうに下を向いて口を開く。


「…虎杖くんのこと、ごめんなさい。言い訳にはなりますが、私はみんなとは違う。…でも、だからと言って、交流会の方を譲る気はありません!」


三輪さんの口から放たれた真っ直ぐな言葉に、少し目を見開く。なんだか私の京都校の人たちのイメージと違う。朝目があった時も思ったが、きっとこの人はとてもいい人なのだろう。…なんだか少し肩の力が抜ける。


「術師の昇級は推薦制なのは知っていますか?」

『…推薦制、ですか?』

「上級術師に推薦してもらうことで、自分の級を上げることができるんです。縦の繋がりがない術師にも、交流会の話はよく伝わります。ここで活躍した学生には在学中、昇級のチャンスが与えられる。」

『…なるほど、そういうシステムだったんですね。』

「私は少しでも早く自立して、お金を稼ぎたいんです。」

『…どうして、そこまで?』


刀を抜いた三輪さんにヌンチャクを構えながら問うと、真剣な顔のまま言葉を返してくれる。


「貧乏です!弟も2人!!!」

『………あの、大丈夫ですか?京都校でいじめられたりしてませんか…?』

「え?!!……大丈夫です、多分。」


理由がいい人すぎて、気が動転する。こんなに真面目で健気な人が虎杖くん以外に存在したなんて…思わず心配してしまったが、こちらも手を抜くわけにはいかない。


『私も本気で行かせてもらいます。』

「もちろんです!そういうつもりで言ったわけではないので!!」


お互いに武器を構え、睨み合う。真剣な眼差しでこちらを見つめる三輪さんに負けないよう決心して地面を蹴った。

prev- return - 



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -