20
暗闇に飲み込まれた私と野薔薇ちゃんは、落ちた先の真っ暗闇の空間で出口を探していた。
「ちょっと…どこよここ…」
『野薔薇ちゃん、怪我は?』
「大丈夫よ。なまえは?」
『私も大丈夫。…ここ、真っ暗で何も見えないね…』
目を凝らして辺りの様子を伺うが、何も見える気配がない。2人で目を凝らしていると、ふと呪いの気配を感じる。
野薔薇ちゃんは釘と金槌を、私は五鬼助を構える。
見た方向には夥しい数の呪霊が佇んでいた。
「なに、この数…?!!!」
『どうしてこんなに?!』
思わず困惑の声が溢れてしまうほどの数の呪霊に圧倒され、少し後ずさる。
それを見た野薔薇ちゃんは、大きく息を吸って前に出た。
「…ビビってんじゃないわよ、なまえ。さっさとコイツら片付けてあのバカ2人止めないといけないんだから。」
その言葉と共に、先程の険悪な雰囲気の2人を思い出す。…確かに、すぐにでも戻って仲直りをしてもらわないといけない。虎杖くんの表情が曇るのはいただけない。
『…うん。止めに行かなきゃね…!!』
「その粋ね。…行くよ!!!」
飛びかかってくる無数の呪霊を鎌で原型を留めずに切り裂く。
…虎杖くん、どうか無事でいて。
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虎杖side
気がついた時には背後に呪霊がいて、気がついたら手が無くなっていた。
…ここまで近づかれたら逃げ場がない。
「…おい宿儺。俺が死んだらお前も死ぬんだろ?それが嫌なら協力しろよ!!」
俺が力強くそう叫ぶと、表に出てきた宿儺が口を開いた。
「断る。お前の中の俺が消えようとも、切り分けた魂はあと18もある。…とは言え、腹立たしいことにこの体の支配者は俺ではない。変われと言うのなら変わるがいい。
…だかその時は…
呪霊より先にそのガキを殺す。
次に釘の女だ。あれは粋がいい、楽しめそうだ…!
そしてその次は鎖鎌の女だなぁ。あれはお前のことを大層気にかけているからなぁ、お前の体で殺してやるのが楽しみだ…!!!」
「んなこと俺がさせねぇよ!!!」
自分勝手に言葉を続ける宿儺に苛立ちを隠さずに唸るように叫ぶ。だがそんなことは気にせずに宿儺は話を続ける。
「そうだろうなぁ。だが、俺ばかりに構っていると、それこそ仲間が死ぬぞ?」
揺さぶりをかけるように話す宿儺にとてつもない苛立ちを覚える。隣の伏黒を横目に、唾を飲み込んだ。
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(名前)side
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『…上の2人は、大丈夫かな?』
迫り来る呪霊を薙ぎ倒している時にふと上を見上げる。
もちろん2人の姿は見えなかったが、どこまでも広がっている暗闇に不安を覚える。…早く上に戻らなくては。
鎌を握る力を強め、奥から湧き出てくる呪霊に飛びかかろうとすると、先程と比べると少し遠くなった距離まで離れた野薔薇ちゃんの声がこちらまで響く。
「…残りはこれ一本。もっといっぱい持ってくればよかった…」
『野薔薇ちゃん危ない!!!』
釘一本を持った野薔薇ちゃんに襲いかかる呪霊を止めようと、咄嗟に足に力を入れて飛ぶ。
呪霊を斬り伏せると、釘を使い切った野薔薇ちゃんが苦々しく笑う。
「ごめんなまえ、もう釘が…」
『うん。…大丈夫、私が注意を引きつけるから、野薔薇ちゃんは…』
「…おとりぐらいにならなれるわ。なまえ1人じゃ負担が大きすぎる。」
『野薔薇ちゃん……ありがと、無理はしないで!』
不敵な笑みを浮かべた野薔薇ちゃんと私で背中合わせになる。
背中から野薔薇ちゃんが離れたのを確認すると、私は足音を消して呪霊の後ろに回り込む。すると予想通り走る野薔薇ちゃんに向かって呪霊が襲いかかる。
何体かが飛びかかろうとした時、力一杯鎌を振る。
なんとか倒す事ができたが、これがずっと続くかは分からない。
「ちょっと、大丈夫なの?」
『…大丈夫。早くここから出て、虎杖くんたちのとこに行かないと、』
「…それも、そうね。」
2人で顔を見合わせて顔を険しくした後に前を向くと、きのこのような見た目をした呪霊が溢れ出ていた。咄嗟に距離を詰めようとした所で、伸びてきた呪霊の腕が私の体の真横を通り抜ける。
瞬く間に戻っていく腕に掴まれているのは野薔薇ちゃんだった。
『野薔薇ちゃん!!!!!』
呪霊の腕を切り落とそうとした時、私の周りを呪霊が囲んで動けなくしてくる。焦りながら彼女の方を見ると、逆さまのまま啖呵を切っていた。
「お前、顔覚えたからな!絶対呪ってやる…!!!」
『野薔薇ちゃ、』
今にも口に放り込まれそうな彼女の名前を叫んだ時、何かが野薔薇ちゃんを掴み、大きな蛇が呪霊に噛みついた。
それと同時に私の周りにいた呪霊も玉犬が噛み殺した。思わず振り向くと、そこには伏黒くんと蛙に入った野薔薇ちゃんがいた。
「脱出するぞ!釘崎、櫻井!!!」
『うん、分かった!』
「蛙苦手なんですけど…」
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