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『…これは?』


虎杖くんに渡した屠坐魔という武器の説明を終えた五条先生の尋ねると、いつも通りの笑顔でまた口を開く。


「なまえのは呪具・五鬼助(ごきじょ)。それはちょっと特殊かもしれないけど…まぁ大丈夫でしょ。」

『えっそんな適当な…』


想像を超えるアバウトさに若干心配になったが、持った時に変な感じもしないから、多分大丈夫だろう。
……多分。
腰にポシェットを巻いた野薔薇ちゃんがビルに向かって歩き出し、私と虎杖くんもその後について行く。すると後ろから五条先生が虎杖くんを呼び止めた。のんでも、宿儺は出しちゃダメだとか。
まだ言葉を交わしている2人をよそに、野薔薇ちゃんと閉まっているシャッターが上がるかどうかを確かめる。痺れを切らした野薔薇ちゃんが虎杖くんを呼び、3人でシャッターを開け中に入った。


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コソコソと隠れながら様子を伺う虎杖くん。
堂々と中を歩く野薔薇ちゃん。

私はどちらに合わせたらいいのか分からずに、先程受け取った五鬼助を握り締めながら後をついて行っていた。


『…虎杖くん、そんなにコソコソしなくてもいいんじゃないかな…?』

「いや、どっかにいたら大変だろ?」

「はぁ?ビビリかよ、お前。」

『の、野薔薇ちゃんは堂々としてるね…』

「当たり前でしょ。早く終わらせて東京観光したいの。…なんで東京に来てまで呪いの相手なんか…」


愚痴を呟きながら階段を登る野薔薇ちゃんを虎杖くんが引き止める。


「は?呪い祓いに来たんじゃ無いの?」

「…時短よ時短。1人づつに別れましょ。私は上からワンフロアづつ調べるから、虎杖は下から。なまえは…真ん中のフロア見てまわってくれればいいわ。

さっさと終わらせて、ザギンでシースーよ〜!!!」

『あ、うん…』

「ちょっと待てよ。もーちょい真面目に行こうぜ?呪いって危ねーんだよ。」


勢いに押されて相槌をうった私と違い、虎杖くんが野薔薇ちゃんの指示に反対の意見を言うと、それが彼女の間に触ったのか勢いよく虎杖くんを蹴った。


『虎杖くん?!!!』

「最近までパンピーだった奴に言われたくないわよ!さっさと行け!!!…さ、行くわよなまえ。」


階段から転げ落ちた虎杖くんが心配だったが、階段の上から無事を祈って、少し怒り気味で階段を登る野薔薇ちゃんの後をついて行った。

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No side

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虎杖、釘崎、櫻井の3人がビルの中での行動を進めている頃、外では五条と伏黒が座り込んで話をしていた。


「やっぱり、俺も行ってきますよ。」

「無理しないの。病み上がりなんだから。」

「…でも、虎杖は要監視でしょう?」

「まぁね。でも…今回試されているのは、野薔薇の方だよ。」


五条の言葉の意味が分からなかったのか、伏黒が不思議そうに首を傾げる。
その様子を見て口角を上げた五条はまた口を開く。


「悠二はさ、イカれてんだよね。
異形とはいえ、生き物の形をした物を、自分を殺そうとしてくるモノを、一切の躊躇なく取りに行く。君みたいに昔から呪いに触れてきたわけじゃない。普通の高校生活を送っていた男の子が、だ。」

「才能はあっても、この嫌悪と恐怖に打ち勝てず、志半ばで消えて行った呪術師を、恵も見たことがあるでしょ?」


その言葉に納得したのか、伏黒も神妙な顔つきで頷く。


「あぁ、そうそう。イカれてるのはなまえもね。」

「…櫻井も、ですか?」

「うん、もちろん。
ひょっとしたら、悠二よりイカれてるのかもしれないね。…なまえは悠二のためだったら本当になんでもする。」

「確かに、アイツがそう言っている所は俺も聞いたことがありますが…」

「でしょ?…俺は楽しみで、怖いんだよ。なまえがさ。」


そう言って怪しげに笑う五条を訝しげに見た伏黒は、なんと言ったらいいのか分からず口をつぐんだ。
そんなことは気にも止めず、また五条が口を開いた。


「今日は野薔薇のイカれっぷりを確かめたいんだ。」

「でも、釘崎は経験者ですよね?今更なんじゃないですか?」

「呪いは人の心から生まれる。人口に比例して呪いも多く、強くなるでしょ?

…野薔薇に分かるかな?地方と東京じゃ、呪いのレベルが違う。」

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