14
「なまえ。君は呪われてるんだよ。」
『………え?』
呪われている。…私が?
その言葉を聞いたときに冷や汗が出る。いつ、どこで、なぜ?混乱しながら掌を見つめてみるが何もない。
「さっき面談をしていて不思議なことはなかったかい?」
『…不思議こと……あ、』
先生が言っているのは、先程のとてつもない力のことだろうか。人形を破壊してしまうような力は、残念ながら私にはないはず。
そのことを口に出すと、正解だよ、と口元を緩めてから軽く私に問いかける。
「なまえの呪力はそこからきているみたいなんだよね。あと…悠二。」
『虎杖くん…?』
「そう。なまえの呪力が莫大な量になるのはいつも悠二が関係してる。きっと…君の悠二への思いが比例して強くなっているんじゃないかな。うーん…なんか、悠二との思い出的なものって持ってる?」
『思い出ですか…あ、これ…』
スカートのポケットに入れていたスマホを取り、付けてある桜柄のキーホルダーを見せる。
このキーホルダーは昔虎杖くんが誕生日プレゼントでくれたもので、ずっと大切にしている。
それを見せると、顎に手をやりながら少し見つめ、そういうことかと笑う。
「はは、すごいね。なまえは自分で自分のこと呪ってるみたいだ。」
『え?!!ど、どういう?!!』
「このキーホルダーが器になって、ずっとなまえが溜め込んできた呪力がコントロールできるようになってる。呪いの正体は…自分自身ならすぐに分かるんじゃない?」
『えぇ…そんな…』
軽快に笑い飛ばす五条先生は、戦ったりするのはこれからでいいと言ってから学長に向き直る。
すると学長も小さく頷いてから言葉を発した。
「寮へ案内してあげるように。…ようこそ呪術高専へ。」
『…はい!ありがとうございます!』
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「じゃ、なまえの部屋は向こうね。今日はもう何もないからゆっくりしててね。」
『あ、はい。分かりました。ありがとうございます!』
「じゃーななまえ!また明日!」
『うん、また明日!』
寮まで案内してくれた2人に手を振り、女子寮の言われた部屋に入る。
持ってきた荷物は既に部屋の中に入れられていて、私もベッドの上に手荷物を下ろす。
それからベッドの上で仰向けに寝転ぶ。明日から、私の新しい生活が始まるのだ。
『…やばい、なんか今更緊張してきた…』
翌日、私たちは憧れの都会、原宿に足を運んでいた。
多くの人々が行き交う駅前で、私と虎杖くん、そして伏黒くんの3人は連絡をしに行った五条先生を待っていた。
「1年がたった4人って少なすぎねぇ?」
「じゃあお前、今まで呪いが見えるなんて奴に会ったことあるか?」
『確かに無いね…』
「それだけマイノリティなんだよ、呪術師は。」
「…ていうかさ、俺となまえで4人って言ってなかった?」
『あ、そっか。4人ならもう既にいるはずなのに…』
「入学自体は前から決まってたみたいだぞ。」
呪術高専は特別な学校だし、なんらかの事情があるんだろう。そう言って伏黒くんは目を伏せる。
すると、帰ってきた五条先生が私たちに手を振りながら近づいてきた。
「おまたせ〜!…って、おぉ。制服間に合ったんだね。」
「おー、ぴったし!でも、伏黒とはちょっと違うんだな。」
そう言って自分の服装をまじまじと見る虎杖くんの制服には伏黒くんの物と違い赤いフードが付いていたりして一味違うものになっている。
私の制服は2人と同じような学ランにスカート、あとは制服に付いていた手袋を付けている。邪魔になるかと思ったけど、想像よりも邪魔ではなかったので少し気に入っている。
「…というか、なんで原宿集合なんですか?」
「本人がここがいいって。」
「あ、ポップコーン食いたい!!!」
『あ、虎杖くん落ち着いて!』
はしゃぎながらお店を見て周る虎杖くんについて行くようにして通りを歩いていると、女性に声をかけている男性が横目に見える。
しばらく見ていると、スカウトをしているのだと分かる。でも、その女性は興味が無いようで通り過ぎていった。肩を落とす男性の腕を私と同じ学ランの女の子が掴む。
「…ちょっとアンタ、私は?」
「(私は?!!!)」
その女の子は確かにすごく美人だし、切り揃えられた髪もすごく似合っている。…でも、スカウトマンに自分から行くなんて、すごい行動力だ。
そんな風に考えていると私の隣で虎杖くんが口を開く。
「…俺たち今からアレに話しかけんの?ちょっと恥ずかしいなー」
『虎杖くん…それは…』
「…お前もだよ。」
ポップコーン片手にサングラスをかけた虎杖くんに苦笑いで返す。すると伏黒くんも同じ心情だったようで、2人で顔を見合わせて軽く息をついた。
その時五条先生はその女の子に声をかける。
「おーい、こっちこっち!」
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