金髪の心優しい少年
本当に彼は来るのだろうかという半信半疑な思いで翌日も昨日と同じ時間に中央区へ向かった。そこでゴミを漁りつつ待つこと数時間、いよいよ南区まで行ってあいつをとっちめてやろうかと考え始めた時、ようやく彼はやって来た。
「ごめんごめん!遅くなっちゃったね。はいコレ」
全く心のこもっていない謝罪をしてカメラを私に差し出してきた。おそるおそるそれを受け取る。見た目は見つけた当初となんら変わっておらず、ボロっちいままだ。
手が震えるのを抑えながらスイッチを入れると、電源ランプが静かに点灯した。
「ふおぉぉぉ…」
またお前を使う事ができるのはもっと先だと思ってたよ…。一眼レフやデジカメなんてスペックは関係ない。写真が撮れればそれは立派なカメラだし、大切なのは写真を撮った時の気持ちや写真に込められた想いだ。無機質な感触、つぶらなレンズ、カメラの全てが愛おしい。やばい、ここ8年で一番感動してるかもしれない。
「ありがとう、シャルナーク!!ずっと欲しいって思ってたの!」
シャルナークの手をとり、ぶんぶんと握手する。本当に彼は良い奴だったのだ。ごめん、中身真っ黒とか思って。カメラパクっていったかもって疑って。
「…っ喜んでもらえて何よりだよ。まぁ俺にかかればこんなもんちょちょいのちょいだし?てかシャルナークって長いからシャルでい「そうだ!シャルナーク、せっかくだから一緒に写真撮ろうよ!!」え?」
「インスタントカメラだから撮ったらすぐ写真が現像されるし、時間はかからないから!ね、いいでしょ?シャルナークに写真の良さ知ってもらいたいの!」
「…まぁ、イイけど」
「やった!!じゃあ早速いくよー!」
2人できちんと写るために、シャルナークに近づきシャッターを押した。
「ハイ、チーズ!」
きゅぃいんと音の後、少しの時間をあけてカメラから1枚の写真が出てきた。うん、写り具合も問題なし。
「じゃあこれ記念にあげる!」
「えっ、ちょっ、いらないんだけど!」
「そんなこと言わないでよ!ありがとうシャルナーク!!あなたのおかげで写真が撮れるようになったし、良いアイデアも浮かんだ!じゃあまたね!」
能力のアイデアも思い浮かんだことだし、ここから廃教会のある北区までは遠い。そろそろ帰らないとマリア先生に要らぬ心配をかけさせてしまう。シャルナークに手短にお礼を言って中央区をあとにした。
彼が何か言っていたのが聞こえたが、その時には私と彼の間は遠く離れていたので何を言っているのかまでは聞こえなかった。
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