これまでの人生

皆さんこんにちは。突然ですが、私のこれまでのことについて語らせてください。


もう随分前の事になりますが、当時の私は三度の飯よりアニメや漫画(BL含む)、乙女ゲームを好む普通の女の子でした。しかし不幸にも事故に遭ってしまい、私は死んでしまったのです。
え?じゃあ今どうしてるのかって?
そうなのです。あれから私はどういうわけか俗に言う転生トリップなるものをしたようで。

転生トリップ…それはオタ女なら誰もが一度は夢見て想像し、学校の授業を放棄した経験があることでしょう。私もそんな乙女の1人でした。

だからこそ「あれ、これ転生トリップじゃね?」と気づいた時、夢のような状況に歓喜しました!

そう、あの声を聞くまでは。

『奥様おめでとうございます!とても可愛らしい銀髪の女の子にございます!』

『キャァァァア!!!!早く見せて頂戴!!あぁ、なんて可愛らしいのかしら!!!この少し癖っ毛な所とか、セレスティアンブルーのぱっちりした目があなたソックリね!きっととても良い殺し屋になれますことよ!!ねぇ、あなたっ!』

『あぁ、そうだな。これからが楽しみだ』

『早速明日からミルクに毒を混ぜましょう!!!!』

『まぁそう焦るでない。時間はこれからたっぷりあるからの』


それは以前よく聞いていた声でした。HUNTER×HUNTERという、アニメ(新しい方でした)で。

私がHUNTER×HUNTERに転生トリップしたという事実が発覚した瞬間でした。


HUNTER×HUNTERとは休載が多いにもかかわらず世界中で大人気のお話です。勿論私も大好きでした。そりゃもう何回も読み込んだりアニメを見まくったりした記憶があります。
けれども、同時にHUNTER×HUNTERは死亡フラグ満載の話としても有名です。
神様に問いたい。何故この世界なのかと。
因みに私が1番期待していた転生先は歌プリの世界でした。あそこでイケメンに囲まれてマジLOVE1000%したかった…。この世界ってマジLOVE1000%どころかマジDETH1000%じゃないですか。
見る分には良かったんです!猫目でキューティクルな暗殺者とか、額に包帯巻いた盗賊さんとか、素顔は綺麗な奇術師さんとかカッコ良かったし。
夢小説も読み漁ったりしましたよ。 けれども、それと体験するのは別です。しかもよりによって転生先は泣く子も黙るゾルディック家。何がどうなってあんな危険の宝庫な一家の一員になってしまったのか見当もつきませんし、ハッキリ言いますとビビリな私に殺しなんて出来っこありません。
しかしビビリなのでシルバお父様やイル兄様に逆らうこともまた出来ませんでした。


訓練はとても辛いものでした。
食事には毎回致死量の毒が盛られ、拷問の訓練と称し電撃、鞭打ち。ミケとのリアル鬼ごっこ…。思い返せばキリがありません。よく今まで五体満足でいられたと思います。
念の修行もしました。
どうやらこんな私にもトリップ補正というものが付いていたようで、自分で言うのもアレですが念の才能はピカイチだったのです。発以外はお父様に合格点を貰うことができました。

そして転生トリップお約束の特質系だった私は家族から喜ばれ、念の基礎が終わった後はどのような発を創るのかと期待(プレッシャーともいう)される日々でした。

平和に生きたい。

けれどもこの家は平和とは程遠い。

私は能力を開発する際思いました。
自分の能力をゾルディック家から逃げ切る為のものにしようと。そしてある程度の歳になったらここから逃げて普通に暮らそうと。
そして前世で読んだ漫画を参考に私は家族にこっそり内緒で能力を完成させたのです。


初めて殺しをしたのは5歳の時でした。ターゲットの断末魔、飛び散る血、自分の手に握られた心臓の生温い感触……今でもハッキリと思い出すことができます。拙さはあるがなかなかセンスがある、とお父様には褒められましたが、またそれを味わうのが嫌だった私はそれからというもの暗殺を極力サボり、家に引きこもってきました。
お母様には大変なヒステリーを起こされましたが、そんなのより自分が優先です。知ったこっちゃありません。
しかしいつまでもこのままではいられないでしょう。
ついこの前これで人を殺せるようになるよ、とイルミ兄様に針を埋められそうになりました。あの時は間一髪で阻止する事に成功しましたが、次はどうか分かりません。これ以上暗殺をしないとそれこそ本当に洗脳されてしまうでしょう、キルアのように。
そうなれば終わりです。体術では圧倒的に彼の方が上なのだから。

さて、明日から2日間はお父様とお爺様とイル兄様がいないというまたとない絶好の機会。


明日、私はこの家からおさらばします。 皆さん、どうぞ見守っていてください。