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私の前で遠慮も恥じらいもなく嘉くんの腕に絡みつくさち子。別に気にしないけど、今に始まった事じゃないし。
見向きもしないでそのまま教室の中に入る。一度自分の持ってた教材を教卓に置いてからもう一度廊下に出て嘉くんが抱えているそれに手を伸ばす。
「嘉くんありがとう。」
「あ、ごめんね。」
「…ごゆっくり。」
ニッコリ余裕の笑みを浴びせたものの、内心は腸が煮えくり返りそうなくらいで。
席についた途端、誰にも聞こえないように溜息を着いた。
ぐだーっとつくえに寝そべる私の前、隣の席の澤本夏輝が私を見て「えらい、えらい。」優しく頭を撫でた。
私のよき理解者でもあるサワは私の片想いを知っている。
「俺思うんだけど、加納はそれほどあの女のこと好きそうに見えないんだよねーどーしても。女から告ったんだよね?確か、」
「…うん。告白されちゃった!って、喜んでたけど?」
「ほら、押しに弱いんだよ。」
そこまで言ったサワは、顔の前に指をニュイっと出してちょっと悪そうな顔で続けたんだ。
「作戦A!ゆき乃から強引に押し倒せ!」
…なんて作戦よ。そんな事できるわけないのに。
思いっきりサワを睨みつけると、なんてことないって笑顔を私に向けるんだった。
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