Summer | ナノ


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令和元年夏。

この界隈を牛耳っている暴走族チームsphenos(スフェーン)。

頭の神谷健太は札付きのワルなんてレッテルが貼られていて、健太と目が合えばみんなボコボコにされる…なんて噂すら飛び交っていた。

毎夜、毎夜、街道を唸りを上げて走るその姿は、いつ死んだっていいって顔をしているとか、いないとか。

物好きな女子達は、皆sphenosの事ばかりを口にしていたなんて。

専ら微塵も興味のない女も一人、ここにいるけど。

そう私にはそんな奴らの事はどーでもよくって、この夏までに叶えたい夢があるんだ。


「ゆき乃!持つ持つ、それ。たく女子にこんな重いの持たせるかなぁー。」


ひょいって横から先生に頼まれた資料を奪い取ってくれたのは、同じ級長の加納嘉将くん。震災の後、仙台から東京へと引っ越してきた嘉くんは、柔らかい雰囲気でいつも優しくていつも笑顔で、何より笑うと見える八重歯が可愛くてすぐに好きになった。


「わわ、ありがとー。優しいなぁ、嘉くん。」
「これぐらい俺じゃなくても持つって。ゆき乃は俺の事褒めすぎ!」


だって好きなんだもん。好きだからいっぱい褒めたいんだもん。なーんて心の声は当たり前に出せるわけもなく、恋に臆病な私は照れ笑いするだけ。

本当はこのモヤモヤした気持ちを全部嘉くんに打ち明けてしまいたい。

でも…――――――「嘉将くん!」…特段可愛いと思えない至って普通の彼女が存在していた。




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