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「なんのことだ?」
なっちゃんが一歩近づいた瞬間、アイリって呼ばれた友達がさち子の手を思いっきり掴んで走り出した。
ほんの一瞬見えたんだアイリの左腕に刺青が。それが何なのか、突然でよく分からないんだけれど。
「…なっちゃん、なんて言ったか分かった?」
「…いや、分からなかった。」
そう言うも眉間に寄せたシワはそれからチームの暴走が終わっても直らなくて。
その日健太達と話し込んでいたなっちゃんは、長い時間ずっとVIP部屋から出て来なかったんだ。
なんとなくモヤモヤしたまま眠りについた翌日、夏休み前日、うちのチームは揃って学校に顔を出すのが決まりだった。
みんなちゃんと制服も着て、髪も整えて。なぜだか分からないけど夏休み前日だけは全員登校が決まりだった。
健太と揉めたあの日以来、ネコも今日は登校するはず。未来も…。
毎朝時間前にうちの前に止まるサワのバイク。外で一服しているサワの元に駆け寄ると爽やかな笑顔で「おはよ!」って。
外見だけ言うなら全く不良要素のないサワ。髪だって真っ黒だしチャラくない。制服も着崩れすることなくきちんと着ている。
白シャツに黒パンツ。一見リーマンに見えかねないのはクールビスでしなくても良いネクタイをきっかりしめているから、だと思う。
眠そうな顔で私の後ろから出てきた2人はどう見てもチャラい。
それでも私をバイクの後部座席に抱き上げるサワはうちのチームの幹部で、この人がいないと私は外を出歩けない。
「サワ、なんか嫌な予感がする。」
「どうしたの?急に。」
「わかんない。でもなんか胸がザワザワしていて。夏休み何も起こらないよね?」
「大丈夫だよ。何かあってもゆき乃は俺が守るから。」
サワの言葉にメットの紐をカチっとはめて大きな背中に顔を埋める。
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