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「ゆき乃ちゃん!」
…嫌この前、アンタ呼びされていたはずだけど?って思いつつ、なるべく引きつらないように笑顔を返す。
「夏喜くん、こんばんわ!」
黄色い声になっちゃんは視線をズラして「誰?」思いっきり睨んでる。私に話しかける=護衛の対象なわけで途端に無表情になった。
「あ、同じクラスの嘉くんの彼女さん。」
「さち子です初めまして。その情報間違ってるけどね?もう別れたから。」
「えっ!?な、なんで!?」
「そんな事より、何してるの?」
完全に私の質問を吹っ飛ばしてなっちゃんに話かけている。
やっぱり嘉くんは適当に遊ばれていたんじゃないかって思うわけで。
煮え切らない。
俯いて唇を噛み締めていたら急に後ろからなっちゃんに抱きしめられる。
「なっちゃん!?」
「なんでそんな悲しい顔?もしかして、嘉くんのこと?」
耳元で小さくそう言うなっちゃんに胸の奥がギュッとなる。でも逆にさち子の表情が一変するのが分かった。
「ちょっと!」
さち子が一歩こっちに踏み出すも、なっちゃんが軽く私事後ろに引いた。
そんな光景を見てさち子の横にいたネコ似の女がさち子の腕を掴んだ。
伸ばした腕からほんのり見えた何かの刺青?女のにそんなのいれてるの?
思わずそこをジッと見つめてると、それを隠すように腕を引く。そして、
「やめときなよ。あんた勝ち目ないよ?この人に手出したらsphenosごとかかってくるよ。悪いけどあたしは助けないから。」
さち子が悔やむ顔を見るのはザマミロって思うけど、嘉くんを思うとやっぱり胸が痛い。
「こんなチャンスそうそうないのに、」
「あのさ、ゆき乃さんに絡んだらその物分りのいい友達の方、抱くよ?アンタの目の前で。」
なっちゃんから殺気すら感じ取れる。自分に好意があるって分かったんだ、なっちゃんは。
だけど、途端にクスって鼻で笑ったのはさち子の方で。
え、なに?
「アイリにそっちで落とせない男なんて一人もいないよ。それぐらいすごいんだから、あのクス、」
「さち子!!!!」
…え、なに?
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