Summer | ナノ


▼ 15

世間一般的には間もなく夏休みを迎えるそんな時だった。

今夜もチームsphenosは街道を唸らせている。

こんな時ぐらい走らなくてもいいのに?なんて思うけど、真っ白なサラシの上、黒い二匹の昇り龍の刺繍が入った特攻服を羽織ってバイクに乗る健太。

でもそれは、逆に配下のチームだったり、敵対するチームに、至って変わらない日々を送っているってことを見せつけているものでもあった。

勿論ながら走りになんて参加できない私は倉庫の傍にあるコンビニで時間を潰していた。いつも交代で誰かしら護衛で残ってくれる。

今日はサワが走りに出ているからなっちゃんが隣で煙草を銜えて護衛をしてくれていた。


「ごめんね?私のせいで。」
「…え?」
「走りたいでしょ?なっちゃんも。」
「あー別に。いつでも走れるし。」


普通に瓶ビールを飲むその姿は単純にかっこいい。だから思い出した、嘉くんの彼女を。


「ねぇなっちゃんはさ、彼女とか作らないの?」


この手の話にあんまり興味無さそうに見えるからちょっと遠慮しながら聞くと「いや、欲しい。」意外な答えが返ってきた。

思わず目を見開く私にふわりと微笑む。


「意外、でした?」
「うん!なんかバイクと喧嘩しか興味無いように見えた。」
「まぁ、そう見せてます。面倒くせぇし。俺追われるより追いかけたいタイプなんで。」


超意外!全然想像できない!!


「…ちなみに、どんな子がタイプなの?」
「…可愛い子。」
「…顔が?」
「そう。」


まさかの顔で選ぶタイプだったとか全く想像もしていなかったものの、みんなの恋愛観なんてそもそも知らないし。そんなトークをすることもないし…。


「誰かいいのいるの?」


不意に浮かんだ、嘉くんのさち子。…の、友達。友達っていえど、やっぱりさち子なんじゃないかって今だ疑っている。言おうかどうしようか、迷っていたその時だった。

コンビニに向かって歩いてくるさち子の姿。隣にはネコにちょっと似ている細見の女も一緒で。


「さち子ちゃん!」


ついうっかり声をかけてしまった私の隣を見たさち子が、パアーっと頬を赤らめたなんて。



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