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「…本当に友達、なの?さっきから聞いてると、あなたがなっちゃんの事好きそうに見えちゃうんだけど。」
「…それ関係ある?」
「大あり!仮にも嘉くんがいるのに、」
「…じゃあ嘉将あげるから、堀夏喜と会わせてよ?」
さち子の口からそんな言葉が出てくるなんて。今の嘉くん聞こえてない、よね?チラリと見るとまだサワと話していて…
「好きじゃないの?嘉くんのこと。」
イエスって言ったらぶん殴る。なんて思っていた私に、髪をさらりとかきあげたさち子は「好きに決まってんでしょ!」…ちょっと拍子抜け。
それはちょっと安心したけど、でもなんだろうか、この虚しさ。もう嫌だ。
小さくため息をついた瞬間サワが私の手を掴んだ。
「健太から呼び出し。ゆき乃も連れてこいって。」
そう言うとさち子を見て「話は終わりだ。クソ女。加納、女のしつけはしっかりしとけや。」チッて舌打ちをお見舞いすると、嘉くんが苦笑いで目を逸らした。
等のさち子はまだ話したそうな顔で、でもサワが一瞥するとビクッと肩を竦めた。
「嘉くんまたね!」
「うん、ありがとうゆき乃!」
ドアが閉まるとサワが私の肩に手を回す。
「たく何やってんの、お姫様は。」
呆れた顔だけど、その中に見えるのはただただ優しさだけで。
「サワ、ごめんね。いつもいつも付き合わせて。」
「チームの誰より俺がゆき乃の傍にいて、ゆき乃を分かってるってのは、結構快感だから別にいいよ。」
「なんかズレてない?」
「どこが?正常よ!」
クスッて顔を見合わせて笑うと、そのままサワのバイクの後ろに抱き上げられた。迷うことなくサワの背中に頬をつけると、お腹に回した腕にそっとサワの手が重なった。
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