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完全に後ろにいるサワにビビってる…かと思いきや、嘉くんの彼女さち子はそんな素振り微塵も見せずに近寄ってきた。
もちろんすぐ傍にサワもそれから嘉くんもいて。
「なに?話って。」
私が聞くと視線を嘉くんに移す。だから、なのか、嘉くんが途端にサワに話しかけ初めて…ーーー
「聞かれたくないってわけ?」
小さく言うと私の耳元で小さく言ったんだ。
「堀夏喜くんとどうしても会いたい。」
「え?」
想定外の言葉に思わず素っ頓狂な声が漏れた。ここにきて、なっちゃん!?
小首を傾げた私の前、「と、友達が!本気で好きで。だからどうしても1回会いたいの。どうにか取り持って貰えない?」…懇願された。
つい視線をサワに移すと、嘉くんと話しながらもこっちを見ていて、どうした?ってその顔に書いてあるのが分かる。
苦笑いで首を横に振るも、なっちゃんそーいうの絶対嫌い、だよねぇ。
「あのなんか勘違い、してない?…たぶん無理だよ、なっちゃんはそーいう回りくどい事嫌うから。興味があるなら自分で辿り着けなきゃなっちゃんは落とせないと思う。」
私の言葉に唇を噛むけど、嘉くんは?嘉くんと付き合ってるんだよね?
だって目の前のさち子は、もはや嘉くんの彼女というよりも、なっちゃんに興味があるようにしか見えない。
「それが無理だからこうやって頼んでるんじゃん?」
ほんの少し声を荒らげるさち子。
「…何度言われても無理なもんは無理なんだけ、」
「てかあんたさ、好きな男ぐらいいるよね?」
…は?何突然!!つい視線を嘉くんに移すと、一瞬目が合う。慌てて逸らして視線をさち子に戻す。
「それ関係あるの?」
「いや。好きな人いるなら、こっちの気持ち少しは理解できるよね?って、」
…そんな事言われても。
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