満天の星空ときみ。 | ナノ


▼ 踏み出せなくて

お昼休み、カフェを覗くと確実にフライングしただろうネコと恋人の神谷健太が仲良く定食を食べている。

お盆にオムライスを乗せた私がコトっとそこに行くとネコが「ゆき乃さぁん!」泣きついてきた。


「またナオくんに怒られたんでしょ、ネコ。」

「だって直人さん酷い!あんなに怒らなくてもいいのに。鼓膜が敗れるかと思った。」


容易に想像できる直人の怒鳴り顔。


「自称風紀委員だからね、ナオくん。それにしても、会議中に握るなんてある意味すごい度胸!」


ヘラヘラ笑っている沖縄出身の健太の頭をポコっと小さく殴ると「すいません。」肩を竦めた。


「仲良しなのはいいけど、なんかあった時にネコを守れない男にはならない事、いーね?健太。」

「もちろんっす。姉さんにも迷惑はかけません!」


管理課にいた時の直の後輩だった健太は、私を姉さん呼びしていて、それが特別感があって羨ましいってネコは言うんだけど。

彼女はネコだからね。羨ましいも何もありゃしない。

人間はこんなにも他人を好きになれるもんだと、毎度ネコには驚かされる。私って人間が冷めているのかもしれないけど。



結婚しようと思っていた女を振って私って女に求愛してきた直人の想いがどうしても分かりきれなくて。

もしも私が直人の想いに応えたとして、元カノと同じように寸前で心変わりをされたら…なんて考えるとそれだけで怖くて。

直人の事を好きな気持ちはあるものの、やっぱり恋愛に対して臆病になっている自分の殻から今だ抜け出せずにいる。



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