百人一首題-017

白という色は実に美しい色だと思う。
その一色だけでも眩しいほどに存在を主張出来るというのに、他の色ともすぐに調和してしまう。
それはまるで誰の心にもずかずかと土足で踏み込んできておいて、いつの間にか心を奪っていった奴のようだ。
着物のせいだけでも、肌の色のせいでもない。
奴の心にもそれは当て嵌まる。
誇り高きそれはまさしく純潔と言えよう。
だからだろうか、何度その姿を見ても気持ちが高ぶってしまうのは。

布団の上にいつもは結われている黒い髪がはらりと散らばっている。
着物は乱れ、目を潤ませている兼続はいつ見ても何度見ても見飽きることがない。
組み敷いた兼続は自分より大きいはずなのになぜか儚げだ。
息を乱しながら恥ずかしそうに視線をつーっと流す姿は本当に自分より年上の男かと疑いたくなるほどだ。
白い頬は上気して紅く染まっている。
いや、頬だけではない。
兼続の白い肌すべてが紅く染まっているのだ。
まさに純潔と呼べる兼続を、美しく紅く染め上げているのは自分自身だと思うと興奮で背筋が震える。
口を吸うのをやめ、普段は見えない上からの眺めを楽しむ。
壊れ物を扱うかのようにそっと頬に手をやると、兼続がそれに手を重ねてきた。

「今日はやたらと時間を掛けるな」

いつもは若さ故に貪るように快楽に溺れてしまう。
このようにゆっくりと兼続の姿を見たのは、初めてかもしれない。
重ねられた手を組み替え指を絡める。
たまにはこういう夜もいいかもしれない。
そう思っていると兼続が気まずそうに視線を横に投げた。

「政宗・・・、私はあまり長く焦らされるのは好きではないようだ」

躊躇いながら言った言葉に目を丸める。
純潔だと思っている兼続から求めるようなことを言われたのだ。
腰をゆっくりとひくと、薄く開かれていた兼続の唇から声が漏れた。
兼続の心さえも紅く染めているのだと実感して、政宗は思いっきり腰を打ち付けたのだった。

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