小説 | ナノ



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そう、俺は覚えている…


あれはたしか数ヶ月前、

神羅ビルの非常出口だった



(ピッ、ピピッ、……)
(…ブー!!)



「…これも違うのか…」



ドアのロックセキュリティの前でため息を吐く一人のソルジャー

暗証番号を間違えたのはこれで2回目だ

もう一度チャレンジしようとしたその時、



「おーい、そこのロック、3回間違えると警報鳴るぞ?」



後ろから声をかけられ、驚いて振り返ると壁にもたれてこちらを見ている人物

黒髪短髪で、身を包んでいる黒いスーツには見覚えがあった



「その服は……タークス…!!」


「何してんだよ、こんなとこで」



にこやかに近寄ってくるタークスにソルジャーは軽く後ずさった

一般兵ならまだしもタークスに出くわすとは…



「…………」


「ボクが見た感じ、脱走ってとこ?」


「…………」



黙り込むソルジャーにタークスは口を尖らせた



「ねぇ、答えてよ」


「……関係ないだろ」



ぼそりと呟くとタークスは軽く目を見開き、スッと細めた



「へぇ…そういう事言うんだ?ボク、携帯持ってるからいつでも仲間呼べるよ?」



不適な笑みを浮かべ、タークスはソルジャーの目の前で携帯をチラつかせる

それを一瞥してソルジャーは軽く舌打ちをした



「脱走、するの?」



再度問いかけられ、ソルジャーは観念して頷いた



「…………あぁ」


「ふぅん…じゃあ、ボクも連れてってよ」


「はぁ?!」



突然の事に拍子抜けた声が出るがタークスは気にした様子などなかった



「よっし。代われ、クラウド」



ドアと暗証キーを交互に見てポチポチと番号を押すタークス

その手際の良さに驚きながらも、ソルジャー──…クラウドはタークスに問いかけた



クラウド:「何でアンタが俺の名前…」


「前に会っただろ。…忘れたの?」


クラウド:「……アンタと…?」



こいつと会ったことなどあっただろうか?

…タークスとはなるべく関わらないようにしていたから覚えていないのかもしれない

と、そんなクラウドの考えを察したのかタークスは軽く頬笑んだ



「まぁ、忘れられても仕方ないけどね。それと、ボクの名前はユリア。“アンタ”じゃないよ?」


クラウド:「ユリア…?」



その名前には聞き覚えがあった

でもたしかこの名前の人物は…



クラウド:「女…だよな?」



目の前にいるタークスの口調と名前の人物の性別が一致しない

だが、このタークス──…ユリアの容姿はたしかに女性らしさがある

クラウドの真面目な質問にユリアは吹き出した



ユリア:「あはは、男に見える?」


クラウド:「いや……」


ユリア:「別に気にしてないよ。男に見られた方が嬉しいし…」


クラウド:「なんで?」


ユリア:「まぁ、いろいろ。……解除完了!!クラウド、行こう」


クラウド:「あぁ」





それが、俺とユリアの出会い

初めてだけど初対面じゃない

そんな出会いだった



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