09
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ユリア:「ここが……ウータイ?」
数年前に見た景色とはだいぶ違っていて気付かなかった
昔は栄えていたのに、今じゃただの観光地となっている
いったい何が………
ユリア:「あ。ウータイ、負けたんだ……」
昔、ウータイは神羅に歯向かって戦争を仕掛けてきた
が、神羅の力に勝てるはずもなく、鎮圧されてしまった
だから今のウータイがあるのだろう
レッドXV:「ユリア、何してるの?早く行こう!」
ユリア:「あ、おう!」
辺りを見回しながら村の中を歩く
と、とある店の前に人が立っているのが見えた
目を細めてみると、身なりやら何やらで明らかにユフィだと分かった
ユフィ:「あっ!!」
こちらの姿を確認すると、慌てて店の中に駆け込んでいく
ユリア:「レッドXV!クラウド!いたぞ!」
レッドXV:「よっし!絶対に捕まえてやる!!」
ユフィの後を追い、勢い良く店に入る
と、そこにいたのはユフィではなかった
イリーナ:「お、お前達!?ユリアも!?なんでこんなところへ……」
ユリア:「最悪……」
イリーナの隣には赤毛とスキンヘッド
どうやらタークスは休暇中だったらしい…
イリーナ:「そんなことどうでもいいわ!私達タークスに会ったのが運のつき!」
レノ:「…イリーナ、うるさいぞ、と」
イリーナ:「せ、先輩!?」
思いもよらない言葉に目を見開くイリーナ
十分に意気込んでいたためかショックも受けている
レノ:「俺達がこんな田舎に来てるのは何のためだ?」
イリーナ:「そ、それは、休暇をとって日頃の疲れを癒すため……です」
レノ:「せっかくの休暇がつぶれちまうぞ、と」
イリーナ:「で、でも……」
ルード:「…せっかくの酒もマズくなる」
イリーナ:「…はい……」
どこか納得していない表情だったが、渋々と席につくイリーナ
……確かにイリーナの気持ちも分かる
けど、ちゃんと休んどかなきゃ保たないぞ?
ま、敵のボクが言うことじゃないけど!
クラウド:「行くぞ、ユリア」
ユリア:「へ?クラウド?」
ふいに腕を引かれ、軽くよろめきながら歩きだす
どうしたんだろ、急に…
(ドンッ!!)
テーブルにグラスをを叩きつけるように置くレノ
なぜかこちらを睨んでいる
クラウドは立ち止まり、レノと向き合った
ユリアの腕は離さぬまま…
レノ:「…お前……」
クラウド:「…………」
レノ:「そうしていられるのも今のうちだけだぞ、と」
クラウド:「……絶対に渡さない」
それだけやり取りをしてそのまま店の外へ出る
あーあ、またユフィ探しか……
レッドXV:「クンクン…あっちだ!」
ユリア:「オッケー!行くぞ、クラウド」
クラウド:「あぁ」
ちょこまか逃げ回るユフィをじりじりと追い詰めていく
そうして辿り着いたのがユフィの家だった
ユリア:「なぁ、おじさん。ユフィってやつ知らないか?」
ゴドー:「ユフィなど知らぬ!」
ユフィのお父さんと思われる人に話しかけても「知らぬ!」の一点張り
諦めて帰ろうとした時、突然おじさんはクラウドをジロジロと眺めだした
クラウド:「……何だ?」
ゴドー:「おぬしら、神羅と関係があるのか?」
レッドXV:「あ〜……まぁ…」
ゴドー:「ならば早々に出ていってくれ。神羅に睨まれたくないのでな」
再びこちらに背を向けてしまったユフィのお父さん
神羅に睨まれたくないってどういう…
ユフィ:「なんだい、意気地なしっ!」
ゴドー:「ユフィ…!」
いきなり現れたユフィに驚きを隠せず、唖然とするおじさん
が、ユフィは構わず話しだした
ユフィ:「そんなに神羅が怖いの?だったら他の町みたいにさっさと神羅に従ったらいいじゃないか!そこにいる連中の方が神羅とまともに戦ってるよ!」
ゴドー:「う、うるさい!お前のようなやつに何が分かる!」
ユフィ:「一度戦に負けたらそれっきり?強いウータイはどうしたのさ!」
ゴドー:「これはお前のような子どもが口を出す問題ではない!まだそんな格好をしおって!恥ずかしくないのか!」
ユフィ:「アタシのセンスだもん、そんなの勝手だろ!人のポリシーに口出さないでよ!」
ゴドー:「セ、センス?ポリーシー…?そんな横文字まで使いおって!この……この不良娘が!」
ユフィ:「フンだ、このグータラ親父!!」
長い口論を終え、部屋を飛び出していったユフィ
お父さんはと言うと、またこちらに背を向けてしまった
……相当な頑固親父だな、こりゃ
そんな事を思いながらユフィ追跡が再開された
クラウド:「この中か……」
先程の居酒屋の前の壺がガタガタと揺れている
クラウドが数回殴ると壺からユフィが飛び出した
レッドXV:「これ以上先には行かせないよ!」
ユリア:「観念するんだな」
完全にユフィの行く手を阻む
それにはさすがのユフィもオロオロするばかり
クラウド:「もう逃げられないぞ、ユフィ」
ユフィ:「わ……分かったよ…アタシが悪かった……アンタ達の勝ちだ。マテリアは全部返すよ」
おとなしく降参し、自分の家へと歩きだすユフィ
その後を歩くクラウドとレッドXV
ユリア:「ん……?」
ふと居酒屋の方を振り返ると、先程の二人の神羅兵が入っていくのが見えた
……気になる…
ユリア:「クラウド〜、先行ってていいからな〜!」
本人に聞こえているかどうかはさておき、とりあえず一声かけたし?
そっと居酒屋の扉に近付いて耳を澄ませる
兵1:「おお、やはり休暇でこちらに来ているという情報は本当だったか!ついに奴を発見したのだ!タークスにも協力を頼みたい!」
出たよ、“奴”……
いったい誰なんだ?
“奴”の正体を考えているとレノの深いため息が聞こえた
レノ:「……やなこった、と」
素っ気なく返したレノの返事に神羅兵の表情が少し引きつる
どうやら断られるとは思ってもいなかったらしい
兵2:「い、今なんと……?」
レノ:「俺達は休暇中につき、あんたらのお守りはできないぞ、と」
冷たく言い放つレノ
言葉の調子から察するにだいぶ機嫌が悪いようだった
兵1:「き、君達が休暇中なのは我々も知っている。しかし……」
レノ:「知ってるなら消えてくれ、と。あんたらの格好見てると酔いが覚めちまう」
神羅の象徴とも言える神羅兵の制服
いやでも仕事の雰囲気を感じてしまうのだろう
兵2:「しかし、奴を探せという指令が本社から君達にも出されているはず……!」
焦ったように説得するが誰も何も答えない
神羅兵もそれにはキレたのか口調が変わった
兵1:「ええい、もういい!タークスの力など借りなくても奴を捕まえてみせる!」
兵2:「この事は本社に報告しておくからな!!」
入り口に足音が近づいてくる
何食わぬ顔をしてユリアはその神羅兵達と入れ違いに中に入った
すると、イリーナが勢いよく立ち上がる
イリーナ:「レノ先輩!本当にそれでいいんですか!?これがプロフェッショナルのタークスなんですか!?」
レノ:「イリーナ。勘違いするなよ、と。仕事のために全てを犠牲にするのがプロじゃない。そんなのただの仕事バカだ、と」
イリーナ:「ルード先輩……」
ルード:「………」
イリーナ:「私には分かりません!……失礼しますっ!!」
そう言うとイリーナは勢い良く店を飛び出していった
ユリア:「…追わないのか?」
レノ:「放っておけよ。子供じゃないんだ。好きにさせるさ、と…」
突然話しかけたにも関わらず、こちらの存在に驚いた様子もなく二人は酒を飲み続ける
けど、心の中は穏やかではないはず……
ユリア:「本当は心配なんだろ?新人だから……」
ルード:「…………」
ユリア:「何年仲間やってたと思ってるんだよ!二人が考えてる事ぐらい分かるっつーの」
レノ:「…………」
ユリア:「……仕方ないな。ボクがイリーナを連れてきてやるから待ってろ!」
走って居酒屋を出ていくユリア
それを見送ってからルードがゆっくりと口を開く
ルード:「……ユリアに任せといていいのか?」
レノ:「どういう意味だ?」
ルード:「ユリアは仲間だったが、今は敵だぞ?」
レノ:「分かってるぞ、と……分かってる…」
言いながらレノはぐっと拳を手で包んだ
あいつが“仲間だった”と、“二人が考えてることは分かる”と言ってくれただけでこんなに気持ちが高ぶるのか
……単純だな、俺も
小さく息を吐き出し、にやけそうになる口元を引き結ぶ
俺は…あいつが俺たちのために動いてくれていることが嬉しいんだ
まだこの喜びを噛み締めててもバチは当たらねぇよな?
ユリア:「イリーナ〜?どこ行った〜?」
赤い鳥居をくぐり、辺りを見回す
こっちに行ったって聞いたんだけどな〜…
ちら、と視界の隅に金髪が映った
そちらを見ると、その金髪は釣り鐘の下の扉の中に入っていく
ユリア:「いたいた、イリーナ!」
後を追って扉に近づく
そして思い切り扉を開いた
ユリア:「イリー、ナ……?」
?:「あ……」
ユリア:「お、お前は────!」
ユフィ:「ハッハッハー!そう簡単に人を信用するなってこと!!やっぱりカネがなきゃね〜。カネだよ?カネ!分かるかな〜?」
クラウド:「っく…」
笑いながら颯爽と去っていくユフィを見やり、先程とは逆のレバーを下げる
するとレッドXVを閉じ込めていた檻は上にあがった
マテリアを返すと言うユフィの後についてきたのだが、また騙されてこうして罠にかけられてしまったのだ
レッドXV:「ユリアはいないし、ユフィの言ってる事はよく分かんないし……どうするんだ?」
クラウド:「そうだな……」
それよりもクラウドが気にしているのは、何の断わりもなしに姿を消したユリアのことだった
何かあったのだろうか…
レッドXV:「カネ……金?なんの事だよ〜!」
クラウド:「カネ、か………!分かったぞ!!」
“鐘”のことか!
急いで釣り鐘がある場所まで行く
そこは静まり返っていたが、あの釣り鐘の中にユフィはいる
なんの躊躇いもなく、渾身の力を込めて鐘を鳴らした
ユフィ:「あいたっ!」
同時にユフィが鐘の中から落ちてきた
捕まえようと手を伸ばすが、それさえも擦り抜けて逃げられる
釣り鐘の下には部屋があるらしく、そこへ通じる扉を開けるユフィ
クラウド達も続いて入った
ユフィ:「離せよ!離せってば!ちょっと、痛た、痛たたた!」
決してクラウドが締めあげている訳じゃない
だからといってレッドXVでもない
何やら黒ずくめのやつがユフィを担いでいたのだ
ユフィ:「コラ、アタシを誰だと……あーっ!何すんだよー!」
呆然とするクラウドとレッドXV
と、そこに見たことのあるシルエットが浮かび上がった
クラウド:「お前は……!」
「……ほ……ほ……」
聞いた事がある声
嫌な思い出たっぷりのアイツ…
コルネオ:「ほひ、ほひ、ほひひ〜〜〜!!」
クラウド:「コルネオ!?」
コルネオ:「ほひ〜!やっと新しいおなごが手に入ったぞ〜!一度に3人も!ほひ〜、ほひ〜!」
レッドXV:「3人!?」
イリーナ:「コ…コラ、離しなさい!後で後悔するわよ!!」
ユリア:「このっ!離せよ!!あのオヤジには個人的に恨みが…!!」
クラウド:「ユリアっ?!」
ユフィやイリーナと同じように捕らえられているユリア
必死に藻掻いているが、ユリアを抱えている男は全く動じない
コルネオ:「ほひ、ほひ、ほひひ〜〜〜!!」
腹の立つ笑い声とともにコルネオはユリア達を連れて二階へ上がっていった
クラウド達もその後を追う
兵:「いたぞ、奴だ!コルネオだ!絶対に逃がすな!」
レッドXV:「やった!これで挟み撃ちだ!!」
じりじりと追い詰められるコルネオ
と、兵の一人がコルネオを指差して叫んだ
兵:「突撃ぃ────っ!!」
全力でコルネオに向かっていく神羅兵
正面からは神羅兵、背後にはクラウド達
そんな状況でも、コルネオはいたって落ち着いていた
クラウド:「っなに!?」
突然、目の前からコルネオの姿が消えた
代わりに神羅兵達が勢いを殺さぬまま襲い掛かってきた
ユリア:「クラウドーーーー!!」
遠くからユリアの叫び声が聞こえる
が、目の前の神羅兵は振り切れず戦闘を余儀なくされた
クラウド:「くそっ!」
早くしないと………
焦る気持ちをなんとか落ち着けてクラウドは剣を構えた
−ダチャオ像−
ユフィ:「は〜な〜せ〜よ〜!」
コルネオ:「ほひ〜!いいの〜、いいの〜!新たな趣味になりそ〜じゃの〜!」
ユリア:「最低だな、お前」
ユフィとイリーナはダチャオ像に縛り付けられてしまった
あそこに縛られるのは2名が限界らしく、ユリアは両手足を縛られて像の指先付近に座らされていた
………これ、落ちたらどうなるんだろう…
想像しただけでぞっとしたのでユリアは考えることをやめた
コルネオ:「どのおなごにしようかな?ほひ〜ほひ〜!」
まだ花嫁探しを諦めていなかったようで、コルネオは嬉々としてそれぞれの顔を覗き込んだ
コルネオ:「このコにしようかな〜?」
イリーナ:「あ、あんた、私はタークスよ!こんな事して済むと思ってるの!?」
コルネオ:「それともこのコかな〜?」
ユフィ:「あ〜!こんなことなら、縄抜けの修行マジメにやっとくんだったよ〜!」
コルネオ:「それともこの間のコかな〜?」
ユリア:「近っ!それ以上近寄るな!!」
一人一人の表情を確認していく
薄ら笑いを浮かべてるのがものすごく腹立つ……
コルネオ:「ほひ〜!!決めた決〜めた!今夜の相手は……」
どこからかあの時と同じドラムロール
……さっきの黒いやつ、スタッフか?
コルネオ:「このおなごだ!」
嬉しそうに指差すコルネオを見たくなくて目を逸らす
選ばれちゃった人は可哀想に
コルネオはいきなり襲ってくるから相手するのも楽じゃないし、精神的にやられるし、それに…………?
ふとイリーナと目が合った
愕然とした表情でこちらを見ている
あぁ、イリーナが選ばれたのか
……うん、相当ショックだったんだな。よく分かる!
ユフィは同情の眼差しでこちらを見ている
まぁ、後輩がジジイの花嫁にされちゃうのは悲しいけどな
コルネオがこちらを指差してにこやかに笑っている
……………え?指差して?
“このおなごだ!”
“この”って、ボク!?
ユリア:「ちょ、ちょっと待て!ボクは一回指名されただろ?だったら今度は新しい子を……」
コルネオ:「ほひひ!お前のスタイルは病み付きだっ」
ユリア:「き、気持ち悪い事言ってんじゃねーーーー!!」
コルネオ:「ほひ〜!その拒む仕草がういの〜、うぶいの〜」
ちくしょう!
そのポジティブ思考も変わってないのかよ!!
一発殴ってやりたいけれどなかなか縄が解けない
むしろ、下手に動いてバランスを崩したら地面まで真っ逆さまだ
どうすれば……
「そこまでだ!」
ユリア:「っ!この声…」
コルネオ:「ほひ〜。なんだ、なんだ!何者だ!」
だんだんと近づいてくる人影
ユフィ:「ゲッ!クラウド……!」
コルネオ:「ほひひ、久しぶりだな」
クラウド:「忘れたとは言わせないぞ」
バレット:「この、ミッドガルのハイエナ野郎…!」
レッドXV:「はやく3人を放せ!」
コルネオ:「だまらっしゃ〜い!あれから俺がどんなに苦労したか、お前らには分かるまい……」
ふと哀しげな表情になり、空を見上げる
コルネオ:「そう、話せば長くなるけれど……」
クラウド:「興味ないね!ユフィ達を返せ!」
ク、クラウド!?
話聞いてあげないの?
ボク、ちょっと興味あったな……
コルネオ:「ほひ…お前ら…本気だな。…えらいえらい。……俺もふざけてる場合じゃねぇな」
クラウドの突っ込みが効いたのか、コルネオの顔つきが変わった
コルネオ:「あの時は俺の可愛いアプスをよくも殺ってくれたな……。これ以上、俺の花嫁探しの邪魔をさせんためにも、俺の新しいペットと遊んでもらうぜ!」
その言葉に全員身構える
コルネオ:「ラプス、カムヒア!!」
現れたのは、なんだかデカい………鳥のようなモンスターで
でも、あの変態じじいのペットだろ?
たいした事ないって!
ユリア:「嘘…だろ?」
目の前の光景に唖然とする
変態じじいのペットのくせに……
ユリア:「なんで強いんだよ!」
悪戦苦闘しているクラウド達
回復に気をとられてなかなか攻撃できていない
コルネオ:「ふっ、俺のペットだからってなめてかかったな」
そう言いながらいつのまにかコルネオが正面に立っていた
ユリア:「な、なんだよ…」
コルネオ:「ほひ、分かってるく・せ・にっ」
意味深な笑みを浮かべ、じりじりと間を詰められる
動けないユリアはただコルネオを睨むことしかできない
コルネオ:「近くで見てもきれいな顔だの〜」
頬にコルネオの手が触れる
“背筋が凍り付く”ってのは、まさにこの事だな
イリーナ:「ちょっと!汚い手であたしのユリアに触らないでよ!!」
…………………。
ユフィ:「………マジ?」
よし。イリーナ、後で覚えてろ?
コルネオ:「ほひひ!俺に選んでもらえなかったからって…可愛いおなごだの〜」
そんでこいつも勘違いポジティブ思考…
コルネオ:「それじゃ、この間できなかったチューから…」
ユリア:「は!?い、いきなり!?ちょ…、ストップ!!」
コルネオ:「ほひ〜!もう待てないぞ!!」
徐々に近づくコルネオの顔
ついこの間の悪夢が鮮明に甦る
ユリア:「助けて……っ」
ラプスと戦っているクラウドと目が合った
途端にクラウドの目つきが変わり、ただならぬ雰囲気を漂わせ始める
クラウド:「…殺す」
バ・レ:「「クラウド!?」」
どすの効いた低い声で呟いたかと思うと、勢いよくラプスへと向かっていくクラウド
さっきの呟きはパーティーメンバーにしか聞こえていなかった
クラウド:「はぁぁぁぁあ!!」
思い切り振り下ろされた剣からは衝撃波がほとばしり、ラプスに直撃した
……ラプスは即死だった
哀れ、ラプス…
君の主人のせいで…
ラプスが倒れたのを見届け、剣を握り締めたまま、コルネオとユリアの方に歩み寄る
コルネオも背後から来る彼の放っているオーラに気付いたのか顔が青ざめた
コルネオ:「ちょ…ちょっと待った!」
クラウド:「黙れ!」
コルネオ:「すぐ終わるから聞いてくれ」
この流れ、前もあったな…
コルネオ:「俺達みたいな悪党がこうやってプライドを捨ててまで命乞いするのは、どんな時だと思う?
1、死を覚悟したとき
2、勝利を確信しているとき
3、何が何だか分からないとき」
クラウド:「……どうせ2だろ?」
コルネオ:「ほひ〜!あったり〜!」
すると、コルネオはスーツのポケットからスイッチを取り出し、躊躇いもなく押した
イリーナ:「キャーッ!!」
突然、ユフィとイリーナが逆さまになった
ユフィ:「あ、頭に血が上る〜っ!」
ユリア:「ユフィ!イリーナ!」
コルネオ:「このスイッチを押すと、このまま下に真っ逆さま……潰れたトマトの出来上がり!…あぁ、それと…」
(ピシッ、パキ…)
ユリア:「………え?」
像の指に亀裂が入る
ど、どういう事?
コルネオ:「このダチャオ像も老朽化してるから、暴れたり過度の負担が掛かると…」
ユリア:「────っ!!」
気が遠退きそうだった
ここ、地上何メートルだっけ……
クラウド:「くっ……!」
バレット:「汚ったねぇ手使いやがって…!」
レッドXV:「グルル……!」
コルネオ:「ほっひっひっひ!最後に笑うのは俺だったな!」
両手を高々と上げて大笑いするコルネオ
と、その時……
「いや、俺達だ、と」
コルネオ:「ほひ〜。なんだ、なんだ!何者だ!」
ゆっくりと歩み寄る影
ユリア:「レノ……」
コルネオ:「タ、タークス!」
レノ:「お前が秘密をもらした時から決まっていた。お前は俺達の手で葬り去られるとな、と」
コルネオ:「え、ええ〜い!こうなれば道連れだ!」
勢い良くボクの方に駆けてくるコルネオ
(パキパキバキッ、)
像の亀裂が広がり、足場が揺れ始める
恐怖から足もすくんで逃げられそうもない
ユリア:「や、め…」
(シュッ!)
コルネオ:「ぐわっ…!」
何が起きたのか分からなかったけど、コルネオは吹っ飛び、ぎりぎりでダチャオ像の指先に掴まっていた
レノ:「いいタイミングだぜ。ルード」
ルード:「……仕事だ」
像の向こう側にはルードが待機していたらしい
さすがだな〜、この二人のコンビネーションは
レノ:「ほらよ、と」
ユリア:「え?あ、ありがと」
軽やかに寄ってきたレノによって手足を縛っていた縄は解かれ、自由を取り戻す
像から離れようとコルネオとレノの方を向きながら後ろ向きにゆっくりと歩いた
クラウド:「ユリアっ」
ユリア:「う、わ…!?」
後ろから腕を引っ張られ、バランスを崩しそうになる
ユリア:「おい!危な
クラウド:「怪我はないか?何もされてないか?」
いつも以上に過保護なクラウド
たぶんコルネオが絡んでいるからだろう
なんか、実家にいるお母さんみたいで笑えた
ユリア:「大丈夫だよ、何もされてない。助けに来てくれてありがとな」
クラウド:「……あぁ」
ユリア:「レッドXVもバレットも。ありがとう」
レッドXV:「ユリアが無事でよかったよ」
バレット:「ホントだぜ。無事で何よりだ!」
ふとレノの方を向くと、これから任務の最終段階に入るところだった
レノ:「さーて、コルネオさんよ。すぐ終わるから聞いてくれ、と」
レノはコルネオの手をギリッと踏みつける
レノ:「俺達が奴らと手を組んでまで貴様を追い詰めるのはなぜだと思う……?、と。
1、死を覚悟したとき
2、勝利を確信しているとき
3、何が何だか分からないとき」
ユリア:「レノと手ぇ組んでたのか?」
クラウド:「あぁ。仕方なく、な」
ユリア:「ふぅん……」
どことなく嬉しかった
これからもレノとクラウドが仲良くしてくれればいいのに…
コルネオ:「2…2番ですか?」
レノ:「どれも不正解、と」
コルネオ:「や!やめ…!」
コルネオのルールに則(のっと)っていくと、選択肢を間違えた者は…
レノの口端が上がる
踏みつけていたコルネオの手から足をどけた
コルネオ:「ほひいいいいぃ〜…」
無残にも落ちていくコルネオ
レノ:「正解は、と」
ルード:「……仕事だからだ」
二人らしい答えに笑みが零れる
イリーナ:「あ、ありがとうございます。先輩……!まさか、助けに来てくれるなんて…」
レノ:「イリーナ。甘えるなよ、と。お前もタークスの一員なんだぜ、と」
イリーナ:「は……はい!」
バレット:「お前らに救われるとはな…」
ルード:「…………」
(ピリリリ、ピリリリ、)
レノの携帯が鳴り響く
レノ:「はい……レノです、と。はい……はい…直ちにかかります、と」
イリーナ:「か、会社からですか?先輩……」
レノ:「そう。クラウド達を探せとな、と…」
ユリア:「っ!!」
せっかく仲良くなれたと思ったのに……
クラウド達も軽く身構えている
ルード:「仕事か……?」
おもむろにこちらを向いたレノ
ちょうど目が合ったかと思うと、軽く頬笑まれた
が、すぐに視線は逸らされる
レノ:「いや、今日は非番だ、と」
ユリア:「レノ……っ」
一度ならず二度までも、
レノはボク達を見逃してくれた
ありがとう、レノ……
ユフィ:「ど〜でもい〜けど、お〜ろ〜し〜て〜っ!」
「「あ…」」
その後、すっかり忘れられていたユフィとイリーナの救出作業が行われた…
ユリア:「レノ!」
休暇を終え、本社に戻ろうとするレノを引き止める
レノ:「どうした?タークスに戻る気になったか?」
ユリア:「バーカ、違うよ。…助けてくれて、ありがとう」
レノ:「あぁ、その事か。別に構わないぞ、と」
ユリア:「ボク、嬉しかったんだ。レノとクラウドが協力してたって聞いて…」
レノ:「あれは任務遂行上、仕方なくだぞ、と」
ユリア:「それでも……嬉しかった…」
にこっ、と頬笑めばレノもつられて笑顔になる
ユリア:「これからも仲良くしてくれれば、ボクも楽でいられるんだけどな〜」
さきほどの笑顔とは打って変わって、寂しげになるユリアの表情
それとは対照的にレノの表情は厳しくなった
レノ:「それは無理だな。こっちも仕事で動いてるんだ。そう都合よくはいかないぞ、と」
ユリア:「そう、だよな…」
レノ:「……ユリア、」
俯くユリアの肩に手を置き、顔を覗き込む
レノ:「お前……あいつらにいつまで隠しとくつもりだ?」
ユリア:「何を…?」
レノ:「“全て”だぞ、と」
ユリア:「それは……っ」
レノ:「いつかはバレる。そしたらお前はどうするんだ?」
ユリア:「………その時はその時だよ…」
ゆっくりとレノの手をどけ、ユリアは背を向けて歩きだした
レノ:「ユリア…っ、俺は
ユリア:「なぁ、レノ」
背を向けたまま喋るユリア
ユリア:「次に会うときは…もっと強くなってるからな!手ぇ抜くなよ?」
決して振り向かず、わざと大声で話す
それは、自分を奮い立たせるため…なのかもしれない
レノ:「…分かったぞ、と。俺も強くならなきゃな!…覚悟しとけよ?」
そしてレノもユリアに背を向け、歩きだした
ごめん……
ボク、まだ諦められないんだ
その場から走り去るユリア
それを見届け、物陰からひょこっと顔を出した人物…
レッドXV:「オイラって何でこんな時に居合わせちゃうんだろ…」
クラウド:「どうした?ユリア」
ウータイを出た後、クラウド達は北へ向かった
ボーンビレッジで話を聞いたところ、セフィロスらしき男が古代種の神殿を探していることが分かった
古代種の神殿に入るためにはキーストーンが必要らしい
しかし、それはゴールド・ソーサーの園長ディオが持っている
だから今こうしてロープウェイに乗ってゴールド・ソーサーへ向かっているのだが…
ユリアはずっと窓の外を眺めてる
気のせいかもしれないけど、表情も暗い
レッドXV:「ユリア、元気ないよ?大丈夫?」
ユリア:「おー、全然大丈夫!」
明るく笑ってみせるけど、レッドXVもユリアも表情は晴れぬまま
まして、レッドXVはレノとユリアの会話を聞いてしまっている
話してる意味は分からなかったが、ユリアに悩みがあるというのは間違いない
レッドXV:「オイラにできる事があれば何でも言ってよ!オイラ、力になるから!」
ユリア:「ふふっ、ありがとな」
レッドXVの頭をくしゃくしゃと撫でるユリア
クラウド:「…無茶はするな」
ユリア:「え?」
突然の呟きに顔を上げる
クラウド:「言っただろ?俺達は仲間だ。何かあれば相談したっていい。頼ってくれていいんだ」
ユリア:「………うん」
曖昧な返事をして目を伏せる
そうこうしているうちに、ロープウェイはゴールド・ソーサーに着いていた
第九話 −終−
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