小説 | ナノ



05
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………結構歩いた、よな?

ボクの感覚がおかしいんじゃないんだよな?



ユリア:「クラウド……」


クラウド:「なんだ?」


ユリア:「疲れてないのか?」


クラウド:「別に」


ユリア:「レッドXV…」


レッドXV:「なんだ?」


ユリア:「疲れてないのか?」


レッドXV:「あまり、な」



……ありえない…

コスタ・デル・ソルから何キロあると思ってるんだ?

今、線路を渡り終えて吊橋に差し掛かっている


あぁ、どうかこの吊橋を渡り終えたら村がありますように…!!



ユリア:「旗が見える……“北コレル”?」



祈りが通じたのか、小さな村が見えてきた

………と、同時に数人の人影も見えた



クラウド:「……バレット?」



村に近づくにつれ、その人影もはっきりしてきた

バレットが数人の男に囲まれている



男:「よくノコノコと顔が出せたもんだなぁ!」


ユリア:「っな…!!」



突然バレットが一人の男に殴られた

バレットは避けも防ぎもせずにその攻撃を受け入れる



ユリア:「おい、お前ら!!」



急いで男達に向かって走っていく

が、バレットによって行く手は制された



ユリア:「な、なんだよ!」


バレット:「………いいんだ」


ユリア:「よくないだろ!?あいつらバレットの事殴って
バレット:「俺のせいで!!」



ユリアの言葉を遮り、怒鳴るように言う



バレット:「俺のせいで北コレルはこのありさまだ…っ!」



それだけ言ってどこかへ走っていくバレット



ユリア:「待ってよ、おいっ!」



急いでバレットの後を追う

着いたのは、ロープウェイ乗り場



エアリス:「バレット、どうしたの?」


バレット:「すまねぇな」


クラウド:「何があったんだ?」



一呼吸置いて、バレットは話し始めた



バレット:「このあたりにオレの故郷があった」


レッドXV:「あった、とは?」


バレット:「今はもうない。砂の下に埋もれちまったらしい。…たった4年で」


ユリア:「だからって、なんでさっきの奴らは殴ったりするんだ?」


バレット:「オレのせいだからだ。全部オレのせいなんだ」



それからバレットはコレルの事を話してくれた


コレルは小さかったけど平和な村だった

ある日、神羅が魔晄炉計画を提案してきた

バレットは賛成したが、親友のダインは反対し、バレットはそれを無理矢理説得させた

そして、少しの間村を離れたら神羅の軍によってコレルは燃やされた…



クラウド:「神羅の軍?いったい何のために!?」


バレット:「魔晄炉で爆発事故が起こったんだ。神羅はその事故の責任をコレル村のオレ達に押しつけた。反対派の仕業だと言ってな」


ティファ:「ひどいっ!」


バレット:「あぁ、確かにな。でもよ、オレは神羅以上に自分を許せなかったんだ。オレさえ魔晄炉に賛成しなければ…」


ティファ:「自分を責めちゃだめよ。その頃は、みんな神羅の甘い言葉に踊らされていたんだから」



なだめるティファを振り払い、頭を抱えるバレット



バレット:「だからよ、だからこそオレは自分に腹が立つんだ!!…甘い言葉に乗せられた挙げ句、女房を…ミーナを失い……」


「お〜い、あんたら!」



乗り場近くの小屋から男性が顔を出している



「ゴールドソーサーに行くなら早く乗っておくれ。料金は必要ないからね!!」



とりあえず全員ロープウェイに乗り込んだ

ガタン、とドアが閉まり、ロープウェイはゆっくりと昇っていった

しばらく昇ると、どこからか陽気な音楽が聞こえてくる

ふと外に視線を移し、ユリアは息を飲んだ



ユリア:「うわぁ…!」



色とりどりに輝くネオン

様々な方向を照らすライト

チョコボレースの様子

アトラクションを楽しむ客

いろいろな模様の花火など、たくさんのものが目に映った



ユリア『ここがゴールドソーサー、か…』



タークス時代、ここに一緒に行こうと何人かに誘われた事がある

まぁ、その度に断ってたけど……

いいとこ知ってんだな〜


そうこうしているうちにロープウェイはゴールドソーサーに到着した

入り口でチケットを買い、中に入る



ユリア:「すっごい!!何これ!」



エントランスにはアトラクション別に分かれた入り口があり、そこに入れば目的のエリアへ一直線という仕掛けらしい



ユリア:「どうなってんだろう、これ…」



入り口に首を突っ込み、中を覗きこむ

瞬間、ドンッと誰かの体が自分の背中を押した



ユリア:「へ?……あっ!!」


ティファ:「あ、ごめん。ユリア……って、あら?ユリアは?」


レッドXV:「その穴に落ちていったぞ…」


「「えっ!?」」









ユリア:「痛たたた……ここ、何?」



誰かに押された拍子に入り口の穴に落ちてしまい、今に至る

が、ゴールドソーサー初心者の自分にとってはここがなんのエリアなのかさえ検討もつかない



ユリア:「もう、帰り方分かんないのに…」



「あの〜、大丈夫でっか?」


ユリア:「え?」



後ろを振り向くと、大きな猫の機械がいた



ケット・シー:「ボクの名前はケット・シーて言います。よろしゅう頼んます」


ユリア:「あ……ボクはユリア。よろしくな」


ケット・シー:「ユリアさん、ですな!ボク、占いできるんですけど。どうですか?」


ユリア:「占い!?すごーいっ!やってみて!!」



瞳を輝かせるユリア

もはや自分が迷子だという事を完全に忘れている



ケット・シー:「いや〜、そんな誉めんといてください。ほな何を占います?」


ユリア:「う〜ん…そうだなぁ……」
クラウド:「ユリアっ!」



足早にこちらに歩み寄るクラウド

が、表情がかなり険しい…

眉間の皺が三割増しだ



クラウド:「勝手な行動は取るなとあれほど言ってるだろ!?なんでいつも突然居なくなるんだ!!」


ユリア:「ご、ごめん…」


クラウド:「お前一人が居なくなる事で皆にも迷惑がかかるんだ!分かってるのか!?」


ユリア:「うん……」


クラウド:「本当に分かっ………あ、いや……分かってればいいんだ。ただ…その…」



ユリアが俯いてしまったのを見て、慌てるクラウド

もしかして…泣かせてしまったのか?

ついカッとなって強く言ってしまったが、今回はユリアに非はない

それなのに俺は……!

狼狽えるクラウドを見かねてかケット・シーはユリアに歩み寄り、ぽんぽんと肩を叩いた



ケット・シー:「ほら〜、ユリアさん。泣かんといてください」


ユリア:「泣いてない!」



勢い良く顔を上げたユリアを見て、内心ホッとしつつもさっきからいる怪しげな猫の機械に視線を向ける



クラウド:「なんだ、お前は」


ケット・シー:「ボクはケット・シーて言います。占いやっとるんですわ」


クラウド:「占い?」


ケット・シー:「はい。就職、恋愛、金銭、何でも占いまっせ〜!」


クラウド:「何でも、か…………セフィロスという男はどこにいる?」


ケット・シー:「セフィロスでんな?」



ガッチャガッチャと不思議な動きをするケット・シーを見守る

すると、どこから取り出したのか一枚の紙を差し出した



クラウド:「…“中吉。活発な運勢になります。周りの人の好意に甘えて一頑張りしておくと、夏以降にどっきりな予感”……」


ユリア:「よかったな。夏以降にどっきりな予感だってよ!」


クラウド:「別に嬉しくない。……なんだこれは?」


ケット・シー:「あれ?もっぺんやりましょか?」



再びガッチャガッチャと動きだすと、また一枚の紙を差し出した



クラウド:「“忘れ物に注意。ラッキーカラーは青”?」


ユリア:「あはははは!」



腹を抱えて大爆笑するユリアを横目にため息をつく



クラウド:「……もういい」


ケット・シー:「待って〜な、もっぺんやらして!」



先程より激しく動きだす

故障するんじゃないかと思うほどだ

取り出された紙を受け取る



クラウド:「…なんだと!?」


ユリア:「何?」


クラウド:「“求めれば必ず会えます。しかし最も大切なものを失います”…」


ケット・シー:「ええんか悪いんか、よう分からんなぁ…」



大切なものを失う……

隣で紙を覗き込んでいるユリアを見る



ユリア:「?なんだよ」


クラウド:「いや……何でもない」


ユリア:「?」


ケット・シー:「こんな占い初めてですわ。気になりますな〜……ほな、いきましょか」


クラウド:「…………は?」



突然何を言いだすんだ、こいつは



ケット・シー:「占い屋ケット・シーとしてはこんな占い不本意なんです。きっちり見届けんと気持ちがおさまらん。皆さんと一緒に行かせてもらいますわ!」


クラウド:「………………」


ユリア:「いいんじゃないか?ボクは構わないよ」


クラウド:「………好きにしろ」



軽くため息を吐き、出口へと歩く



ユリア:「っ!待てよ、クラウド!!───あっ」



ユリアに呼び止められ、足を止める



クラウド:「なん……?ユリア?」



振り返ってみたもののユリアが居ない

……まさか…



ケット・シー:「ユリアさん、足引っかけて落ちましたで…」


クラウド:「またか!?」



…ユリアは二度とここに連れてこない方がいい

クラウドは心の中で強くそう思った








ユリア:「なんなんだよーっ!!」



また落っこちた…今度は躓いて……

今度こそクラウドは本気で怒るだろうなぁ……

まわりを見回すとどうやらここは闘技場らしい

興味本意で中に入ってみた



ユリア:「へ〜、こんなごつい所も……!!」



中に入った瞬間、視界に映ったのは

血を流して倒れている人々



ユリア:「おいっ!大丈夫か!?」


「う、うう………」



カウンターに倒れている係員に声をかける



ユリア:「しっかりしろ!……誰がやった?」


「か……片腕が、銃の…っ、男……」


ユリア:「片腕が銃…!?」



ふと視線を上げると、奥の部屋にバレットが走っていくのが見えた

なんでバレットがここに?

……まさか……いや、そんなはずはない

仲間を疑うなんて事したくない!



クラウド:「ユリア…っ!!何があった!?」



駆け付けたクラウドとケット・シーがあまりのひどさに息を飲む



ユリア:「分からない。ボクが来た時にはもう……でも…」


クラウド:「でも、なんだ?」



言いたくない……

でも、疑ってる訳じゃない

軽く視線を逸らしながら喋る



ユリア:「片腕が銃の男がやったって聞いて…そしたらバレットが居て…」


クラウド:「っ!!」


ケット・シー:「とりあえず、探してみましょ。まだこの辺にいるんとちゃいます?」


ユリア:「ボク、奥の方見てくるっ」


クラウド:「あ、おいっ!!」



制止の声も振り切り、奥の扉を開ける

待っていたのは……



ディオ:「来たぞ!捕らえろっ!!」


ユリア:「へ?う、わ…!!」



ロボットみたいなやつに捕まり、四肢を拘束される



クラウド:「ユリアっ!」


ケット・シー:「ユリアさん!!」


ディオ:「ほぉ……まだいたか」



同じロボットが二人を捕らえ、拘束した

と、床が動きだして中央に穴が開く

穴の深さは計り知れない

……一番嫌いな、直下型タイプだ



ユリア:「………ありえな…」



自然と手が震える

背中には汗が滲む

座る形で拘束されている為、体を縮こませる事も許されない



ディオ:「まずはお前だ」



選ばれたのはケット・シー



ケット・シー:「ほな、お先に〜」



どこか場違いな明るい声でそう言うと、ケット・シーは恐怖心など全く見せずに落ちていった



ディオ:「さて、次はどっちが先に行く?」


クラウド:「俺だ」



何を言うよりも早く名乗り出たクラウド



ユリア:「な、なん……」


クラウド:「先に行って待っている」


ユリア:「待つって…!どうやって」
クラウド:「俺を信じろ」



……あ、まただ…

七番街爆破の時も言ってた

力強くて、頼れる言葉



ユリア:「…分かった。信じるよ」



そう言うと、クラウドはこちらを向いて軽く微笑み、落ちていった



ディオ:「あとはお前だけだ」



ロボットがゆっくりと穴へ近づく

拳を強く握り締め、口を堅く結び、きつく目を瞑った


そして、

独特の浮遊感を味わいつつ、ボクも落ちていった


怖くないと言ったら嘘になる

けど、下にはクラウドがいる…

そう思うだけで少しは楽になれた





あれ、なんだろ…?

なんだかまわりが堅くて…ほこりっぽい匂いがして…

ここは………
「ユリア……ユリア…!」


ユリア:「ん………ん?」


エアリス:「ユリア!気が付いた?」


ユリア:「エア、リス…?」


ティファ:「よかった〜!心配したのよ?」


ユリア:「ティファ…ここは……?」


ケット・シー:「ここはコレル村ですわ。バレットさんが言うてましたで」


ユリア:「コレル村?バレットが?ボク、穴に落ちて…それで……?」



頭が混乱する

落ちたのは覚えてる

が、その先の記憶が全くない



ユリア:「ボク、どうなったんだ?」


ケット・シー:「ユリアさんは、落ちてる最中に気ぃ失ってしもたみたいですわ」


ユリア:「さ、最中に……」



情けない事この上ない

タークスの仲間たちに言ったら間違いなく笑われる…


……………仲間?

仲間って、何?



ケット・シー:「で、下でキャッチしたクラウドさんも大慌て!いや〜、おもろいモン見れましたわ〜」


ユリア:「そっか……」


ケット・シー:「どないしたんです?元気ないで?」


エアリス:「まだ調子悪い?」



心配そうに覗き込むエアリス

ボクは……こんなにも大切な人達を仲間じゃないと言いたいのか?



ユリア:「や、大丈夫。心配しないで!…それより、他の皆は?」


ティファ:「バレットの親友と決着をつけに行ってる。ここからの脱出方法も兼ねてね」


ケット・シー:「銃乱射の犯人もその親友さんやったみたいです〜」


ユリア:「そうだったんだ……ボク、ちょっと散歩してくるよ」



ゆっくりと体を起こす

どうやらここは民家らしい

自分が寝ているのは、部屋の一角にあるソファだった



エアリス:「一人で大丈夫?」


ユリア:「おう!」


ティファ:「何かあったらすぐ呼んでね?」


ユリア:「分かってるって!」


ケット・シー:「ほな、気を付けてな〜」


ユリア:「行ってきま〜す」



みんなに手を振り、部屋を出る

扉を閉めて辺りを見回し、思わず感嘆の息が漏れた



ユリア:「うわ、砂漠じゃん…」



一歩外に出れば、一面砂の海

歩く度に靴の中に砂が入る



ユリア:「だーっ!気持ち悪い!!」



近くにあったドラム缶に腰掛け、靴の中の砂を取る



ユリア:「砂漠なんて初めてだっつの…」


「何?砂漠初めて?」


ユリア:「え?」



後ろから声をかけられ、とりあえず振り向く



男1:「そっか、砂漠初めてか〜。なんなら俺が案内しようか?」


ユリア:「いや、いらない」


男2:「遠慮すんなよ、兄ちゃん!ここの生活は長いぜ?」


ユリア:「すぐに出てく」


男3:「ムリムリ。兄ちゃん、新入りっしょ?あと……5年は出られないって」


ユリア:「うるっさいなぁ。どっか行けよ!」



しつこく絡んでくる男たちに苛立ちが募り、この場を去ろうとドラム缶から腰を上げた



男2:「そう言うなよ、兄ちゃ〜ん。な?」



ニヤニヤと笑いながら男がユリア行く手を阻むように立ちふさがる

予想していなかった行為に思わずユリアは怯んで立ち止まった



ユリア:「な、なんだよ…どけよ」


男3:「あれ?兄ちゃん、細いね〜。ちゃんと鍛えなきゃ生きてけないよ?」


ユリア:「なっ!?触んな!!」



急に掴まれた腕を慌てて振り払う

その反応も気に入ったのか男たちはなおもニヤニヤと笑っている

くそ、しつこくて厄介だな……ここはちょっと威嚇射撃した方がいいな…

少し手荒だけど効果はあるかもしれない

そう思って銃の入っているホルダーに手を伸ばすが、手は何も掴まなかった



ユリア:「………?」



ふと視線を落とすと、腰にあるはずのホルダーが無い

マテリアも、アイテムも、何も無い

つまり今の自分は丸腰……


自分のおかれた状況を理解した途端、背中を嫌な汗が流れた

…これは、助けを呼ぶしかない

大きく息を吸い込み、その勢いで叫ぶ



……はずだった



ユリア:「――っティ、もがっ!!」


男1:「大声出されちゃこっちも適わないからさぁ。少し静かにしてよ」


ユリア:「――――っ!―――――っ!?」



必死に身を捩って抵抗するが、屈強な男三人がかりではあまり効果がない

……男?

そういえばこいつら、ボクを男だって思ってるくせにどうしてこんな…?



男3:「さて。この兄ちゃん、どこに連れてく?」


男2:「人気のない所…だな」


男1:「だな。よし、兄ちゃん。もう少しで楽になるからな」



にっこりと頬笑まれる

が、その笑顔はどこか寒気を感じさせた

こ、こいつら……もしかして…
バレット:「うおおおおお!!!」



どこからか雄叫びと同時に銃声が聞こえ、その何発かが近くにあったドラム缶に当たる



クラウド:「何してる…」


レッドXV:「ウー……ガウッ!!」



次いで喉元に突き付けられる大剣と、獣の唸り声

男たちは一斉に顔を引きつらせた



男2:「お、俺らは別に……」


男3:「なんだよ。連れがいるなら先に言ってくれよな〜」


男1:「あの金髪の兄ちゃんもいいなぁ…」


バレット:「ごちゃごちゃうるせぇ!!さっさとどっか行け!」


「「「は、はいぃ!!」」」



男達はバレットに銃を向けられ、一目散に逃げていった



バレット:「おう!怪我はねぇか?」


ユリア:「うん。ありがとな、バレット。レッドXVも、クラウドも」


レッドXV:「礼を言われる程じゃない」


クラウド:「……丸腰、なのか?」


ユリア:「う……うん」


クラウド:「気を付けろよ?」


ユリア:「……分かった。ごめんな?」



もっと、自分に力があれば皆に迷惑をかけずに済むのに…


ふとバレットに視線を向けると、とあるものが目に飛び込んできた

そうだ、これだ…!!



バレット:「ユリア…!?」



そっ、とバレットの二の腕に触れるユリア

その行動にバレットは動揺を隠せずにいた



バレット:「どうしたんだ!?いきなり」



自分の二の腕を触っているユリア

ちら、と視線を仲間に向ければ……



クラウド:「………………」



心なしかクラウドの眉間の皺が増えた気がする…

バレットはゆっくりとクラウドから視線を外した



ユリア:「いいな〜、これ…」


バレット:「あ!?何が?」



突然発された言葉を理解できず、聞き返す



ユリア:「バレットって、かなり筋肉あるんだな!」


バレット:「まぁ…昔から鍛えてたからな」


ユリア:「へぇ〜」



すると、今度はパッと明るい顔をしてとんでもない事を言い出した



ユリア:「ボクもバレットみたいにムキムキになりたい!!」


「「「はぁあ!?」」」



レッドXVは、開いた口が塞がらないという様子でユリアを見ている

クラウドは想像してしまったのか顔が少し青ざめている

バレットは、自分の腕とユリアの腕を見比べて言った



バレット:「お前には無理だと思うがなぁ」


ユリア:「なんでだよ!!」


バレット:「オレはこの体を造るのに相当な年月が必要だった。今から始めたってすぐにはなれねぇぜ?」


ユリア:「そっか……」



頭はうなだれ、落ち込むユリア

と、バレットが余計な事を次々に言った



バレット:「でもよ、少しでも力つけてぇならやっぱバトルだな。戦線に立つ事も立派な筋力トレーニングだぜ?」


ユリア:「え?」


バレット:「それにソルジャーってのも随分な訓練を受けてきてんだろ?クラウドから何か教われ!」


ユリア:「クラウド……何かいい方法知ってるか?」



瞳を輝かせながら詰め寄るユリアにたじろぐクラウド

ここで『何も知らない』と言えば全て終わる、がユリアはまた落ち込むだろう

かと言って『知っている』と言えば、待ち受けているのは筋肉質になったユリアだ

どうすれば………

激しい葛藤の末、クラウドが出した答えは…



クラウド:「俺は……、いいのを知っている」


ユリア:「ホントか!?よっしゃ〜!頑張ろう!!クラウド、指導よろしくなっ」



嬉しそうにスキップしながらティファ達のもとへ行ってしまったユリア



レッドXV:「クラウド……災難だな」


バレット:「頑張れよぉ、クラウド!!」


クラウド:「……………」




そう、クラウドの災難は始まったばかりであった…






第五話 −終−



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