沢田くん、ごめんね、ごめん…

みちるの謝罪の意味を、ツナは冷静でない頭でなんとか理解しようとした。
捕まってごめん?それとも、居場所を教えてごめん?
…そんなの、どうだっていいのに。

「バカ言わないで!オレはきみが傷つくほうが、ずっとつらいんだよ!」

リボーンの死ぬ気弾に撃たれる刹那、ツナはそう、叫んだ。




倒れる者、不利な状況になったと悟って逃げていく者、…様々だった。
やっと、神社の境内に残ったのがツナたちだけになると、みちるはへなへなと肩を落とした。
死ぬ気モードから戻ったツナ・獄寺・山本は、まだまだ雲雀と言い合っていた。
売り上げの行方についてだろうか。みちるは、目の前で展開される平和な光景に、信じられないくらい安心を覚えた。

「みちる、大丈夫か」

いつの間にかみちるの前に来ていたリボーンが、みちるにそう声を掛けた。
ぴくり、とツナたちが一斉に反応した。ツナと獄寺・山本は、わらわらとみちるに駆け寄ってきた。

雲雀は、みちるを一目見た後、くるりと方向転換をして、神社の石段のほうへ歩いていった。


「あ、ひば…りさん、あり、がと…ございました…」


みちるが弱々しくそう言うと、雲雀は一瞬だけ振り向いた。
が、すぐに石段を降りて行ってしまった。



「こ…っ、の、バカ!何してんだよ、お前は!」

獄寺の叱責に、みちるはびくりと肩を震わせた。
しかし、対称的に、身体の震えは止まってしまったから不思議だ。

「怪我…してねぇだろうな…」

獄寺は、じっとみちるの顔を見つめた。うそは許さない、と言っているように。
みちるは、黙ってこくりと頷いた。獄寺はみちるの全身を見回し、それがうそでないことを確認すると、くしゃりとみちるの頭を撫でた。

「獄寺くん…」
「…みちる、」

山本が、みちるのすぐ前にしゃがみこんだ。
みちるは反射的に視線を山本に向ける。心配そうな表情。みちるは涙が出そうになった。

「ごめんな、見つけてやれなくて…」

それは、祭の最中のことを、奴らに連行される前のことを言っているのだろうか。
みちるは首を横に振った。全て自分のせいだ、山本は何も悪くない。そう言いたいのに声が出せない。
声を発したら、涙が一緒に零れそうで。


「守るって言ったのに…ごめんね…、千崎さん…」


獄寺と山本の後ろで、ツナが悔しそうにそう言った。
ツナの言葉には、いつも涙が誘われる。それは、彼が誰よりも仲間思いだと、知っているからだろうか。

「わたしは…守って…もらったよっ…!」
「お、おい千崎…」
「ごめん、は、わたしが…言わなくちゃ…」
「泣くなよ…みちる…」
「ごめんねみんな、わたし、弱くて…何の役にも立てない…!」

「…千崎さん、そんなことないよ…」

ツナは、みちる自身の膝の上で固く握られている彼女の手に、自分の手を重ねた。
みちるに初めて会って、彼女を“守る”と言ったときのように。

「オレたち、千崎さんと一緒にいると楽しい。笑顔を見ると元気になる」

それで充分なんだ。
一緒にいてくれるだけでいいんだ。
きみが友達になってくれてから、いつも楽しいんだよ。


「だから千崎さん、泣かないで」


きみは、何の役にも立たない子なんかじゃないから。

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