rough on her | ナノ

そこにいるのに

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金曜の夜、お風呂に入って斎の部屋でのんびりしていると、インターホンのチャイムが鳴った。
お部屋の主は今、コンビニに買い物に行っているので、とりあえずモニタを見て、宅配とかじゃなかったら無視しよ、と思ってのぞきこむ。

「…ん?」

若い男の人だ。
なんとなく見覚えあるなあ、かっこいいなあ、って思っていると、おにいさんはもう一度チャイムを鳴らした。
しつこいなあ、いないって分かったら帰りそうなものだけど…。
おにいさんがスマホをいじって、耳に当てる。
斎が置きっぱなしていったスマホが鳴った。
タイミング的に、おにいさん、だよね…。
ちらりとスマホの画面を見ると、幹也、と表示されている。
幹也。

「えー!?」

幹也って東幹也!?
思わず、モニタにかじりつく。
伏目がちなその顔は、たしかにテレビで普段見ている俳優の東幹也だった…。
友達ってほんとだったのか。

「…でもなあ」

いくら俳優の東幹也だからって、家主のいないうちに男の人を招き入れるわけにはいかないよなあ。
でも、しつこい東幹也はこりずにずっとチャイムを鳴らしている。
ええ、どうしよ……。
と思っていると、斎がコンビニから帰ってきて、モニタの向こうで何やら話をしている。
もめてるみたい。
はらはらしながら見守っていると、斎はオートロックのドアを開けて東幹也をお通ししている。
えっどうしよ、入ってくるんだ。

「ただいま」
「お、おかえり」
「こんちは〜!」

斎のうしろから現れた東幹也は、めちゃめちゃ華やかなオーラを放っていた…。

★★★

気まずい。

「あいりちゃんはさ、斎と付き合ってどんくらいなの?」
「え、と、いちねん、くらい…」
「あー。てことは、どっかの会社の受付のおねーさんだよね?」
「えっ?なんで知って…」
「斎が、営業でよく行く会社の受付の子がめちゃタイプで付き合いたいって言ってたのが1年半くらい前」
「もうやめろ!」

斎が悶絶しながら絶叫する。
たしかに、口説かれたけど、斎、そんなふうに思ってたんだ…。
くちびるが緩んだのもつかの間、幹也さんがずいっと顔を近づけてきた。

「どう?斎やさしい?変なことされてない?」
「されてないです…あの、近い…」
「ほんとかな〜?こいつけっこうド変態だったりするからな〜」
「幹也おまえほんまええ加減にせえよ」
「だっておまえ、AVの趣味がけっこうえぐい」
「幹也!!!!」

幹也さんは、すでにどこかで飲んできたみたいで酔っていて、わたしの肩に腕を回してにこにこと笑いながら、斎のあんまりばらされたくないんだろうなあっていう過去や裏話を次々暴露している。
そして、散々わたしにべたべたさわっていろいろしゃべったあげく、斎の足蹴りにも負けず、床ですやすやと眠ってしまった。

「…寝ちゃった」
「ほんま、こいつ何しにきたん…」
「どうしよう、床、痛くないかな」
「ほっとけほっとけ、こいつが勝手に来て勝手に寝たんや」

げしげしと蹴りながら、それでも毛布をかけてあげる優しい斎に笑う。
斎が買ってきてくれたダッツのアイスのカップを片付けて、スプーンを洗って考える。
今日、泊まる予定だったけど…。

「斎」
「ん?」
「わたし、帰るね…」
「…は?」
「だって、幹也さんいるし、さすがに…」

着替えなきゃ、と思っていると、斎がちょいちょいと手招きした。

「?」

近づくと、腕を引かれてベッドに押し倒された。

「え?………え!?」
「なんであいりが幹也に遠慮せなあかんの?」
「いや、ていうか、何!?」
「しー…静かにせんと、幹也が起きてまうよ?」

人差し指を口に当てて色っぽくほほえんだ斎に、さあっと血の気が引く。
これは…斎のスイッチが…入っている……!

★★★

ぐちゅ、にゅち、ちゅっ、ちゅぷ…

「ふ、ふぅ、ぅん」

枕に顔を押しつけて必死で声を殺す。
斎の指があたしのそこをぐしゃぐしゃにしていく。
すぐそこで人が寝てるのに、こわい、やだ、なんで。

「い、いつきぃ…っあ!」
「静かにせんと、幹也が起きるで」

わたしに覆いかぶさって容赦なく指を抜き差ししている斎が、耳元で荒い息を吐く。
腰のあたりに硬いのが当たって、待って、待ってこれ入れるの!?ほんとに入れるの!?

「ん、うーん」
「っ!」

幹也さんが寝言のようにうめいた。
思わず、斎の指をぎゅっと締め付けてしまう。

「…っはは、見られるかもと思たら感じてまうんや?」
「ち、ちがう…ふ、うぅー……!」

ぽろぽろ泣きながらぎゅうぎゅう締め付けてしまって、説得力がない…。
幹也さんの寝返りとか寝息とかが気になって、体が熱くなってしまう。
見られたらどうしよう。
お酒飲んで寝たからって、絶対起きないなんて言えない。

ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぷちゅ…

「あっ…」

斎が指を抜いて、カチャカチャとベルトを外した。
あ、どうしよう、どうしよう…。
ぴた、と熱いものがあてがわれて、斎の手がわたしの口をふさいで指が中に入って舌をぐにゃりとつまんだ。

「んむっ」
「見られたなかったら、しぃー、な…?」
「〜〜〜!?」

ぐじゅんっ、ぱちゅっ

「うぅ〜!」

一気に奥まで入ってきて、視界がちかちかした。

「っうあ、締まる…」
「〜〜!んぅ〜…」

ぱんっ、ぱんっ、ぱちゅっ、ぱちゅっ

そのまま間を置かずに動かれて、頭の中が真っ白になって斎の指にしゃぶりついて声を必死で殺す。
後ろから腰を叩きつけられて、一突きごとにイってるみたいな感覚で、もう死んじゃう。
ほとんどうつぶせにされて、押し潰されるみたいな体勢で奥をがんがん突かれる。

「うぅ、んぶ、〜〜〜〜〜!」

ごりごり、と奥の奥をなぶられて、まぶたに星が散る。
斎の、わたしの口をふさいでいないほうの手はわたしの左手を握ってくれていて、それだけでちょっと安心する。

ぐりゅっ、ぱちゅ、ぱちゅっ

「は、…イく…」

おねがい、はやくイって、死んじゃう。
って伝えたいんだけど、口をふさがれているので言えなくて、ぶんぶん首を振って、はやくはやくってお願いする。

「…あいり、……あいり」

斎が、わたしの肩口に強く吸いつきながら、ぶるりと体を震わせた。

★★★

「あー、俺寝てた…?」

朝になってのそのそと起きた幹也さんが、シャワー借りますとか言いながら浴室に消えた。
あの調子だと、たぶん気づかれてない…よね…?

「斎のばか!」
「ごめん、せやかて…あいりが幹也の指紋まみれになっとんの耐えられへんかった…」
「言い方!」
「なんやの、あいつ人の彼女にべたべたべたべたしよって…」

そうぼやきながら、斎がいらいらした様子で浴室横の壁のボタンを押した。
あっそのボタンは…!
お湯の出る電源ボタンをオフにして数秒、浴室から幹也さんの声にならない悲鳴が聞こえた。


「おまえ!何してくれたんだよ!この寒いのに!冷水て!馬鹿か!」
「知らん、あいりとふざけとったら腕が当たってもうたんや」
「しらばっくれてんじゃねーわ!そんなに俺があいりちゃんと仲良くなったのが気に食わねーのかよ!」
「気に食わん」
「こどもか!さすがに二十七にもなって友達の女食い散らかす趣味ねーんだよ!おまえがやきもきしてんの面白かったからべたべたしただけだろ!それをおまえ、逆手に取ったか知らねーけどあんなえげつないプレイ……!」
「えっ」

思わず声が出る。
あんなえげつないプレイ…?

「…あー、幹也、おまえもう帰れ。今日打ち合わせあるんやろ」
「お、そうだった。まだオフレコだから広めちゃダメだけど、次の月9、俺主演だからあいりちゃん見てね!」
「あ、ぜひ、はい、あの」
「じゃあね!また遊びに来るから!」
「二度と来んでええわ」

ばたばたと、せわしなく、幹也さんは家を出て行った。
残されたわたしは、斎のほうを見た。
斎は、とってもわかりやすく目を逸らした。

「ねえ斎」
「ごめんなさい」

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