rough on her | ナノ

ただ、テレビの中の人気俳優を「かっこいいね」と言っただけだ。
芸能人と付き合えるなんて思ってないし、そもそもどうやって出会うのか謎だし、その辺でけなげに咲いてる花に「きれいだね」と言うのと同じ感覚でわたしは人気急上昇中タレント・東幹也のことを「かっこいいね」と言った。
それだけのことなのに。

「んんっ、はっ……あっ」

そのときは、彼も「せやな」と言ったので、コミュニケーション的にはそこで終わった。
問題は夜だ。
なんか、なーんか怒ってんな?というのはわりとすぐ分かった。
いつもより責めがねちっこくてしつこいわりには、決定的な快楽をもらえなくて、わたしはまだ一回もいけてない。
だから、なーんか怒ってんな?とは思ったものの、なにに怒ってるのかまではわかんなかった。

「なあ、あいり」
「ん……なに怒ってんの…」
「俺なあ、東幹也と友達やねん」
「……。え?」

一瞬、この甘ったるい空気の中出てきた赤の他人の名前に反応できなかった。
あずまみきや、って誰だっけ?
あ、あのイケメン俳優か!え、友達?

「うっそだあ」
「まあ信じてくれんでもええけどな、ただ、あいり、今東幹也って言ったら中締まったで」
「それこそうそでしょ」

絶対、意味わかんない単語が出てきちゃったはずみだ、はずみ。
しかし、彼は目をにんまりと細めて、わたしの手をがっしりと掴んだ。

「え」
「別にな、テレビん中のアイドルやのなんやのにまで妬く気はないんよ。せやけど東幹也だけはあかんな」
「……なんで。いや、ていうか何して」

外したベルトでわたしの手が巻かれる。ぎゅうと痛いくらい締め付けて縛られた。
うそでしょわたしいつこいつのドSスイッチ押したの。

「あいつは友達の女でも見境ないヤリチンやねん」
「……いや、だからわたしと東幹也は全然なにも接点ないし…」
「こんなときにほかの男の名前呼ぶん?気ぃ悪いわあ」
「理不尽!?」

にっこり笑った斎は、ほんと毒のないいい感じのおにいさんって感じなんだけど、絶対どこからどう見ても目が笑ってなくて。
どうやら東幹也がそうとう地雷らしいというのは分かったけど。
そういうのは前もって言っておいてくれないと困る!

「い、斎、うそだよね?これほどいてくれるよね?」
「よお似合てますがな。ずっとこうしとったらええんちゃう」
「やだよ!っあ…」

彼の指がつつっとわたしの肌を這った。
思わず体をくねらせる。くすぶっていた、気持ちいい感覚がすぐによみがえってきて、体は勝手にまたエロいモードに切り替わる。
一度ベッドを降りた斎が、戻ってきて手にしていたものは。

「や、やあ、それやだ…」
「うそこけ。前にこれやったったら死ぬほど感じとったくせに」

にやり。
斎の手には、黒いバラ鞭が握られていた。
振り下ろすときに派手な音が出るわりには、そこまで痛くない、っていうジョーク玩具みたいなものなんだけど、でも音が出るから、脳が痛いって錯覚してすごくいやなのに。
いやいやするけど、なんにも聞き入れてもらえず、手を縛られていては抵抗もできず、わたしはあっさりひっくり返されて、お尻をさらす。

「……!」

ひゅんっ

「いっ…!」

ぱちん!
と、お尻に鞭が振り下ろされて、体がびくんと痛みに跳ねる。
すると、斎の手が鞭が振り下ろされた場所をやさしくさすった。

「かあいらしなあ、赤くなって」
「い、痛いからやだ…」
「せやったら、あいり、えっろい言葉で俺のちんぽ欲しがってみ?」
「……!」

斎が、自分のものをそういう下品な呼び方するときは、すさまじい勢いでドSスイッチが入ってるときだけ。
わたしをいたぶることに全力をかける気持ちになってるときだけ、斎はそうなる。
普段は、息子さんとか、そういうかわいい…かわいい?呼び方だもん。
耳元を舐められて、耳たぶを口に含まれてくちゅくちゅされて、いやらしいおねだりを催促される。

「え、っと……あ、あいりの、ここに、斎の、ください…」

ひゅんっ

「痛いっ!」
「やり直し。こないだ教えたやろ」

間違えると鞭が飛んでくるシステムになっているようである。
腕を使えなくて、腰だけ高く上げて、見せつけるように腰を揺らしながら、こないだ、キレたとき、斎はなんて教えたっけ……と思い出しながら、くちびるを舐めた。

「あいりの、お、おま、んこに、斎の、おち、んちん、ちょうだい…」

ひゅんっ

「あうっ……!や、やだ、もう分かんない……あいりの淫乱まんこに、斎のちんぽつっこんでぐちゅぐちゅして……いっぱいいじめて……!」

空気が抜けるような音がして、斎が笑ったのが分かった。

「まあ合格にしたるわ」
「あっ…あぁああっ!」

なんのためらいもなく、斎のものがわたしを奥まで貫いた。
散々待たされた体は、それを簡単に受け入れてしまう。

「あっ、あ、っんん、あぅ、あんっ」
「あいり、ちんぽ突っ込まれたらええの?もうおしまいにする?」
「やっ、やだ、いっぱい突いて、ぐりぐりしてっ」
「わがままやなあ…聞き分けのない子にはお仕置きせんとな」

ぱつっぱつっとお尻と腰がぶつかる音がする中で、わたしの耳に遠くのほうから鞭がしなる音が聞こえた。
ぱちん!

「いたっ、〜〜〜、あっ、あっ」
「っめっちゃ締まる……」

何度も何度も、突かれながら鞭を強弱つけて振り下ろされて、だんだん痛いんだか気持ちいいんだか分からなくなってくる。
この世には痛気持ちいいという言葉が…とぼんやりと考えていると、斎の手がわたしの顎を掴んだ。
そのまま、無理やり上を向かされて、呼吸が少し苦しくなる。

「うぐっ」
「何余計なこと考えてはりますの?余裕ですなあ」
「ちがっ、あ、苦しっ、あっ、あっ」
「あいりは今気持ちええなあって思うだけでええねんで」

突き上げる速度が速くなって、首もぐぐっと上向かされて、苦しいのに気持ちよくて頭と体の感覚がばらばらになりそうだ。
苦しいのに痛いのに、たしかにその先に気持ちよさがあって、すごい、って思う。
斎のやりかたって、ひどいだけじゃなくて、痛いだけじゃなくて、ちゃんと加減も分かってて、わたしがほんとうに嫌がることはしないでくれて、絶対最後には気持ちよくしてくれる。
頭にもやがかかったみたいにふわふわしてきて、たぶん、最後に鞭で叩かれたときに、一回いってるんだけど、まだいきたくて、じくじくとあそこがうずいてる。

「うわ…あいり、びしょびしょ、これやばいなあ…」
「あ、あ、いく、いきたい、いつきぃ……」
「ん〜?俺を気持ちよ〜くしてくれたら、いかせたってもええで?」
「んっ、んんっ、あっ、あんっ、あんっ」

顎が解放されて、斎の手がわたしの腰を掴んでなおさら激しくぱんぱんと腰をぶつけてくる。
斎を気持ちよくって、どうすればいいのかわかんなくて、ただ自分が気持ちいいだけで、どうしようって思う。

「やっ、あんっ、いつき、いつきっ」
「なん?」
「きもちい?あっ、いつき、ちゃんときもちい?わたしちゃんとできてる?」
「…っあいりはほんまかわええな」

ぐちゃっぐちゅっぱちゅっぱちゅっ

「あっ、いく、いっちゃう……いつきぃ…」
「は…ええよ、好きなだけ、いき」
「あっ、んあああっ、あっ、〜〜〜っ!」

★★★

シャワーの姿見にお尻を映す。
赤くなってかわいい、とか言うくせに、ちっとも赤くなってない。
てっきり猿のお尻みたいにされちゃったのかなって思ったのに。

「……ずるい」
「なにが?てかあいり、なにしとんの?」
「なんでもない〜」

わたしのことひどくするくせに、全然跡は残さないし、終わったらちゃんと優しくする。
ずるい。
これぞまさに飴と鞭なのね……と思ってため息をつくと、バスタブに浸かった斎が不思議そうに首をかしげたのが、鏡に映った。

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