Cuo side

……遅い。稽古の時間のはずなのに。
稽古は毎朝10時からって決めたのに、その時間になってもウーノは一向に現れない。

まさかとは思うが、朝食を取った後に2度寝したんだろうか。アイツの事だからないとはいえない。むしろその可能性も大いにありうる。
それなら一発ぶん殴るでもして起こしてやろう意気込んだ俺は、ウーノの自室の前までやってきた。

「ウーノ、起きてるか?」

コンコン、と控えめにノックしたところで寝ていては気付くはずもない。それをわかっている俺は穏やかではないが乱暴に扉を叩いた。
いくら常時睡眠中なウーノとはいえ騒音があれば起きるとわかったのは最近の事だ。

だけどどれだけ叩いても中からの返事はなかった。まさか狸寝入りか?こっちは待たされてるって言うのに。
今度はドアノブで音を立ててみようと思い立ち、右手でそれを握った。するとどうだ、少し捻るとドアからはガチャっと言う音が。

え……開いてる?

向こう側に押してみるとどうやら戸締りをしていないようで、そのドアはいとも簡単に俺を部屋に迎え入れた。
いくら身内しかいない環境とはいえ、鍵もかけないなんて無用心だな。

「ウーノー?」

勝手に入る事に少しの罪悪感を覚えつつもウーノの自室に踏み込む。
思えば初めて入ったわけだが、その第一印象は最悪だ。

散乱するクッション、蹴飛ばされたままの布団にくしゃくしゃのシーツ、本棚から飛び出したまま放置された本。
あまり整理整頓とか得意なタイプではないだろうと思ってたけど、まさかここまでとは。

そして何より部屋のどこにもウーノの姿はなかった。
あいつのことだ、教育係の役目が嫌でどこかに逃げてしまったんだろうか。或いは任務に出ているかのどちらかだな。

とにもかくにも、稽古をつけてもらえないことがわかった俺は頭をかいた。
自分ひとりではなにをすればいいかもわからないし、他にやる事もないし……。

「……片付けといてやるか」

俺はため息をつきながらその場にしゃがみこむ。
こういう汚い部屋は苦手だ。他人の部屋だろうが片付けたくなってしまう。

お節介だとわかりつつもやはりいつものくせが出てしまった俺は、まず手始めに足元に落ちていた分厚い本を拾った。
あいつ、本なんて読むのか。いつも寝てるしそういう印象はなかったんだけどな。
そんなことを思いながら何気なく拾い上げたその本のタイトルを見て、俺は再び首を捻らせた。


「転生術……?」


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