Uno side

『へ、村から任務?』

『あぁ。村にピースらしきものがまつられているそうだ』

チーフとそんな会話をしたのは昨日の事。
呼び出すのがいきなりなら切り出すのもいきなりだ。

キュオの稽古つけてやって疲れてるって言うのに、何かと思えば任務に行けとのことだ。確かにここ最近みんな遠出してて人手が足りないのはわかるけど、も少し休憩くらいくれんかねぇ。

なんてぼやいたところでチーフにキレられるのはわかってるから何も言わなかった。
それにしても、村から依頼だなんて珍しいな、と思った。
ピースは見た目だけならただのアクセサリーだ。ピースという存在自体、世間一般では知られていない。

それでもそれがピースだとわかったって事は、それを知ってるくらい博識な人がいたか、あるいは外れ囚人が発生したか。まぁ俺としては後者だと思う。

多分外れ囚人が出たから、その情報はどこかには必ず伝達されただろう。
そしてそういう類のものはクライマ機関の上層部に当たる、国際軍事部ってとこの耳にも入る。あ、国際軍事部ってのは世界中の軍隊とか、うちみたいな戦事組織をまとめてるところ。
だからどこに外れ囚人が発生したから任務に就け、とかいう命令もそこから来ることが多い。

まぁ前置きはこれくらいにして、ようはいつもよりも珍しい事例ってことだ。
ピースはまだその村に置いたままらしいけど、そこに住んでる人たちは無事なんだろうか。

「まだ現地まで時間あるからな、ちゃんと地図見とけよウーノ」

すると、ガタンゴトンという規則的な汽車の音にまぎれて、向かい側に座っていたグレースがそういった。
グレースはリクレスじゃないけど、今日は俺の同伴者として着いてきてる。ガキの頃から面識があるから、俺にとっては兄貴みたいな存在かな。
それにしても機関でいっつも白衣着てるからって、任務先にまできて行くのはどうなんだろうか。

とはいえ、俺たちリクレスにとってピースが証明書のようなものなら、それ以外の関員にとっては白衣がそれにあたるんだよな。じゃあ文句は言えねぇか。

「……て、聞いてるわけねぇよなぁ」

グレースがふと呆れたような声で零した。え、いや聞いてるよ、返事しなかっただけで。
だけど気付けば俺の視界は徐々に黒くなってきていて、睡魔に負けようとしていることがわかった。

うん、やっぱ眠いモンは仕方ねぇや。ごめんなグレース、説教なら起きてから聞くよ。
口が半開きなのを自覚したまま俺はゆっくりと目を閉じた。


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