単位が"街"であることにやっぱり驚いたらしい。
俺にとっては今更驚くポイントでもなんでもないんだけどな。

それにこんだけだだっ広いのにもちゃんと理由がある。
ただ上層部から無駄に金を貰ってるわけじゃねーぜ。

まず、この組織の理念だ。俺たちは欲の塊と戦う以上、多大の欲を溜め込んじゃいけない。溜め込んだ場合は自分たちで化け物を生み出してしまう事になる。
じゃあどうすれば良いかと聞かれれば、答えは簡単。欲を溜めなきゃいいんだ。

「だから色々と設備を重ねるうちに、こーんなになっちまった」

中に入るためには暗証番号を押さなきゃいけなくて、正面玄関の扉の隣に設置されてるボタンを暗証どおりに押す事でしか開かない。
俺はもう何度押したかわからないそれを指先でリズム良くタッチし、扉を開けた。

ウィン、といういかにもらしい機械音と共に分厚い扉が開いた。
そこで待ち構えていたのは会社とかホテルの受付……なんかではなくて。

「つまり、街全体が一つの組織だ」

噴水や青々とした木々が茂る広場のような場所。
建物の中にこんな公園みたいなところがあるわけだから、やっぱり二人は不思議そうな顔をしてた。

だけどいちいち二人にフォロー入れてたら俺だって疲れるわけよ。
というわけで、もう気にしないことにした。

ちなみにここは見てのとおり広場。ちゃんと組織っぽくなってるのは別の階だ。
上から見たら円形になっているこの組織には等間隔で八つのエレベーターが設置されてる。
そのうちの一つに乗り込み、俺は地下一階のボタンを押した。

「先に言っとくけど迷子になるなよ?新人は大抵迷うから」

「え、あ、あぁ……頑張る」

自信なさげな声で返答があったけど、こればっかりは俺もどうしようもないしな。


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