麒麟は妖魔を調伏する。力でもって契約し、それを自らの使令として使うことができる。そんな中リヴァイの姿勢は異端だ。
「チッ。俺に血をつけるんじゃねぇよ……汚いだろうが」
目の前に倒れたのは明らかに盗賊のような男たち。私とリヴァイは、お忍びで王宮を抜け出してきているのだ。
「リヴァイ、大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇ……血は、苦手だ」
いくら襲い掛かって来たのはこいつらだとしても、ここまでのした相手に麒麟の言う事では無い。
「待っていて。今川で手拭きを濡らしてくるから」
気分の悪そうなリヴァイを木陰に座らせて私は小川へと走る。麒麟にとって血は毒なのだと、先日隣国の麒麟ヒストリアに聞いたばかりだ。
ヒストリアはまさに麒麟の中の麒麟。お手本のような麒麟だそうで、見ただけで成程と思う物腰だった。きっとリヴァイのように、私に付いて王宮を脱走する事など在り得ない。そもそも王であるアルミンが、王宮を空けるなんてことも考えにくいけれど。ヒストリアはアルミンのためにも、3体の妖魔を使令として従えているらしい。何かあれば、彼を守れるように。
「リヴァイも使令を使えばいいのに」
濡らした手拭きで彼の頬を拭いてあげる。返り血はほんの数滴だけれど、彼等にとっては十分絶望的な感覚に近いらしい。
「俺には必要ない」
「どうして?私の無茶で、リヴァイが傷つくのは嫌よ」
少し息の上がったリヴァイは私を引き寄せる。そして私の頬をそっと指先でなぞった。
「ナマエを守るのは俺だけだ」
ねぇリヴァイ。この世界で私が信用しているのは貴方だけよ。でもそれが、世界の為となる?
存在意義と理由