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「貴女一体なんなんですか?こう毎日毎日わたしの後ろを追いかけて来て、どうしてこんな入り組んだ所にいてもわたしの居場所が分かるんですか?全く気持ちの悪い女ですね、この、小汚い、顔面偏差値三十のしたっぱが。で、なにか言いたい事がありますかこのストーカー女」


Love is blind.


ヤドンの井戸再奥、入り組んだ岩場の影。私と同期の大量のしたっぱの前で指揮を取っていたランスさまに、書類の筒をなげて私はその場を離れた。ちなみにさっきの台詞は、ランスさまが指揮を取っている途中で声高に叫んだものなので、同期のしたっぱには今日の目標と同じように聞こえている。
今日、この緑のもやもやは少し色が濃くなっていた。


洞窟やら、崖の下、上空。ロケット団員の行き先はなんでもござれだ。指定された場所に行っても、その場の状況で行き先を上司に告げずに勝手に動くなんてよくあること。そしてその中でも最も良く動くのが、ランスさまである。ランスさまは若くして幹部になっただけあって、誰よりも結果第一主義。そして誰よりも成果を上げてくる。裏を返せば過程はかなりやりたい放題である。上司のアポロさまに文句言われない程度だけれども。話は脱線したけれど、そのランスさまがやりたい放題行きたい所に報告無しで行きたい放題なため、重要な情報伝達がうまく行かないときがある。そのために活用されているのが私である。

もともとの仕事は、トレーナーからポケモンを徴収する仕事をしていたのだけれど、ある日コガネのラジオ塔にいたら、その近くにいたしたっぱたち全員に支給された携帯端末へ、ロックのかかったデータがおくられて来た。どこかにいるランスさまを探し当ててデータを渡して来いというのだ。誰もが手を焼いた。どこに行ったのかさっぱり、分からなかったからだ。でも私は一時間もしないうちに彼を見つけた。さっきヒワダにいたランスさまを見つける時にも利用した。この緑のもやもやのおかげだ。





緑のもやもや。
緑といっても、とても鮮やかな緑だ。彼からは緑色の煙のようなもやもやが細く、長く、糸のように出ているのだ。そのおかげで、それを辿ればいつも私は彼を見つける事ができるのである。







「ああ、そういえばあなたサイキッカーでしたね」

四度目のランスさま捜索で、私はアポロさまとランスさまの間の伝書ポッポに昇格し、同期のしたっぱより頭一つ飛び出た。

「私にもみえるのですか?それは」

アポロさまからは水色のもやがみえるが、それは綺麗に彼の周りにまとまっている。サイキッカーの私は、人のもや、がみえるのだけれども本当にそれだけの能力しかない。カントーには予知ができる強力なサイキッカージムリーダーがいると聞くけど、私にそんな力はない。予知もできなければ、念視もできない。ただこのもやが見える、それだけだ。

しかし、この緑の糸のようなもやもやは初めてなのだ。どうしてランスさまからこんなものが出て、細く、長く紡がれているのか、わからなかった。








「本当に貴女、何なんです?」

コガネデパートの地下の物陰で一人、作戦の確認をしていたランスさまに書類を届けた時詰め寄られた。十二回目の伝達だ。

「どうしてわたしの居場所がこんなにもわかるんですか」

勘です、と告げると馬鹿を見るような目で見下された。
ランスさまはサイキックのような化学で説明できないことは嫌い。そう、ラムダさまが言っていたので、どうせ本当のことを言っても信じてもらえるどころか、その大体において綺麗な顔の口角のあがりきった口から、顔とは真逆の言葉が飛び出るので嘘でごまかした。

「勘ですか。へえ。貴女にもそんな能力があったとは」

書類の入った筒を、資材の上に腰掛けるランスさまに投げて私はそこを去ろうとした。


「待ちなさい」

ランスさまは開けた筒の蓋を私にぶつけると、資材の上から飛び降りてつかつかと私に寄ってきた。

「書類を投げるのはやめなさい。ちゃんと手渡ししたらどうですか。」

仁王立ちをしてそう命令した彼は、やはり口角を上げ、見下して来た。




その夜。ロケット団員食堂で食事を取っている時、もやもやがすうっと私の方にのびて来た。それを目で辿った先には、アテナさまと書類を片手に話をするランスさまの後ろ姿が見えた。もやもやは私の腕ほどに太くなっていた。

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