「謙也のおたんちーん!」
「いてっ!!」
いいながら、顔をばちーんと叩けば謙也が情けない顔で私を見返した。うっ、とその可愛さにたじろぐものの今回ばかりは許せないのだ。そう、親の仕事で引っ越して大阪に住んでいるとはいえ福岡人として!
「なんやねん急に!」
「謙也が私と千歳に喧嘩うるけんやん!」
そう叫べば私の隣で千歳がこっくりと首を縦に振った。流石千歳。同郷の友よ!
「ウンウン、そうたいなまえのいうとおりばい」
「はあ?!」
「そらあかん、謙也なまえに謝り」
「流石白石いい男!」
「せやろ、惚れたらあかんでなまえ」
「なっ、お前だってなんのことかわかってないやろ!何でそいつの肩もっとんねん!」
「大丈夫たい。なまえは俺にベタ惚れやけん」
「えっそこで俺をスルーしてまさかの対立?!」
とりあえず白石と千歳をスルーしてわあわあ四方八方に突っ込みまくる謙也にずいっと箱を差し出した。手の中にあるそれが軽いのは、もうすでに中身をあらかた食べてしまったからだ。
「これ!」
「な、なんやの…」
「だからこれ!」
「これて、俺が買ってきた東京土産のひよこやないか」
「はいアウト!」
そのまま箱の側面でカーンと謙也のこめかみを殴ればぐああと大袈裟な声をあげて謙也が机に倒れ込んだ。うん、流石関西人ノリが違うわ!
「いまなんていった?」
「せ、せやから東京土産の」
「"謙也のおたんちーん!"」
もう一度今度は私の手から箱を取った千歳の一撃が謙也の反対のこめかみにヒットした。
「てっ!なまえの声真似うざっ!似てなさすぎだろ!」
「似てなくても愛は詰まっとるばい」
「俺のは似とる上に愛も詰まっとるで」
「うっぜ!ふたりともまじうっぜ!」
「とりあえず千歳と白石はスルーして」
「こうしてなまえのスルースキルは日々磨かれていくんやな」
「そこがたまらんばい」
「この変態ども!」
「ともかく、それよ!東京土産ってなにいっとるん!」
そういいながらひよこを一匹取り出して謙也の前にずいっと差し出した。かわいいひよこのくちばしを謙也の鼻頭にくっつけたら、ぐしゃりとつぶれた。
あわれなりひよこちゃん。
「これは福岡銘菓や!」
「でもこれ東京銘菓て書いてあるで!」
「東京がなんや分家やもん!福岡が本家や!!」
「へー俺初めて知ったわ」
「って、やっぱり白石知らんかったんやないかい!」
白石に突っ込む謙也の口に隙ありと言わんばかりにぐいっとさっきのひよこをつっこんで、ふん、と鼻を鳴らした。急に突っ込まれたひよこに、謙也が対抗する術はない。にやりと私が笑えば、謙也が顔を青くした。

「福岡人に東京土産ってひよこ渡した己の罪を償えええ!!」
「もががががーー、っ(むちゃくちゃやーーー!)」
「ああやって謙也いじめに生き生きしとるなまえはほんまかわいいわ」
「かわいかあ、ほんといい笑顔しとるばい」



(ほんなら食うなや!)
(ばっかひよこに罪はないでしょ)
(ほんま腹立つわお前!)


結果的にはどこのひよこもおいしいから良し!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -