風邪をひいた少女を目の前に俺はゆっくりと眉間のしわを深くした。
「…なんで、薬飲んでねぇんだ?」
「…こ、小十郎さん」
「苦いのは嫌だなんて我侭聞かねえぞ」
「…うっ」
なんて分かりやすくて可愛いやつなんだろうこいつは、そう思いながら緩みそうになった頬を引き締めた。
甘い顔を見せたらそれこそやだやだと駄々をこねだすに違いない。
それがわかるほどには、もう長い時間を共に過ごしている。
ちらり、とこちらの顔色をもういちど窺って、口を開いたのと同時に口を開いた。
「こじゅろ」
「だめだ」
「〜ッ!」
「はいはい、とっとと薬と湯のみ持て。飲ませてやるから」
「やっ!だって粉薬苦いもん!」
いつもの敬語はどこへやら、よっぽど苦い薬が嫌いらしい
「流し込めば一瞬で済む。ほら、いれてやるからあーんて、口て開けろ」
「あーんなんてかわいい言葉いわれても、やなもんはいやなんです!」
「……」
がばっと布団にもぐりこんだのを見ながら、目を閉じてはあとため息をついた。
熱のせいなのか、普段は聞き分けがいいくせに熱が出てからは変に子供じみている。
それをめんどくさいとは思わず、むしろかわいいなんて思ってしまえる自分は相当に病んでいるに違いない。
ぽん、と手を布団から少しだけはみだしている頭に手を置いてなだめるように撫でてやった。
「でも飲まなきゃ治らねえだろうが」
「…ゆっくり寝てれば治るんです」
「薬飲んだほうが早く治るだろ」
「う、う〜…」
それでもでてこないそれを見下ろして、さて、どうしようかと顎に指を添えた。




やはり最後の手は口移しだろうかと病人には酷な事を考えながら、未だに布団に避難したままの少女を見つめた。




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