いってから真ん丸になっている四人の目を見返しながら速まったかな、とまあ、いいのだ。本心だもん!
「ここって、お前と一緒に暮らすってことか?」
「ええ、まあ、そうなりますね…」



一番最初に気を取り戻したのは片倉さんだった。渋い顔でそういったものだから、てっきり怒っていると思ったのに、そうじゃないと頭を振られてしまった。
「ここに住んでンのはお前一人だろう?それなのに男と暮らして大丈夫なのかってことだ」
「…多分、大丈夫です」
「多分、だァ?」
片倉さんは顔をしかめて、再び私を睨んだ。うわ、やっぱり睨まれると怖い怖い怖い!
「だって、今、そういうことをちゃんと心配してくれました。下心があるならそんなこといわずに、すぐに話にのってくるんじゃないでしょうか。だから、きっと大丈夫です」
それに、皆さんかわいいし、というのは心の中で付け足しながら、目をしっかりと見て話した。相変わらず心臓はばくばくいっているけれど、きっとここで負けて俯けばこのまま皆出ていってしまうと思ったから、絶対に視線を逸らしはしない。
かわいいから、というのは確かに理由だ。でも、なによりも私自身がこのひと達ともっと話したいと感じてたことも確かだった。殺されかけたり、家を壊されたり、いいことはなにもされていないけど、でももっと話してみたいと思った。そんなことを思ったのは初めてだった。
それは一目惚れとかそういう艶っぽいものではなく、なにかもっと違うものだ。
うまくは言えないけれど、それはおそらくこの人たちがみんな、戦を知っているから。甘い空気だけで生きている人たちではないから。
そのまま片倉さんと睨み合うようにして硬直していると、パン!と伊達さんが膝を手で叩いた音ではっと我にかえった。
「はっ!気に入った、気に入ったぜ…楓」
にやり、と凶悪な笑みを浮かべる伊達さんにちょっと体を引いたら、逆に腕を掴まれて引き寄せられた。
「ちょっ、…と!」
「しばらく、世話になるぜ。よろしくな」
恐ろしくいい声で囁かれて、ぎゃあ!と口から悲鳴が漏れそうになった瞬間に「政宗様!」と叫んだ片倉さんによってばりっと伊達さんから引きはがされた。
「小十郎。いいところで邪魔してんじゃねぇよ」
「そういうことはおやめくださいと、この小十郎は申しているのです!」
「は、破廉恥でござるーー!!!!!」
「はれ、んち…」
片倉さんに首根っこを掴まれたまま生まれて初めて破廉恥という言葉を人が生で言うのを聞いたなあ、しかも大声。などとおもっていると、顔を真っ赤にして叫んだ幸村さんががんっと再び額を勢いよく床にたたきつけて礼をした。
「女子一人の屋敷に世話になるとは情けない話、しかし、この世界のことは何一つわからぬ身。お世話になりまする!楓殿!」
「あ。あーやっぱりそうなっちゃうわけ?でもまあそうだね…これが最善、か。というわけで俺達もお世話になるよ。楓ちゃん」
きらきらした目でまた私を見つめる真田さんの横で、猿飛さんはそう言うとため息をついて苦笑しながら私を見てそう言った。ふと、私の襟首をつかんでいた片倉さんの手が離れ、私の前に片倉さんがきちっと正座しなおした。そしてぴしりと姿勢をただすと今度は少しだけ、頭を下げた。
「俺もよろしく頼む」
その生真面目さがなんだかおかしくて、小さく笑った。
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
私も正座し頭を下げてそう返して、ゆっくりと頭をあげると顔を見合せてからやっとみんな笑った。
「あ、それじゃ皆さんお腹いてません?朝ごはん食べてないから…」
そういって、部屋にかけてある時計を見上げた私はあることに気がついて、動きを止めた。
「ん、どうしたの〜?」
「楓?」
みんなの声も耳に入らなかった。時計の針が差している時間は只今11時00分。先程のアラームがなったのは10時だ。頭の中で以前交わした会話がそのまま再生された。

『もし、アラームの時間から一時間過ぎても連絡がなかったらお兄ちゃんはセキュリティに連絡して家の様子見にいってもらうからな』
『そんな大げさだよ!』
『いいや、かわいい楓をひとりで残すんだからな、これぐらいしないと安心しない!』
『あぁ、うん、わかった。わかりました!』
再生、終わり。

「わーーーー!携帯!携帯どこ!!」
「け、けいたい?!ちょ、どしたの楓ちゃん!」
「いやそれがないとやばいことに!ちょっとまってて!」
叫びながら二階へと向かった私は、その後ろで片倉さんと猿飛さんが「まさかあれのことかな」なんて話していることは聞こえなかった。



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