その日はあまりにも気持ちがいい朝だったから、私は一度開いた眼を再び閉じた。
とろとろと押し寄せる心地よい眠りの波が私の身体を包み、意識を奪い去っていく。
その時は確かに私の寝室には、私以外誰もいなかったとはっきりと言える。けれど、このほんの一時間の二度寝が、これまで平穏そのものだった私の世界が粉々に壊れるなんて幸せな眠りに落ちていく私は知るよしもなかった。
いまおもえば、もしかしたらこの時眠っていなければ私は永久にひとりだったのかもしれない。
それは、私の人生における最大のターニングポイント。





ふっと意識が覚醒した。いつものように眠さを残したものではなく、はっきりと眼が覚めた。
すっきりした感覚に、身体を起こそうとして顔に当たるふわふわとした橙色のものにきがついた。
「なに、これ」
呟いた声は寝起き特有のもので、すこしだけ掠れていた二、三度瞬きをして、そろそろと目線を橙の塊に落とせば、そこにはフェイスペイントをした整った顔がありました。
「…っ!?」
驚きすぎて声が出ないということを私はこの時に生まれて初めて実体験しました。驚いている私の後ろでまた低い声が聞こえて、身体を強張らせた。
まさかまさか、と思いながら顔だけ振り返れば今度は烏の濡れ羽色もかくや、というような漆黒の髪を後ろに流した厳ついが整った顔立ちの男性がいた。
もうパニックどころではない。
しかも、ベッドの端には大きな手裏剣みたいなものはあるわ、厳つい男性の腰には明らかに日本刀。
なにより、その恰好はなんですかといいたくなるぐらい変な、迷彩の服と青い着物。
(な、なに!セキュリティ反応してないし!)
叫びたくなるのを必死で堪えてそろりとその二人から離れるためにベッドを降りた。
そのまま何も考えずにリビングへと走る。
リビングに行けば、ボタンひとつでセキュリティを呼べるリモコンがある。
ああ、こんなことなら危険なことなんてないだろうなどと高をくくらずに、いつももちあるけばよかったと歎いたところでどうしようもない。
ふらふらと縺れそうになる足を叱咤しながらやっとたどりついたリビングの扉を開ければ、そこにも倒れていたのは赤と蒼の対象的な色の二人の男の子が倒れていた。
くらり、と眩暈を感じて倒れかけた私の耳に届いてきたのは寝室に置いてきた携帯の目覚ましアラームとなにか重たいものがふたつ、床に落ちたらしいものすごく大きな音だった。



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