これはある意味すごいことなのかもしれない。
私はいま、はじめてネギで人が殺せるかもしれない可能性をみてます。



過去から来たのだと説明する小十郎さんの背中の後ろで私は今ぐらぐらとゆれる白髪の人が心配です。なにがそんなに悪かったのか、先程から白髪の人がしゃべるたびに小十郎さんのネギがその頭を一閃する。
さっき佐助さんがずりずりと白髪の人を引きずって来た時点で、正座していた私は政宗にひょいと抱えられてまるで4人に守られるように4人の後ろに降ろされた。
それからは政宗の横から顔を出して、様子を伺っているのだけれど段々白髪の人が不敏になって来た。
白髪の人はちょうなんたら元親さん、ポニーテールの人は前田慶次さん。そしてしゃべらない黒い人は佐助さんいわく、風魔小太郎さんというそうだ。
「だから、大体のことはわかったがよォ!何で俺ばっかりバシバシ殴るんだ!!」
「あァ?テメェ自分が楓に何したか覚えてねぇってか?」くるんと回されたネギは小十郎さんの左手にたたき付けられてぱしんと小気味良い音をたてた。額には青筋が見える。
「た、確かにその女に抱き着いてたのは悪かったが、」
「"その女"だと…?」
その言葉に低い声で反応したのはまさかの幸村だった。
「ゆ、幸村…?」
「楓殿のことをその女といったな」
背中からも伝わるひやりとしたなにかが怒りであると幸村の長い髪がひらりと舞ってから気がついた。
「その言葉、許せぬ!!」
「Yeah!こればっかりは気が合うな、真田!」
幸村が飛び出したのと同時にそういいながら政宗も飛び出した。とめようとのばした私の手はぎりぎりのラインで届かなかった。
「なっ、ちょ、お前等二人掛かりは卑怯だぞ!」
その言葉が悲鳴に変わっていく白髪の人を無視してポニーテールの人、慶次さんがひょいと手を挙げながら口を開いた。
「あのさあ、」
「なんだ?」
「その話、信じるけどそれなら夢吉も来てるはずなんだが、あんた達みなかったか?」
「夢吉?」
新しい名前に小十郎さんの背中から顔を出してそう聞き返せば、慶次さんは私を見て、にかっと笑みを浮かべると頷いた。
「そ、俺の友達。みなかった?」
「私が起きたときはみなさんしかいませんでしたよ」
そういうとあからさまに慶次さんの顔が心配そうに曇った。
「そっかあー、一緒に来てねぇのかな…」
「夢吉さんって小さいんですか?」
あんまりにも慶次さんが心配そうなのでまさか夢吉さんとは子供なのだろうかとそういえば、小十郎さんが左右に首を振った。
「前田の夢吉ってのは猿だ。小猿」
「さる…」
え、それはみたい。みてみたい!じたばたとそう思いながらしているとトントン、と今まで黙っていた小太郎さんが床を叩いた。
「どうかしました?」
「……」
尋ねれば、小太郎さんは黙ったまま胸元に手を入れた。その瞬間佐助さんが私の目の前にさっととびだしてきて、庇うようにたったけれど小太郎さんの懐からでてきたのは小さな毛玉と部屋の隅に置いていたホウ酸団子入り設置型Gコロリ(名前もいいたくない黒光りするあいつらを巣からイチコロにしてくれるというあれだ)だった。
「…あ、もしかして、ホウ酸団子食べようとしてたから助けてあげたんですか?」
「なにあれ、楓ちゃん。みたことないけどあんなのがホウ酸団子なの?」
尋ねる佐助さんに頷いて、視線を小太郎さんに戻せばゆっくりと頷いた。
「あんたが助けてくれてたのかよ!ありがとな!」
「……」
慶次さんはそういいながら小太郎さんの手から夢吉を受け取ると、ゆさゆさと揺さぶった。途端、キッと小さく鳴いた次の瞬間には夢吉は小さな目を開き慶次さんの手の中でキョロキョロと辺りを見回した。
「夢吉ィ、お前もう少しでおっちんじまうところだったんだとよ」
「キキッ」
そういって戯れる二人はかなりかわいい。息をついて、元親さんのほうを見れば案外二人相手に健闘している。小太郎さんを見下ろせば、長い前髪で見えないけれど私を見上げている気がした。
小十郎さんと佐助さんに視線をやれば私が何を考えているのかもう薄々気がついているのだろう。渋い顔をされたけれど、二人とも仕方がないというように深い深いため息をついたので私は笑ってしまった。
「幸村と政宗はもうやめる!私が気にしてないのに二人が怒ってもしょうがないでしょ」
「し、しかし」
「だが、」
「怒るよ!」
言葉を重ねれば二人は渋々手を離した。幸村はしゅんと叱られた子供のように頭を垂れ、政宗は拗ねたようにそっぽを向いていた。
「改めましてご挨拶させていただきます。家主の一文字楓と申します」
正座をしてゆっくりと名前を述べる。三人がじっと私を見た。
「先程小十郎さんから説明があったとは思いますが、ここは未来の世界でおそらく何もわからないあなたたちにはとても危険な場所です」
ですから、と言葉を続ければ後ろにいる四人から諦めたようなため息が聞こえた。けれど、そんなことをされたところで今からいうことを止める気はない。
今だけ振りかざさせてもらおう家主権限。

「よろしければ、みなさんもうちに住みませんか?」

その言葉とともに後ろから再びひとつになった4人のため息が響いた。



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