第十四章
ピノッキオはべらべらコオロギがくれた助言を聞かずに暗闇の中に入っていき、暗殺者たちにばったり偶然たまたま出会う
「ほんとうに」
人形はふたたび旅の道にもどりながら、ひとりごとを言いました。
「ぼくや、ぼく以外のかわいそうな
けれど、ピノッキオは彼の思想を最後まで言い終えることはありませんでした、そのときに背後に、とてもかすかな木の葉のざわめきを聞いたような気がしたからです。
ピノッキオが振り向くと、暗闇の中に
「ほんとにいるじゃねーか!!」
ピノッキオはそうひとりごとを言ってから、四枚の金貨を隠す場所を考えることすらできなかったので、それらを口の中に、より正確にいえば、舌の下に隠しました。
それから彼は逃げようとしました。けれども逃げる最初の一歩を踏み出してもいないうちに腕をしっかりとつかまれ、ぞっとする陰気な洞窟のような声が二つ聞こえてきたことを理解すると、どら声の主はこのように言いました。
「お前の財布か、命だ!」
ピノッキオは言葉で答えることができず、というのも口に金貨が入っているからですね、この不吉に偶然出くわした二人に理解してもらうために通常の一千倍ばかていねいに、千種類の身ぶり手ぶりで答えようとすると、彼らの目が袋の穴からぎょろっと見え……、ピノッキオは自分はかわいそうな人形なので1チェンテジモ(※1セントのこと)の
「そら、とっとと無駄口を叩かず金を出す!!!」
おいはぎ山賊武装グループの二人はひどい剣幕で脅して叫びました。
なので、人形は頭と手を使って「何も持ってない」の
「金貨を出さないと死なす」
と背が高いほうの暗殺者が言いました。
「しなす!」
と、じゃないほうの暗殺者が言いました。
「お前を殺したあと、お父さんも殺す!」
「おとさんもころす!」
「ヤダヤダヤダーーーーッッ!ぼくのかわいそうなお父さんーーッ!」
この世の終わりのような声色でピノッキオは叫びましたが、それによって口の中の金貨が鳴り響いてしまうわけだ。
「ははあ、なるほど!悪党め!つまり、舌の下に金貨を隠したってわけだな?今すぐ吐き出せ!!」
けれど、ピノッキオの口は
「ははあ。なるほど!聞こえないふりをしているな?しばしお待ちを、吐き出させてやろうな!」
さてマジで、一人は人形の鼻先をつかみ、もう一人はアゴをつかみ、二人は粗野に人形をあっちへこっちへと、ぶっ
だから背の低いほうの暗殺者は大きな包丁ナイフを取り出して、
この初勝利に勇気づけられ、ピノッキオは暗殺者の爪から力いっぱい逃げだし、生け垣を飛びこえ道に飛びだし、田園地帯を逃走してゆく、さあ暗殺者は彼の後ろを走ります、すぐ後ろはイヌのよう、さらに後方は野ウサギのようだ、やはりこの走法は片方の小さい前足を失い、片足のみとなったからでしょうか、もはや何が起きているのか知ることすらできませんがどうなるでしょうか。
十五キロほど走ったところでピノッキオに限界がきました。それから自我をなくして、とても高い松の木の幹によじ登り、枝先のところに腰かけました。暗殺刺客たちも登ろうとしましたが、幹の半分らへんで足を滑らせて地面へと再び落ちてゆき、おてて や あんよ を
だからといって、この落伍者たちは諦めませんよ、諦めるどころか松の木の根本にかわいた
そうするうちに陽が見え隠れし、明るくなり始めても彼らはやはり走っていましたが……、ちょうどそのときピノッキオは不意にあたりの道がとても幅広くて深い用水路に阻まれていることに気がつき、その
ピノッキオは早くも、奴らが美しく溺れていることを想像いたしましたから、振り向いてそれを見守ろうとしたらそうでもなく、彼ら二体はどちらも後方から追いかけてきており、両方とも底なしバケツ二杯ぶんの水をぶっかけられたような袋にくるまれていました。
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注釈
※ぱたとぅんふぇて!……原文表記は"
◆出典元
『ピノッキオの冒険』 AVVENTURE DI PINOCCHIO
作 カルロ・コッローディ Carlo Collodi
出版社 Felice Paggi Libraio-Editore 出版年 1883年