第一章
 さくらんぼ親方は一本の木材が男の子のように泣いて笑うのを見たときどうなったか

 昔々のお話です。
「王様がいました!」
 と、私の小さい読者たちはすぐに言うでしょうね。子供たちよ、それは間違いです。昔々、一本の木材がありました。
 その木材は贅沢なものではありませんでした。冬に部屋を暖めるためのストーブの中に投げられ、火をつけるために積みかさねられた木材の山の一片でした。
 どんな経緯だったかはわかりませんが、ある晴れた良い日に、アントニオ親方という名前があるにもかかわらず、彼の鼻の先端が熟したサクランボのように濃紫色こむらさきいろになっているから「さくらんぼ親方」と呼ばれてしまっている年老いた大工の工房で、その木材は発見されました。
 さくらんぼ親方はその木材を見るやいなや、彼は手をこすりながら満足げに低い声でつぶやきました。

「ちょうどいい、この木材で小テーブルの足を作ろうか」

 言うやいなや、さくらんぼ親方はすぐに壊れたおのを手に取り、木の樹皮を削るために刃を磨き始めました……が、最初の斧を打ち込むために一歩進んだとき、彼には小さな小さな声を聞こえたので、腕を宙空に浮かせたまま静止させていると、それはこのようにお願いごとをしてきたのです。

「ぼくをそんなに強く殴らないで!」

 年老いた善きさくらんぼ親方がどんなパニック状態におちいったか、みなさん想像してみてくださいね!  彼は部屋の周りを、当惑におちいった目を回転させ、この音がどこから発生したのかを探しましたが、けっして何も見つからないのです!机の下を見ても誰もいない、いつも扉を閉じて立ったままの戸棚を見ても誰もいない、のこぎりで引いたおがくずを入れるカゴを見ても誰もいない、工房のドアを開いて道路を見ても誰もいない……それでは……?

「完全に理解したよ」

 そう言うと彼は笑ってヅラを引っかきました。
「小さな声を聞けるならその音のもとが何か見れるはずだから……仕事に戻ろう」
 そして斧を手に取り、最も厳粛で痛烈な一打撃を一片の木材に打ち落としました。

「おひ〜〜〜〜〜!!!まじで痛い!!!」

 あの音が悲嘆に暮れて泣き叫びます。
 このため、さくらんぼ親方は噴水についているガーゴイルのように口を大きく開け、舌をアゴにぶらぶらと下げ、恐怖から頭をつかみ、壁に背をつけて動けなくなってしまいました。



 さくらんぼ親方はかろうじて言葉が使える状態に戻ると、すぐに震えだし、恐怖からたどたどしくしゃべり始めました。

「一体、この小さな声を出している人物はどこにいるのか……?おぉ……、しかし、ここに生きいている魂はないのだ。この場合、一本の木材も男の子のように泣いてうめき声を上げるもんだという理解をせえよ、というので?ワシは信じない。このまき、これでだ、これも他の積まれた全ての薪と同じように、だんろ用の薪なのであって、火にかければ豆をでることができる……できるかな……できると思……ウン……で???まさか、この中に何人も誰かが隠れているというのか?」

 誰かが隠れていた場合、さくらんぼ親方にとって心底えぐい事態になります。さあ、木材を手に取りましょう!
 それからこのかわいそうな木材片を両手でつかみ、部屋の壁に向かって何の慈愛の心もなしに、強く叩きつけ始めましょう!
 そのあと、耳を傾けて本当に不平を言ういくらかの声があったかどうかの収穫をするのです。二分待っても何もありません、五分待っても何もありません、十分待っても何もないんだ本当。

「完全に理解しました」

 さくらんぼ親方は「おひ〜〜〜〜!!!」という声は自分が想像してしまったものだろうと精一杯努力して、笑いながらヅラを掻きむしり乱しまくりながら再び働き出しました。
 そして彼に大きな恐怖が取り憑いてきたため、勇気を出して歌おうとしました。
 それから斧を置いて、かんな を手に取り、一片の木材を かんな で削って綺麗にしようとしましたが、上に下にと木材に かんなをかけていると、先ほどの小さな声が笑っているのが聞こえたのです。

「やめてwwwぼくの体をピッツィカート奏法で演奏しないで!」

 今回はかわいそうなさくらんぼ親方は震え上がって倒れてしまいました。再び目を開けたときには地面に腰掛けていました。
 その顔は変貌して、いつも変わらず濃紫色だった鼻の先でさえも大きな恐怖から、濃い青色に変わりました。



◆出典元
『ピノッキオの冒険』 AVVENTURE DI PINOCCHIO
作   カルロ・コッローディ Carlo Collodi
出版社 Felice Paggi Libraio-Editore  出版年 1883年
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