虫けら
これの続き
恥辱と苦痛の汗でぬらついた体躯を覆い隠すように砂が厚く纏わりついて、穢らわしい。遠目には黒く巨大な芋虫が渇きに悶え苦しみながら地をのたうっているか、はたまた奇形の雄豚が浅ましくも自慰の享楽に耽っているようにでも見えたかもしれない。
腹這いに僕を見上げるヴァナデゴは、口いっぱいに詰められた木片で頬を伸ばしながらすんすんと哀れっぽく鳴いた。
男根を模した木製の玩具は他の女の股から乾かぬうちに口腔へと詰めたものだが、このしもべはそのような些事よりも僕からの赦しを得ることのほうが大事と捉えているらしい。
無論そうでなければ、無礼に対する手打ちを、頚の代わりに顔の薄皮を切り裂くことで良しとしてやった意義も薄れるというものだ。
手にしていた棒で強かに頬を打ち付けると、ヴァナデゴはくぐもった苦痛の呻き声を漏らした。先端に無数の鋭い突起がついた棒は、昔からメンジェゴ族の間で妻子や配下を躾けるのに用いられてきた道具だ。僕たちの皮膚は厚く痛みに鈍いため、しばしばこのような機会にはこういった道具が持ち出されてきた。
「誰が隠していいって? とっとと仰向けになれよ」
ヴァナデゴはもごもごと口を動かしながらも従順に腹を見せた。汚泥と破れた衣服の合間から赤く腫れ上がった肌が覗く。
「卑しく食糧を食い荒らすことしかできねェならさ、遠慮するこたねェよ。お前には手足が二本ずつ揃ってて、種無し用無しの棒がぶら下がってんだからさァ。なァ?」
股間へ真っ直ぐ棒を打ち下ろすと、ヴァナデゴは大きく目を見開いてがくがくと痙攣し始めた。瞳の焦点がぶれて、口の端からは泡をふいていた。
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21/01/21
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