◎『瑞樹くんの童貞卒業その後の話🤍』前編/後編から続くお話
◎クズなミツユキお兄ちゃんからタマキくんが常習的に性的虐待を受けているという前提の認識があればこれだけで読めます





瑞樹くんの童貞卒業その後の話🤍_余談




「おい、タマキ。―脱げ」

 家へ帰りついてジャケットを脱ぐなり、俺は開口一番にソファで膝を抱えて座っていたタマキに告げる。
 二週間もこんな生活を毎日続けていればお互いに慣れたもので、たったひとことなにか言えばタマキはもうほとんど泣きもせずに言う通りに従うようになった。

 「舐めろ」と言えば、今にも折檻の鞭を振り下ろされるのを待ち構える奴隷みたいな怯えた目で見上げて、俺の前に膝をついて口でチャックを下ろす。
 「脱げ」と言えば、悪戯をして叱られるのがわかっている飼い犬みたいに卑屈っぽい上目遣いをして、ゆっくりと、しかし淀みなくズボンと下着を脱いで俺の前で膝裏を持って脚を広げるのだ。

 ―だが、今日のタマキはどこか様子が違った。あからさまに嫌がって、微動だにしない。昨日まではもう随分とこの生活を諦め、受け入れたふうな態度だったのに。

「あ、の……」

 訝しむ俺に、奴はか細く切り出す。

「きょ、今日は、やだ……」
――――ああ?」
「ッや、やだ……あっ……!」

 いったいなんのつもりかとわざと乱暴に鞄を投げ捨てて歩み寄ると、タマキは顔を庇うように両腕を上げた。
 別に殴ったことないのにこの反応は被害妄想が過ぎるだろ。――――いや、あったかな? 思い出してみたらあるわ。でも本気で殴りつけたことはない。
 ちょっと都合が悪くなってきたからこの記憶は捨て置くことにして、俺はタマキの細っこい腕を掴んでソファの上へ引き倒した。そして腹の上へ重石を乗せるように乗り上げる。

「お、怒らないで、やだ、叩かないでっ」

 まだろくになにもしていないのに、タマキはすでに涙をぽろぽろ流していて、だというのに俺の下でなおも激しく藻掻いた。そうまで怯えるぐらいなら下手に逆らわずに言う通りにしていればいいのに。
 いつものように怒っているふりをしても頑なに抗って、そこまでして嫌がる理由が純粋に気になる。

「やだっ! やだあっ!」

 このまま無理に事を進めたらどれだけ嫌がって泣くのだろう。毟り取るようにして上着を脱がすと、とうとうタマキは弾かれたように飛び跳ねて叫んだ。

―ち、ちんちん腫れて痛いから、きょ、今日はさわんないでっ。おねがいだから!」
「……はあ?」

 思いも寄らない言葉につい呆気に取られて手が止まる。

「ご、ごめんなさ、ごめんなさい……。いた、いたいから、やだ……やめて……」

 ――――エッ!? えっちの権化!? あまりのえっちさに一瞬思考がバグってしまう。
 こんなことを口にするのが恥ずかしくて堪らないのだろう。泣きじゃくるタマキはその涙のためというよりかは羞恥のために頬を赤らめて、両腕で顔を隠しながら咽んでいる。
 正直そうやって泣くタマキは構わずこのままハメ倒してやりたいほどエロかったが、さすがに痛がってるのを酷使するのは可哀想だろう。
 こういうときはなんだ……? 泌尿器科か……? 少し悩んでさっき自分で投げ飛ばした鞄の中にあるスマートフォンを取りに行こうと顔を上げる。
 ―と、一瞬前までは確かにそこになかったはずの二枚の襖戸が眼前にあって、俺はぎょっとした。

―ちょいと邪魔するよ」
「マジかよ」

 まじまじと見つめる間もなく、流麗な柳の画が描かれた豪奢な襖がすぱんと開き、中から漆黒の紋付袴を身に纏う少年―ライセさんが現れた。隣にはいつも通り、秘書のコイトさんを伴っている。
 ほんと、なんでもありだな、この化け物共。

「おイトや、手間ァかけるがぼんくりにっく・・・・・へ連れていっておやり。まだ暮六つだ、探しゃあどこぞなりとも開いてるだろう」
「ウン、旦那の頼みだもの、お安い御用さ。任せとくれよ」

 ライセさんから飛ばされた指示に目元をふんわり染めてにっこり笑ったコイトさんは、俺の下からタマキを引き摺り出して横抱きにするとそのまま襖戸の奥へと消えていった。俺に限らずホールの人間共には愛想ひとつ振り撒きはしないのに、相も変わらずライセさんにはにこにこめろめろと変わり身の激しい女妖だ。
 もうすっかりヤる気自体は失せていたもののあっさりとタマキを奪い取られてなんだか面白くない気分になって、ソファへ座り直す。そんな俺のすぐ隣へライセさんはぽすんと腰を下ろして、からから笑った。

「御前さん、ちったぁ加減しておやりよ。盛りのついた雌猫じゃあるめェし、ねえ?」
「……善処します」
「……ふゥむ?」

 あまり気のない俺の返事にライセさんは片方の眉をくいっと吊り上げる。そして明朗を纏った笑みを一変、婀娜あだっぽく笑むと俺に撓垂しなだれかかった。

「そんなに根っこ・・・が恋しくって堪らないってンなら、代わりに御爺おじじがほじくったろうか」
「……じーさんのセクハラはキツいですよ」
呵呵呵かかかっ、こんなにもぷりち〜な美少年を捕まえて、言いやがるねえ」


―――
22/11/01


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