千冬×場地姉 | ナノ

東京リベンジャーズ

確保された黒猫



名前さんと校舎の中を一緒に歩く。普段なら絶対にありえないけれど、文化祭でもこうやって二人っきりで一緒に校舎の中を歩けるのは棚からぼたもち。…って使い方あってるよな?とりあえず、俺は名前さんと二人だけでいられるこの時間に本気で感謝。たまに場地さんたちは今頃どこにいるんだろうか、って少しは思うけれど、場地さんが多分名前さんのクラスもわかってるだろうし、ドラケンくんもいるし、いざとなれば連絡取れば良いから心配はしていない。


名前さんに誘導されるまま、やってきたとある教室。入り口のところには、可愛らしいけれど、どこか貧そうな男の子や女の子に扮した人たちがいた。何をやてるんだろうと思って、入り口に掲げられている看板に目をやれば可愛らしいデザインでメルヘンカフェと書かれている。なるほど、つまりこれは童話の何かってことか。名前さんは一言二言交わして、そのまま教室へと入るから、俺もそれに続いてお邪魔した。


「いらっしゃいませー!って場地じゃん」
「お疲れ〜」


中に入れば、もっと凄かった。教室にいる人間がみんな何かの童話であろうキャラクターの格好をしているからだ。もう言うなれば、コスプレ大会みたいになってる。人によってはオオカミだったり、馬のの被り物を被っていてそれで良いのか?と思う部分もあるけれど。文化祭クオリティだからこんなものなのかもしれないけれど、逆を言えば何でもアリだなって感じ。どうやらここは名前さんのクラスらしい。



「名前さん、もしかして」
「あたしはライブだったから、ないよ」


くっそ。名前さんのクラスの催しってことだから、名前さんももしかしてって思ったけど、バッサリと切られて俺はあからさまに肩を落とす。名前さんは楽しそうに笑って俺の言葉交わして、俺たちが教室に入るなり、名前さんを出迎えて親しげに話す人たちは名前さんのクラスメイトってわけか。


「あれ、もしかして名前の弟くん?」
「なんか似てないね」


名前さんと話していた女子が俺のことを見るなり、ぱあっと表情を明るくさせて言った。どういう意味の表情かわからないけれど、弟って場地さんと俺間違えられたってこと?いやいや、場地さんと間違えられるなんて恐れ多い。って気持ちと名前さんと俺が一緒にいても姉弟に見えるのか…って正直面白くないっつうか…、軽くキツイ。


「違う違う、弟はアイツらと寄り道してるんじゃないかな。弟の友達だよ」


笑って返す名前さんの言葉に俺は唇をキツく結んだ。そうだ、場地さんより上の名前さんは名前さんは高校生、俺は中学生じゃないか。


埋まらない壁を見せつけられたみたいで、面白くない、一気に気持ちは冷める。

だけど、名前さんのクラスメイトからすればどうでも良いこと。すぐに興味は俺から削がれて名前さんへと戻る。完全に視界から外された俺は静かに名前さんたちのやりとりを眺める。



「名前もさ、せっかくの文化祭なのにね」
「あんまりクラスにはいられないとはいえ、ねえ?」
「ん?え、あ、ちょっとっ」



ニヤニヤとし出した名前さんの友達。名前さんもライブの衣装で友達も仮装をしているからすごく異色だ。友達二人は名前さんの両脇に立って、言い寄って。名前さんは状況が飲み込めず困惑した表情で二人に交互に視線を送った。かと思えば、名前さんの両腕に自分達の腕を絡めてホールドし出した友達。名前さんは裏返った声、状況が読み込めず、困惑の声を何度も漏らすが、友達は気に求めず連行して行ってしまった。



完全に取り残された俺は、ポツンと一人。えっ、俺どうすれば良いんだ。


と思う間も無く、まるで入れ違いのように教室へ入ってきたのは場地さんたち。他をいっぱい色々見てきたらしい。「あったあった」なんて言いながら入ってくるし、メンツもメンツ、人数も人数だからすげぇ目立つ。


「よー千冬ぅ」
「はい!待ってました!」
「あれ、名前は?」


催しをしている生徒のことはガン無視。教室を見渡して、俺一人でいたことを疑問に思ったエマちゃんが不思議そうに辺りを見渡す。


「名前さんはどっか連れて行かれちゃいましたよ」
「えぇっー!」


ここは俺たちの教室ではないし、教室内の催しに触れずに大声出して、部外者なのに周りの目を気にしなさすぎて逆に浮いてる気がする。今来たばっかりの場地さんもマイキーくんもドラケンくんも教室に貼られたメニューとか装飾を眺めてるけれど、この後どうしたものか。名前さんがいるから来たわけであって、いなければ気持はどんどん冷めていくし、見たかったライブも見れたからな…。



「やーだっ!!!」
「コラっ!!」


賑やかな教室内の中、突然響く声はこの場に似つかないものだった。視線を向けてみれば、教室の端の方でさっき名前さんを連れて行った友達二人が何やらごちゃごちゃしている。その中に見え隠れするのは名前さんで、腕を引っ張り引っ張り返して、身を捩っているのか、攻防戦を繰り返しているように見える。鈴の音もした気がしたのは気のせいだろうか。


「名前も良い加減にしなさいっ!!!」


一人がグイッと名前さんの腕を引っ張ったようだ。勢いよく引っ張られて、体制を崩した名前さんが二人の陰から飛び出して、俺たちの前に現れる。その瞬間、チリンと鈴が鳴った。



「え、名前さ…」
「名前、かわいいーっ!!!」
「は!?え、エマたち来てたの…っ、やっぱ外す…っ!!!」


顔を真っ赤にした名前さん。俺だけじゃなくて、場地さんたちも来ていたことを知るなり、見るからに狼狽え一歩下がった。そして名前さんは頭上に手を伸ばすが、その手を掴んだのは金髪のあの人。めちゃくちゃニヤニヤしながら「外すなって」と言っているから、完全に楽しんでいるのがわかる。


「あははははっ!!名前、猫じゃん!!!」
「うっっさい!マイキー!!」


指差しで腹を抱えて笑うマイキーくんに、めちゃくちゃどうでも良さそうというかなんとも言えない表情を浮かべる場地さん。対照的な二人がより気に触ったんだろう、名前さんは人目も気にする余裕もなく、顔を真っ赤にして声を張り上げた。名前さんは怒ってるかもしれない、だけど今の姿では説得力は皆無で、むしろ余裕のなさもひっくるめて可愛らしい。


「ぶはっ、かわいいかわいいっ」
「でしょ〜!名前、ライブがあるから衣装着れないって言ってたけど」
「せっかくの文化祭だし、クラスの催しには参加してもらわないとね」


金髪のお兄さんと名前さんの友達が楽しそうだ、友達に関しては楽しいを通り越してご満悦にも見える。名前さんと言えばみんなの視線を集めて、恥ずかしそうに目を泳がせてるせいで俯いている。落ち着きないように動く体に合わせて、チリンとなる鈴。名前さんは友達の計らいにより、衣装こそはそのままだけど、黒い猫耳と首には鈴のついた赤いリボンをつけていた。


「名前、写メ写メ!!」
「えっ、ちょっと!」
「文化祭だし無礼講〜!」
「無礼講ってこういう使い方しないっ…!!!」


マイキーくんとエマちゃんは完全に大盛り上がり。携帯のカメラを構えるエマちゃんに慌てたり、マイキーくんの言葉に突っ込んだり、一向に落ち着けない名前さん。完全に蚊帳の外になってしまっているけれど、それで良かった。まさか名前さんのこういう姿が見られるとは思わなかったから、俺としては嬉しい展開。強いていうなら俺も写真欲しいけど、さすがにここで写真を撮るほどの勇気もない。周りからしたら、俺は名前さんの弟の友達…ってことだもんな…。そう考えたら悔しくなってきた。名前さんは未だにクラスメイトたちとワイワイしていて、話しかけ辛いしな。諦めるか…と一人心の中で踏ん切りをつけようとしていたら、エマちゃんが隣にやってきた。



「後で写メあげるね」


コソッと呟いたエマちゃんに俺は一瞬言葉が理解できずフリーズしてしまう。ニシシと笑った表情で始めて言葉を理解する。チラリと名前さんを盗み見れば、名前さんは今も友達と何やらワイワイしている。つけられた猫耳も首の鈴も諦めたのか、気にしないことにしたのか、そのままついていてその姿が可愛らしくて、この姿の写真がもらえるんだと思ったら俺は表情が一気に緩むのがわかった。


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