千冬×場地姉 | ナノ

東京リベンジャーズ

松野母の疑問



※松野母捏造あり


アタシは団地に住む女手一つで息子を育てる母だ。日中は仕事をして終われば家のこと。時間に追われる日々でたまに不安になる。あの子のことを自分なりに見てきてはいるけれど、それが正解なのかとか。


「こんにちは」
「こんにちは」



団地ではいろんな人たちが住んでいる。顔見知りの人、名前まで覚えてる人、様々だけれど、それは大人の方の話で子供まで正直覚えきれていない。だから、こうやってたまにすれ違う女子高生の子と会うたびに挨拶されるから、挨拶するけれど、どこのお家の子だろうっていつも考えてしまう。


中学生ではなく、でも大人でもない。

まだあどけなさが残る女の子、中学の制服でもないから必然的に高校生ってのはわかっているし年頃ならではの化粧気もある。伸ばした髪が揺れていて、これからどんどん大人らしくなるんだろうなって思ったのが印象だった。たまに男の子と一緒にいる時もあったりして、彼氏かなと思ったり。




見かけた時だけ思い出すその子のことは、会った時に挨拶する団地に住む子って認識だったはず、なんだけど。





「あ、お邪魔してます」



この日はたまたまだった。仕事だったけれど、今日だけは変則的なシフトで普段より早上がり。買い物して帰って、たまにはゆっくりあの子との時間も作ろうかなと思って帰ってきてみたら誰が想像できた?


玄関の扉を開けて、すぐにある台所に立っていたのはよく挨拶をしていたあの女子高生。何故か我が家のお皿を洗っているではないか。



「洗ったものってここで良いですか?」
「え、えぇ」


洗い終えたお皿を置いて、流しに飛び散った水なども拭いてくれる。全てを終えて、タオルで手を拭いていて、あまりにも自然に立っているから、自分の方がおかしいのかなと思えてきた。



「名前さーん、これ…、っては?!仕事は?!」
「今日変則的だったのよ!」



現れて早々、母親の顔を見るなりびっくりしたし表情して何でいるんだと言いたそうな千冬。アタシの方がびっくりしてるのにその反応はちょっと待ちなさい。さっき彼女の名前を言っていた気もしたけどいしきしてきいてなかったからちゃんと聞き取れてなかったわ。



「アンタ何お客さんに洗い物させてるのよっ」
「だ、ってこれは…!」



そう、アタシのいない時に何女を連れ込んでるんだ、とか言いたいことはたくさんあるんだけど、今言えることだけ言葉を選んで伝える。千冬も反論しようとするけど、だってじゃないのよ。



「ごめんなさい、勝手に使っちゃって。」
「や!いや、名前さんのせいじゃないんで…!」



名前ちゃん、って言うのね。次はちゃんと覚えたわ。だから今後会った時には「名前ちゃん、こんにちは」って言えそうね。彼女は挨拶してくれた時も思ったけど、礼儀正しい印象しかない。だから今もアタシが千冬に言ってる言葉を聞いて気分を悪くさせてしまったかも。それは千冬も勘づいたみたいで慌ててフォローを入れ始める。千冬、アンタ歳上好みだったの?まったく母のいないところで…!もうツッコみたいことは山ほどあるけど、どうすればいいのか。アンタならどうする?って今は亡き旦那のことを思い浮かべていれば、突然現れた人影にアタシはまた驚かされる。



「千冬ぅ〜、この続きねぇの?って」
「あら、場地くん」


いらっしゃいって次はすんなり言えたわ。だって現れたのは千冬と仲良くしてくれている場地くん。制服姿で千冬の部屋から出てきたから、今までずっと部屋にいたのよね。場地くんも「邪魔してます」なんて軽く会釈しながら挨拶してくれて根はいい子よね。もう見知った顔に安心しつつ、ってことは三人でいたってことなのね、と理解。彼女も場地くんも落ち着いてるわ、千冬なんて場地くんの言葉に「あります!ちょっと待ってください!」って言いながら、もうこの時点でアタシのことはそっちのけで部屋に戻ってしまった。それはもう慌ただしく。つまり、アタシと彼女の二人が取り残されたわけだけれど、まるで空気を読んだように千冬と入れ違いでやってきた愛猫が足元でニャアと鳴く。


「ペケ〜」


名前ちゃんは足元にやってきたペケを嬉しそうに撫でてあげるし、ペケも気持ちよさそう。見る限り懐いてるのは明確だ。


「あ、迷惑じゃなかったらお菓子作ったので食べてください」


そう言ってテーブルの上に見覚えのない袋を指した。気づけばペケを抱っこして表情ゆるゆる。慣れた手つきで抱っこしてるから、もしかしたら彼女の家も猫を飼ってるかもしれないし、アタシの知らないところで我が家によく来ていた可能性だってある。普段見る表情よりも緩んでいたから、完全にそっちに気を取られすぎて「ありがとう」と返事をしてからハッとさせられる。けど、その時にはもう名前ちゃんも場地くんや千冬の後を追いかけてペケを抱えたまま部屋に戻っていった後。






「名前ちゃんは友達なのかしら、それとも場地くんの彼女…?」


例え千冬の彼女だったとしたら、男としてそこに場地くんがいるのもどうかと思う。だって彼女と場地くんどっちも選ぶのはおかしいでしょ。



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