千冬×場地姉 | ナノ

東京リベンジャーズ

場地圭介の本音




「千冬、姉貴と帰ってろ」


俺はまだマイキーたちと幹部会があっからよ、と伝えれば千冬は素直に首を縦に振った。姉貴と一緒に「お疲れ様です!」なんていつものように元気な声で挨拶して。一度は視線を逸らしていたはずなのに、俺は遠くなった背中を改めてぼんやりとした気持ちで見つめていれば、マイキーが俺の名前を呼ぶ。



「おい、場地。幹部会ってなんだよ」
「俺らももう解散だろうが」


俺の話を聞いていたらしいマイキーとドラケンに、すっげえ不可解そうな顔して言われた。確かに俺らの集会は既に終わっていて解散の予定だ。これ以上残っている必要はない。なんなら、姉貴と千冬と一緒に帰れたはずだ。けど、俺は残ることを選んだ。



「こうでもしねぇと、アイツら二人になれねぇだろうが」


楽しそうに笑う姉貴の横顔を見て、俺の中でどこかホッとした気持ちが込み上げる。兄弟いる奴らとの話題で大体一回は聞くのが、仲が良いのか悪いのか問題。実際、仲が良いとか悪いとかわなんねぇけど、これが俺たちの普通な関係で、比較のしようもない。けど、割と周りからは仲が良い分類にされてる気がする。それも多分姉貴の性格が、ああだからだろう。


社交的であり、よく喋る。


俺のところにもふらっとやってきて、勝手に話してきたりもするし、俺の話も聞いてくれる、そんな奴だ。


俺とは違う、むしろ正反対の性格だからこそ、俺が言った言葉を相手に汲み取ってもらえる方が少ない。案の定、何言ってんだよって言いたそうな表情されて、俺は思わずため息が出る。ガシガシと頭をかきながら、口にするかしないかを躊躇ってしまう。




「アイツら、付き合ってんだわ」




辺りに響く驚きの声は、複数の声が重なっていた。周りの視線が一気に集中したのもわかる。正直言って、こんな理由で視線集める気まずさはあったもんじゃねぇ。よりによって姉貴の恋愛沙汰だぞ?それの相手が?千冬?俺だって「はぁ?」ってなったわ。



「ウチ、そんなの聞いてないんだけど!」
「俺だって知らなかったわ」
「シンイチロー失恋かよ〜!」



エマもマイキーもうるっせぇ。俺に言い寄ってくんな。ドラケンたちなんてポッカーンってすっげぇだらしねぇ顔してるし。


「ぶっちゃけ、場地的にはどうなんだよ」


騒ぎ散らすマイキーたちを横目に俺に聞いてきたのは三ツ谷だった。ハァ、とため息をついて空を見上げる。こんな東京の空で見える星は疎なものだ。


「姉貴が決めたことだし、本人がいいと思えるなら、真一郎くんでも千冬でもどっちでもいいんじゃね」


姉貴が真一郎くんを好きだと思ってるのは知ってた。

真一郎くんと会う時の姉貴はテンションたっけぇし、顔もニヤニヤしてて見てるこっちが何とも言えない気持ちになったものだ。マイキーたちいわく、真一郎くんも姉貴が好きらしい。俺からすりゃあ、姉貴は相手にされてねぇだろって思ってたけど、勝手に「シンイチローと名前が結婚したら俺ら兄弟じゃね?」って言われた言葉は今でも忘れねぇ。


「そっか、」と納得したのかわからないけれど、三ツ谷の返事が耳に入ってくる。まだマイキーたちは何か騒いでるけど、しらね。



そう、俺だって知らなかったんだよ。







知ったきっかけは、本当にたまたまだった。






「よっ、けーすけ」
「…うす」



千冬もいない帰宅途中、声をかけられて誰かと思いきや、姉貴の仲間。まあ、俺を名前で呼ぶヤツの方が限られてっから、なんとなく察しはつくんだけど。ニコニコなんだか、ニヤニヤしながらやってくるのはいつもの事なのに、今回はヤケにイヤな予感がした。しかも来た方向は俺んちの方で、姉貴と一緒にこっちまで来たんだろうな。正直、めんどくせぇけど、俺はコイツが来た方向に行かなければならないし、逃げる理由もないため必然的に顔合わせることになる。


「ダチと姉貴のキューピットじゃん」
「は?」


今、なんつった?なんの話だ?思わず聞き返したし、そしたらすっげぇ驚かれたんだけど。あ?いやマジどういうことだよ、って聞いて混乱した。そりゃするだろ、するよな。



グルグルと回る頭の中。

言葉は理解できても、訳わかんなかった。

だから、姉貴と会っても全然話すらしてねぇ。つーか、どう話せと。千冬は…、まぁアイツから話しかけてくるしな。なんも変わってなくって、逆にマジか?って思った。いろいろ、夢かと思った。

だけど、たまたま団地の踊り場で千冬と姉貴が話してるのを聞く機会があったから。盗み聞きみてぇなこと、するつもりはなかったけどよ…。聞こえたんだよな。



正直、最初聞いた時は気持ちはついてこねぇし実感もなけりゃ、本気か?って思った。

けど、俺にとっては大切な仲間であり、姉貴を助けてくれた。俺が仲間として認めた男だからこそ、千冬だから良いか。って思えたのも事実。



口ではどっちでもいいって言ったけどよ、良いんだよ。



「アイツらが決めたことだからな」



千冬も姉貴も幸せならそれでいい。


千冬は知らねぇと思ってる俺に話してぇらしいから、明日ぐらいには機会を作ってやっか。


[ back ]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -