千冬×場地姉 | ナノ

東京リベンジャーズ

ぬくもり



※血ハロ生存ルート


血のハロウィンと呼ばれた10月31日から数日、意識不明の重体から場地さんは一命を取り戻し、今現在病院で療養のため入院中。暇があれば場地さんのところにお見舞いにくる日々を過ごしているわけなんだけど、


「痛くない?」
「…あぁ」
「けーすけ、へーき…?」
「…あぁ」



場地さんの入院する部屋に来てみれば、先客がいた。ベッドで上半身を起こしている場地さんのふくらはぎあたりに頭を乗せた状態で場地さんのお腹のあたりを入院服の上からそっと撫でている。一瞬、ギョッと驚いてしまったがその人は名前さんで、俺は何とか冷静さを取り戻すさっきからずっと、こんな感じで俺は声をかけていいのかわからず、その様子をただ見ているだけ。



「けーすけ、」


再び場地さんの名前を呟くと、場地さんは「だああああもう!千冬ぅ!姉貴連れてけ!!!」と痺れを切れしたように大声を張り上げる。ちなみにこの大声の中、名前さんは微動だにしないのも凄いなって思った。




場地さんに言われて、俺は来たばっかだと言うのに名前さんの手を引いて歩いていた。場地さんにずっとくっついていたから、離れること嫌がるかと思ったけど、案外すんなりと立ち上がってくれて拍子抜けつーか…。俯いたままの名前さん、立ち上がって一緒に病室を出る時、ちらっと場地さんの方を見れば小さくため息をついて珍しく弱気な困った表情で名前さんを見つめているのを見てしまう。


場地さんも居た堪れなかったんだろうなと思った、心配かけてる自覚もあって見てられなかったんだろうなって。



屋上の扉を開けて出てみれば、俺たちの心の内とは裏腹に晴天が広がっていて、ぶわっと風が吹く。



「名前さん、寒くないですか?」
「うん…」


11月の風は冷たい。今まで病室にいた名前さんに何か羽織るものを持たせればよかったと思うが、今更戻るのも手間だ。俺は着ていた上着を脱いで、名前さんにかけてあげれば、ここでやっと名前さんと今日初めて目が合う。その瞳はいつものような光はなくて、虚無が広がっていた。



「ちふゆ、あのね」



ギュッと俺の上着を握る小さな手。



「不安になるの、圭介が死んじゃうんじゃないかって本気で思った。怖かった、今も確認しなきゃ夢じゃないかなって思っちゃうの」




消え入りそうな声で話す名前さんはいつもみたいに明るく話す印象とはかけ離れたもので、名前さんの中でどれだけ大きなことだったのかが痛いほど伝わる。



「ごめんなさい…、名前さん…、俺、気付いてたのに、知ってたのに、守れなくて、そばにいたのにっ」



そうだよな、俺だってマジで怖かった、身内である名前さんが何も思わない訳がない。病院に運ばれて場地さんが無事だと確証が持てるまで、俺はずっと俺が許せなかった。不甲斐なかった、悔しかったあの気持ちが込み上げる。自責の念がぐわっと自分の中に押し寄せて、居た堪れなくて自ら名前さんから視線を逸らした。


「ちふゆ、ちふゆは悪くないよ…、謝んないで」


耳に入ってくる名前さんの声。


「千冬は頑張ってくれたよ、圭介のこと信じてくれてたじゃん」


澄んだ優しい声。


「圭介、嬉しかったと思うよ。不器用な子だからね、素直にもなれないけど、千冬って自分を理解してくれる人がそばにいて、私は少なくともよかったって思うから」



俯く俺の頬にそっと触れる名前の小さな手。


「千冬、だから泣かないで」



両手で頬を包まれて、俺は名前さんに促されるまま顔を上げれば、名前さんの顔はぼやけていた。


悔しい、辛い、不甲斐ない、そう思う俺を優しく包んでくれる名前さんの手があたたかくて、なんとも言えない感情が込み上げて目から溢れる。止まることなく、ぼろぼろと。


生きていることを表す体温。

場地さんのそばにいたのに、何もできなくて、名前さんも悲しませて、不安にさせて。尊敬する人の力にもなれず、大好きな人も不安にさせるなんて。


「ありがとう、千冬。」


まるで俺の心を見透かしたかのようなタイミングだった。


「千冬が千冬で、いてくれて良かったよ」


そっと寄り添った名前さんに俺は甘えて抱きしめる。バレバレなのにそれでも名前さんに見られないように泣いた。


場地さんが無事だってわかってるのに、あの時の恐怖が消えなくて、まだ心が震えている。



俺も名前さんもまだ気持ちがついていけてないんだ。


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