千冬×場地姉 | ナノ

東京リベンジャーズ

あなたの言葉がこだまする



小さい頃、誰もが憧れたものって一つはある。

俺だってそうだし、名前さんだって例外ではなかった。



「懐かしいの読んでますね」
「あ、千冬いらっしゃーい」



場地さんの家に行けば、居間でくつろぎながら漫画を読む名前さんがいた。漫画の表紙を見ると懐かしい作品。アニメ化もされていて、幼稚園ぐらいの頃の女子はみんな大好きだった気がする。「月に代わっておしよきよ」とかよく聞いていたなぁ…と。



「たまーに無性に読みたくなるんだよね」
「女子、みんな好きっすよね」
「まあ女の子のバイブルですから」



名前さんの傍で山積みになった本、それもよく見れば同じシリーズのもの。無造作に積まれたそれらは、一応巻数順に並べられていて、手前と後で分かれてるのをみる限り、読んだ後とこれから読むものっぽい。



「千冬はキャラクターわかる?」
「まあ、なんとなく…」
「じゃあ、千冬はどの子が好き?」



名前さん、知ってると好きはだいぶ違うっすよ。俺が知ってるのは本当にキャラと名前がなんとなくわかる程度。この歳になって読んだ漫画と訳が違うから、流行っていた当時、そんなふうに興味を持ってみたわけでもないので、正直めちゃくちゃ難しい質問だった。



「千冬、少女漫画読んでるから聞いてみたんだけど」
「これは昔の記憶っすからね。見ればいたなぁ…ぐらいにはわかりますけど。つーか、原作とアニメ絵だいぶ違いますね」



名前さんも言えるか言えないか半々の気持ちだったらしい。そりゃそうだよね、みたいな感じの反応だった。俺は名前さんが読み終えたであろう側の漫画を一冊手に取り、ペラペラとめくってみる。セリフとかキャラクターデザインの懐かしを感じながら、原作とアニメ絵の違いを目の当たりにて、ちょっと新鮮な気持ち。




「千冬も読む?」
「面白そうっすね」
「ちなみにね、あたしの好きなキャラはまこちゃん」
「まこちゃん」
「そう、緑色の木星の子」



名前さんは読んでいた本を横に置いて、山積みになった本を漁りだす。表紙を確認してから、3巻目を手に取ったかと思えば「んー」と悩んで次の4巻目を手に取り、こっちがわかりやすい!と言ってた俺にも見えるように置く。表紙には赤、黄色、水色、緑、そして中央によく見慣れた主人公の5人が並んでいて、その中の緑色の子を指差す。



「物理的に強いんだけどね、料理上手でお嫁さんになりたいとか可愛らしい部分もあって、かっこいいと可愛いがどっちもあるの」
「へえ…」
「他の子達も可愛いんだけど、こういうギャップが良いよね」



名前さん、本当に好きなんだなって思う、表情が緩むほど嬉しそうに話すから。ギャップかぁ…。




「名前さんって、ギャップに弱いんすね」
「うん?そうだね。人によってはギャップ嫌いって人もいるけど、あたしは好きかな」


ギャップ…、










「千冬もそういうところあるよね」
「へ…」
「ファミレスで助けてくれたとき、かっこよかったから」



びっくりした。

突然俺の名前を言われて聞き間違えかと思った。名前さんを思わず見れば、名前さんは俺を見てクスリと笑ってる。それって、どういう…いや、えっ、働かない思考回路を必死に働かせてみるけど、考えがまとまらない。まとまらないのにジワジワと顔に熱が集まるのがわかる。



「名前さ…、」
















「千冬ぅ、ペヤングできたぞ〜」


後ろから場地さんの声がしてハッとする。そうだ、ここは場地さんの家で俺は場地さんに呼ばれて来たんだった。場地さんはいつものようにペヤングを準備すると言ってキッチンへ、俺は場地さんの部屋に行くよう言われていたけど、居間で漫画を読んでる名前さんを見かけて…、



「千冬ぅ?」
「あ、はっはい!あざっす!」



俺の反応がなかったことを不思議に思った場地さんに再び声をかけられて、慌てて出した声は上擦ってしまった。やっべ、恥ずかしい…。



「やっぱ千冬は可愛いね」
「あんだよ、急に」
「圭介は多分わかんないから良いよ」
「ハァ?」



名前さんはクスクスと笑ってるし、場地さんは訳もわからない現状に眉間に皺を寄せてる。完全に俺だけがテンパってる現状だけど、名前さんが誤魔化したことにより多分それに場地さんは気づいていない。




あー、名前さんが、俺のことかっこいいって言ったのマジ…?



その言葉だけが俺の中でこだました。


[ back ]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -