Nowhere...?跡地 | ナノ






転校生


長いような短いようなあらすじ
・夏休み前、両親の仕事(転勤族だが、この度海外へ)の都合で一人暮らししている兄の元で暮らし始める有梨
・学校もこの度、立帝学園に中途半端な時期に転校してくる(識は最初から)
・識と有梨は小さい頃からの友達だが、この学園では赤の他人を通している
・転校してくる前の日(日曜日)に街を放浪していたら色々あって切原の恨みを買う(有梨の勝ち逃げ)
・次の日、有梨が転校生としてクラスにやってくる←今ココ!!

注意
・識、有梨、切原、日吉、鳳、樺地の二年ズは全員同じクラス
・今回は有梨と切原と日吉しか出てきません←
・元ネタは電脳コイル第四話『大黒黒客クラブ』の前半
・ある程度電脳コイルを知ってると読みやすいかも知れない
・あまり読む必要性が感じられない細かい設定はこちら→

おk?↓











担任に促されて教室に入ってきた季節外れの転校生の姿を見て俺は思わず目を丸くした

――忘れもしない、アイツだ!

昨日、メタバグを巡って勝ち逃げした挙句、なんとあろうことか俺のメガネを半壊させた奴だ

おかげで三ヶ月分の小遣いがパーになった


「隣町から越してきました。七森有梨です」


黒板に自分の名前を書き終えると単調にさっさと自己紹介を済ませると、窓側の前から二番目の空席に着席した


「そういうわけだからお前ら仲良くしてやれよー」


そう言って投げやりな言葉を残して担任は教室から出て行った

まさか転校生でしかも同じクラスとは一体なんの因果か


「おい、切原」


ふと後ろの日吉が話しかけてきた


「んだよ?」

「さっきからあの転校生睨んでるけど、知り合いか?」

「……ほら朝言ってた昨日の奴だよ」

「ああ、お前のメガネを半壊まで追い込んだ奴か」

「ぐっ……」


こうして改めて他人に言われると、ダメージが大きい

なにも言い返せないところが悔しい

確かに女子にあそこまでやられたのは認め難いが、否定はしない


「馬鹿な真似すんじゃねえぞ」


と、日吉が釘を刺す

が、しかし俺はここでふと考えてしまった

いや、ちょっと待てよ

これはもしかして仕返しをする絶好のチャンスじゃね?

ちょっと転校初日でこれからの奴の学校生活を壊すことになるかもしれないが、先に仕掛けてきたのはアッチだ

俺と同じ目、いやそれ以上に遭わせてやる!

これぞ、いんがおーほーってやつだ

そう思うと、俺はニヤリとタチの悪い笑みを浮かべた

後ろで日吉が「おい聞いてんのか!」と言っていたが、聞こえないふりをする


見てろよ

本物の俺の力を見せてやる……!





一時間目はどう仕返ししようか考えて潰れた

出した結論はバナー広告テロ

操作は単純ではあるが、ほぼ同時に全てのバナー広告を相手にしなければいけないし、僅かなミスが大量のバナー広告を産み出しかねないため非常に厄介なものでもある

ちなみにこれは俺が執行部に入りたての頃に三強の先輩達(主犯幸村)から洗礼として受けた嫌がらせでもある

だがしかし普通にやるだけじゃあ俺の腹の虫の居所は収まらない

どうせなら慌てふためく姿をクラス全員に晒したい

え? 性格悪いなって?

うるせえ、それだけ俺のプライドがずたずたにされたんだ

お前のプライドも同じぐらいずたずたにしやる!

今か今かと復讐のチャンスを伺って二時間目と三時間目は終わってしまった

だが、そのチャンスは昼休みを前にしてやってきた

四時間目の数学の教師は性格が悪いことで有名だ

そいつは例え風邪の休み明けで前回の授業を受けていなくても「俺の話を聞いてない」と判断すれば容赦なく当てる

しかもその問題が地味に難しい


「次の問題……そうだな、七森お前が解け」


今日転校してきたばかりの奴も例外ではなかった

ほんの少し黒板から窓の外へ視線を移したところをたまたま見られ、そのまま当てられた

一瞬、七森は顔をしかめたが、おとなしく立ち上がり黒板へと向かう

そしてチョークを手に取り、問題に取り掛かった

それを見計らって俺は二時間目、三時間目にバナー広告をたっぷりと溜め込んだメールを送った

奴のメガネのアドレスなら昨日のときに逆探知してるので奴に送ることなど造作もない

数秒のタイムラグがあった後、奴の左に俺の送ったメールが現れた

奴は触らなければ問題ないと思ったのか、特に気にすることなくチョークを走らせていく

だが、残念だったな

こいつは触らなくても自動で開くんだよ!

そしてメールは独りでに開いた

すると息もつく暇もなく奴の視界がバナー広告でいっぱいになる

ざわりと教室が小さく声を上げた

幸い、この意地の悪い数学教師はかなりの高齢のため俺達のメガネとは違う普通の眼鏡をかけているため何が起こっているかは知らない

さすがの奴も動きが止まっているところを見ると動揺しているようだ

どうだざまあみろ! これがお前が俺にしたことの仕返しだ!!

心の中で高笑いしていたが、ふと教室の雰囲気が変わった

さっきまでのざわめきは可哀想などの同情からくるものだったが、今は違う


「なん、で……?」


依然、奴の視界はバナー広告で埋め尽くされているが、その数が増えないのだ

開いた先から消されていく

別に消されるのは想定内

驚くのはそこではない

奴は問題を解く右手以外、全く動いてないのだ

左手はだらりとぶら下がったままで何か操作しているわけでもない

もしや誰かが『管理共有』で奴の代わりに……?

黒板に夢中の教師の目を盗んで教室全体を見渡すも誰一人それらしい動作をしているものはいない

みな目の前で起きている出来事で手一杯だ

よく考えれば転校してきたばかりで仲のいい友達に援助してもらえるわけではない


「クッソ!!」


見物人を気取っていたが、バナー広告が開くスピードと奴の消すスピードが逆転し始めたのを機に手を動かし始める

そんな馬鹿な!?

一体奴はどんな手を使っているんだ!?

必死にキーボードを叩く


「……正解だ。できたな」


教師の声にはっと顔を上げる

そこにただのひとつもなく広告の姿はなかった

奴は教師に言われ席に戻る

その一瞬、奴と目があった

今まで表情一つ変えなかった奴に初めてそれらしいものが浮かんだ

それは残念だったなと言わんばかりの『嘲笑』

何事もなかったように座る奴に今の出来事がまるで夢であったかのような

そう、言うなら狐につままれたような気分になった

が、それも束の間、後ろの日吉が声をかけてきた


「切原、それ何だ?」

「え?」


日吉が指差す先には三通のメール

音もなく開いた三通のメールからは通常の三倍の速さで広告が開かれる

夥しい広告は限度というものを知らないように増殖し続け、やがて俺の悲鳴と共にメガネは小さな爆発音と煙を上げた







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -