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MEMO 小ネタや雑談など。
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落第忍者乱太郎/立花仙蔵
大正浪漫と立花探偵シリーズ ※大正時代パロディ
壱 「仕事に出てくる」 「え?私もお供いたします、仙蔵さん」 「お前はいい。活動写真を見てくるだけだ」 「…まさか、ご婦人と?」 「文句があるのか?」 「ないデスけど…素直に逢瀬と言えばいいじゃないですか」 「なに、これが“仕事”だ」 「…そういうことですか」
弐 「仙蔵さーん、馬車もう来てます」 「お前の支度が遅いからだ」 「仕方ないじゃないですか、なれないんだから」 「…しかし、洋装が似合わないな」 「わかってます!仙蔵さんはよーくお似合いで」 「当たり前だ。お前とちがって私は、服に着られたりしないからな」 「(腹立つこの人!)」
参 「仙蔵さん、物書きにでもなられたらいいのに」 「お前は仕事を辞めたいのか?」 「違います!ただ、仙蔵さんならできそうだなって」 「さては、この間の依頼か」 「…だってー」 「私は気鬱になって早死にしたくないからな」 「そうなるとは限らないじゃないですか」 「世の文豪は須くそうだろう」
四 「うわ、また心中ですって」 「お前がもし心中するときは、ここを辞めて私と関係を切ってからにしてくれ」 「しませんよ!」 「仮定の話だ」 「じゃ、仙蔵さんは私にきちんと給料払ってから心中してくださいよ」 「考えておく」 「卑怯だこの人!」
伍 「じゃあ、失礼します」 「ああ。鍵はかけていってくれ」 「はいはい」 「それと」 「はい?」 「帰り道に気をつけるんだな。異国の影は、暗いから」 「え、ちょ、怖いこと言わないでくださいよ」 「ふっ」 「笑わないでください!」 「安心しろ、何かあったら私が助けてやる」 「…ふぁい」
陸 「犯人は貴様だ、文次郎!」 「なっ、仙蔵待て…」 「善法寺刑事、あとは頼みました…と、仙蔵さんは思ってます(たぶん)」 「わかったよ」 「俺は何の犯人なんだ!?」 「煩いぞ文次郎!」 「仙蔵さん待ってくださいよー」 「遅い。おいていくぞ」 「だから俺は…!」 「ごめんよ、文次郎。でも仕事だから」
漆 「観念しろ、怪人鉢屋!」 「立花探偵…(なんで俺が怪人?)」 「ふ、今日の私に死角はない。仕込みの火薬も完璧だ」 「仙蔵さん、それ爆発する量です」 「火薬のことなら私に任せろ」 「いや、あの一般人が…」 「さらばだ、立花探偵!行け、しんべえ、喜三太!」 「な、待て!来るなー!」
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2013/01/06
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落第忍者乱太郎/立花仙蔵
忍術学園時代の友人が数年ぶりに訪ねてきたのには、さすがに驚かされた。卒業以来会っていないはずだから、五年ぶりというところだろうか。 「久しぶりだね、仙蔵。元気にしていたかい」 「ああ。見ての通り、まだ命はある」 医療忍者として、どちらかというと後方部隊にいる僕と違い、仙蔵は火薬のスペシャリストと言うこともあり、危険な前線を渡ってきたはずだ。皮肉な言葉も、命あるからこそ。そう思えば、こうして再会できるのは非常に喜ばしいことなのだろう。 「それにしても、よくここが分かったね。あまり知られてはいないと思ったんだけど」 忍から仕事の斡旋を受ける時はさすがに使いが来るが、普段は近くの村を周り歩いて、医者として可能な限り治療をしている。 「いや、さすがに私も探すのに苦労したよ。相変わらずだな、伊作」 「まあね」 まだ幼い面影が残っていたあの頃と違い、今はすっかり大人の顔つきをしている。女人と見紛うほどの美貌も、いくつか傷が残ってしまっている。少し勿体ないなと思う反面、それでも生きていてくれて良かったと安堵した。 「ところでわざわざ探したってことは、用があったんだろう?」 「そうだ。知人でこの手の道に明るいのがお前くらいしか思いつかなくてな」 「それは、光栄だな」 少し疲れたように笑うと、仙蔵は僕が出したお茶を飲んで足を崩して胡座をかいた。 「――伊作。盲を治す方法を知っているか」 その顔は僕が知らないもので、戦場で見せる研ぎ澄まされたそれのようで、同時に誰か愛しい人へ向ける眼差しのようで、仙蔵が本気で訊いているのだとわかる。 「……少し調べてみるけど、期待はしない方がいい」 束ねて部屋の隅にまとめてある書籍を引き寄せるけれど、そんな下りを読んだ記憶がない。 「何か少しでも、それらしいことがわかったら教えてほしい」 「わかったよ。……ああ、そうだ。単なる噂とか、どちらかと言えば伝説みたいな感じで聞いてほしいんだけれどね」 ふと、いつか聞いた話を思い出した。まるで物語のようで信じられないことだったけれど、立ち上がりかけた仙蔵を呼び止める。 「…なんだ?」 「眼福草、というものがあるんだって。それを薬にして飲むと、盲が治る」 「本当か!」 「いや、噂だよ。本当にあるなんて聞いたことはない」 「そうか……」 それから仙蔵は、また来る、と言い残して帰ってしまった。泊まっていくように誘ったけれど、あっさり断られてしまった。 「まったく、思い出話に花を咲かせるどころじゃあないね」 引き寄せた本を手にとってめくりながら苦笑した。
2013/01/05
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落第忍者乱太郎/立花仙蔵
※現パロ
「仙蔵。私、ジブリ三大イケメンはアシタカとハクと、ハウルだって聞いたことがある」 「なんだそれは」 「確かにハウルはかっこいい。今日、見てて思った」 「…ほう?」 「けどね、心臓なかったから仕方がないとは言え、精神年齢低くて私は無理。最初ならともかく」 「そうか」 「外見はイケメンだけどね。あ、でも金髪のときの方が好きだな」 「金髪が好きなのか。私は初耳だな」 「違うよ。金髪の方が、ハウルは好み。仙蔵が金髪だったら好きにならないよ」 「ほう」 「でもってさ、やっぱり奥手だよね。こう、ここはいけよ!ってシーンあったのに」 「つまりどういうことだ?」 「だから、ここはキスシーンでしょっていうのが」 「お前はそんなことを考えていたのか」 「悪い?あ、でもイケメンを自覚してかっこいい角度までわかってたのはいい」 「……はあ」 「え、急になに?」 「なにか、だと?居もしない男の話をされて嬉しいとでも思うのか」 「あ。…あー、ごめん」 「……構わん。それより、さっきキスシーンがなんとやらと言っていたな」 「え?うん、まあ」 「私なら、外さない自信があるぞ」 「っ、だから仙蔵の方がかっこいいに決まってるでしょ!」 「なんだ、わかってるじゃないか」
こうなるとわかっていて嫉妬する仙さま。
2013/01/05
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落第忍者乱太郎/立花仙蔵
「姫様、もう五年です。いい加減、ご決断なさってください」 「そなたはもう、と言うか。私はまだ五年だ。生きてきた三分の一にも満たぬ」 重苦しいため息が背中から聞こえた。幼少から世話になっている刀兵衛には、迷惑ばかりかけている。 「しかし、姫様も御歳十八。下々で何と言われているか御存知ですか」 「行き遅れ、だろう。そんなことはわかっている」 目が見えないことは当たり前で、目が見える、美しいということがわかる、ということがどういうことなのかわかるはずがない。これからも無の世界で生きていくと思っていたのに、ある男が残した言葉に捕らわれて早五年。 「……今年で、最後にするつもりだ。仙蔵にも申し訳がないしな」 私の目が見えるように方法を探し出す、と言ったかの忍者は、律儀に毎年決まった時期にやってきて、東西から聞き集めてきた療法を教えてくれる。しかしどれも、実を結ばなかった。見えない目が見えるようになる方法などないのだとわかっている。わかっていた。だけど、仙蔵の真っ直ぐな声がただ聞きたくて、縁談を片っ端から断り続けたこの五年間。さすがの仙蔵も、諦めがつく頃だろう。 「……刀兵衛」 「はい」 「仙蔵は、本気だったのだろうか。本当に私の目が見えるようになると思っておっただろうか」 「…かの者は、昔も今も、そう信じておるでしょう」 「そうか……」 仙蔵は約束をしてくれた。私の目を見えるようにすることを。それも、仙蔵と私自身の顔を見せるために。野に、山に、美しいものを見に行こうと言った。だから、それを信じていた。 「……刀兵衛、そろそろ仙蔵の来る時期だな」 「左様ですね」 「もてなす支度をいたせ」 「御意」 最近は本を読まなくなった。あの声でなければ、物語から命を感じられなくなったのだ。 「…――仙蔵」 お前がどこぞの領主の子息であれば良かったのにと思わない日は、一日とてないよ。
2013/01/03
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落第忍者乱太郎/立花仙蔵
「私は生来目が見えぬ。だからな、外見の美醜なぞは関係ないのだよ。ただ、声と、心うちだけが真実なのだ」 学園を卒業して初めて就いた任務。ある城の姫君を守れという内容で、その姫君とやらは、私が過去に見た女の中でも屈指の美貌を奇妙に歪ませながらかくのごとく言った。その目は、確かに開いていたが、ぼんやりと濁っているように見えた。 「自分が美しいと言われても、分かるはずもなかろう。ならば契る相手がどうであれ、やはり変わらん。……と、思うているのだが、そなたはどう思う?」 「私は、姫様をお美しいと思います。それは見目だけでなく、姫様自身のお心が、で御座います」 「左様か。のう、そなた……名は何と申す。刀兵衛が此度の忍者は並々ならぬ美しさと申しておった。私に言っても仕方無しと分かっておっても、な」 期間は、二か月。この姫君が婚姻を結ぶ相手を充分に調べるための時間だ。私とは別に雇った忍がそちらに回されたと聞く。私の仕事は、影に姫君を守ること。それだけだ。 「――仙蔵と、申します」 「仙蔵、か。…良い名だ」 このお目見え以降、床や天井裏、柱の影に身を潜め、姫君の前に姿を現すことはなくなる。気配を消して、傍に控えねばならない。 「仙蔵、そなた読み書きの心得はあるか?」 「は。僭越ながら、少々」 ならば良い、と姫君は笑いながら立ち上がった。左手で長い木の杖をついて、真後ろの襖を開け放つ。十何年も盲の生活をおくれば、この程度は造作もないのだろう。それにしても、下がれと言われていないのでいかばかりに対処したものか考えあぐねる。 「仙蔵、こちらへ」 「しかし、姫、」 「本を読んでほしいのだ。私はいつもの侍女より、そなたの声の方が好きみたいだ」 襖の奥は、長い廊下が続いている。その最奥にあるのが、姫君の部屋。ただの雇われ忍者を簡単に部屋へあげるのは感心しない。いくらなんでも、私には出過ぎた真似だ。 「私は、姫様の護衛が任務です。かたじけないが、遠慮させていただきます」 「なんだ、つまらん。どうせ床下か天井裏におるなら、隣におっても同じであろう」 「……恐れながら、姫様はもう少し警戒心というものをお持ちになられた方が良いです」 「どの忍者も同じようなことを言いよる。……仙蔵、毎日ひとつの話でいいのだ。そなたの声を、聞かせにきておくれ」 ひどく情けないことに、その時の姫君の表情に私は絆された。 「――御意」 姫君はぱっと笑顔を浮かべる。本当に珍しく、私が美しいと思う方だった。
2013/01/03
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