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*真正ファムファタル



ファムファタールの囁き と話が繋がってます。


「あぁーあ、こんなに汚されちゃって...」

はあ、と公安本部のエレベーターに乗り込み1人溜息を吐くのは公安対魔特異4課に属するみょうじなまえだ。なまえが憂鬱げに肩を落とす理由、それは今日討伐した悪魔によってカッターシャツをドロドロに汚されたからである。

(せっかく直行で飲み会行こうと思ってたのになぁ...)

とりあえず泥の悪魔で報告したけど絶対にあれ泥で間違いないわ。体ドロドロだったし茶色いしシャツの乾いたところ砂利っぽいし... となまえは討伐した悪魔を忌々しい姿を思い浮かべながら自身のシャツのシミに眉を顰める。

(まあ過ぎたことだしつまらないこと考えるのはやめちゃお)

けれど公安のデビルハンターとして場数を踏んでいるなまえの切り替えは異常に早くすぐに泥の悪魔を頭の中から追いやると次に考えたのは今日の飲み会についてだった。直行で飲み会に向かおうと思っていたという言葉通り、今日は特異4課全員が集まって飲み会をすることになっている。4課全員が揃うのは今日が初めてで、新人を公安に留めるためだの飲み会の真の思惑はさて置き、なまえは特別愉快な人間の多い4課全員が一堂に集い共に飲むのを楽しみにしていた。
一杯目はなにしようかな。やっぱり一杯目は生か、乾杯もするだろうし。となまえは心躍らせながら考える。

「....そういえばあの子って幾つなんだろ」

ふとなまえの頭の中に1人の青年が浮かぶ。その青年はこの前の4課合同任務で初めて出会ったデンジである。その任務で悪魔の力によってホテルに閉じ込められた際なまえは散々デンジをからかったのだ。
親しい友人である姫野がホテルに入る前にからかっていたのを見てつい出来心で、2人きりの時契約に性感帯を差し出しただのと際どい言動を繰り返した。するとデンジはその一つ一つ大仰な反応をして見せて、その姿にすっかりなまえはデンジを気に入ってしまった。自分の欲望に愚直ながらいざそういった場面に直面すると狼狽える姿に気持ちが昂ぶったのをなまえは今でも新鮮に覚えている。

「ふふっ、あんな嘘に騙されるなんて本当に男の子からかうのは楽しいな〜」

類は友を呼ぶのか、友人姫野と似たり寄ったりな発言をしたなまえはさて今日の飲み会ではどうデンジくんをからかってやろうかと鼻歌を奏でる。程なくしてエレベーターがボタンを押した階に到着し、降りた後もなまえは上機嫌に歌いながら自身のロッカーのある更衣室へと向かう。

「ふんふーんふふーん 」

仕事後は直帰が基本である公安のデビルハンターだからこんな時間に人はいるまいと鼻歌を奏でたままなまえは更衣室のドアを開けて中へと入る。

「何かいいことでもあったみたいだね 」
「えっ...あっ...マキマさん...お疲れ様です 」
「みょうじちゃんもお疲れ様 」

そんななまえの予想を裏切り中には先客、マキマが居た。着替えの最中だったのかマキマは細い指先でワイシャツのボタンを一つずつ留めている。

「今日の飲み会が楽しみなのかな 」
「そっそっそんな感じ..です...」

公安に勤めて比較的長い部類に入るなまえだったがこの更衣室を使用しているマキマの姿を見たのは今回が初めてだった。そのせいか動揺を隠せずつい返事を噛んでしまったが、マキマはそれに対して何も言うことはなく2人の会話は途切れる。長椅子を挟んでなまえの向かい側で着替えをするマキマの存在に気まずさを背中で感じながら、なまえも着替えを始めた。ロッカーを開け汚れたワイシャツを脱ぎ、中に置いてあったビニールの袋へと入れて取っ手をぎゅっと結ぶ。そして次にハンガーに掛かった新しいワイシャツへと手を伸ばす。

「そういえば、みょうじちゃんって性感帯を契約の時に差し出したんだってね」

そんななまえの背でネクタイを結ぶマキマ。きゅっとネクタイを締める所作をこなしながらことも無しに投げた話によってなまえの伸びていた手がピタリと止まる。「えっ....」と反射的に溢し振り返ったなまえをマキマは瞳を眇めて見つめる。

「驚いたんだ。そんな契約をしている人は今まで見たことも聞いたこともなかったから 」
「えっ...えっと....その話一体どこで...」
「......」

何故彼女が到底知り得ない話を何ともない口ぶりで話しているのかと、驚きと困惑の中絞り出した言葉が返ってくることは無く、ただただマキマはじっとなまえを見つめるのみだ。その視線が酷く恐ろしいものに感じてなまえの両腕の皮膚が粟立つ。
そもそもなまえはマキマを苦手としていた。それは親しい間柄の姫野が自身の恋敵として、主に飲んだ時に愚痴を零しているからというのもある。「アキくんはあんな糞女止めりゃいいのに〜」「あはは!糞女はやばいわ〜」とつい最近笑い飛ばしたばかりで若干の後ろめたさがなまえの心の中に残存していた。けれどそれは本当に若干しか作用してなくてなまえは己の直感でマキマのことを苦手に思っていた。本能が告げているからだ。マキマという女は相当やばい、と。

「契約のせいでエッチなことしてもイけない身体になっちゃったんだよねみょうじちゃんは 」

一歩、マキマがなまえへと近づき、なまえは右足で半歩後ろへ下がる。バクバクと高鳴って行く心臓の音はこれからの展開の序曲のようで、嫌な予感とが合わさってなまえの気分はすっかり悪くなる。一歩、また一歩なまえへと距離を詰めるマキマに、堪らず左足を引き摺った先でひやりとしたものが、ロッカーの扉が着替えの最中で露出したなまえの肩に触れ、そのまま背に押された扉はキィっと音を立てパタンと閉じる。退路は断たれたと、言葉通り肌で感じた肩から伝わる冷たさは今にも顔中から流れそうな冷や汗の温度に似ている。

「それが本当なのか私にもお試しさせてね 」

歩幅一歩分空いているかいないかの距離まで迫ってきたマキマによって放たれた言葉。それになまえの心臓は一気に凍りつき知らぬ間に握っていた掌からは冷や汗が噴き出した。そんななまえなんて露知らずといった様子でマキマは徐に腕を伸ばした。伸びた腕はなまえへと真っ直ぐに伸び、指はなまえの耳元の毛を掬う。マキマはそれを耳へとかけると露わになった耳朶を指の腹で軽く摩った。

「力抜いていいんだよ」

マキマに触れられ一気に身体が強張ってしまったなまえへと短く言うと耳に触れていた指を首筋へと下らせ、流れるように鎖骨を撫でる。そして肩から二の腕となまえの身体の輪郭をゆっくりと指先でなぞるとその手はそっとなまえの胸の上に置かれた。

「まずここを試さないとね。胸も立派な性感帯の一つだから」
「マッマキマさん....!?」

マキマの行動になまえは堪らず目の前のマキマを凝視し声を上げた。けれどそんななまえに一瞥もくれることなくマキマは置いた手に力を込めた。ビクッと驚きで震えるなまえを気に留める様子は微塵もなく、ぎゅうぎゅうと胸を揉み出すマキマ。一方のなまえは自分の言葉の一切はマキマに届かないだろうと諦めを感じてぎゅっと強く目を瞑っていた。早く終われ終われ終われ.....と繰り返し頭の中で呟き続け、マキマの手によってされるがままになっている自身の胸に意識がいかないように努める。すると程なくして突如手の動きが止まり胸から手が離れた。

「ひっ....!?」
「下着越しじゃ窮屈だね 」

終わりだという期待をなまえが抱く隙を与えること無く、マキマの手はするりとキャミソールの中に入り込む。人肌ほどの温度を持ったその手は腹を滑り上がりなまえの下着の、ブラジャーのアンダーベルトを押し上げるとキャミソール一枚越しになまえの両のふくらみが露わになる。そのふくらみに触れたマキマの手がゆっくりと、先ずは形を確かめるかのように動く。

マキマとなまえの間に立ち込める空気、それは公安本部の一室とは思えぬくらいに背徳的で倫理観が欠如している。そんなシチュエーションの中もぞもぞと肌着の下で素肌を、よりにもよってマキマに触れられているという事実は現実味がまるで無くなまえは眩暈すら覚えていた。

「っ....」

けれど肌を弄るマキマの手は現実をこれでもかとなまえへと突きつける。やわやわと輪郭を確かめるように動いていた手は次第に強く、そして緩急をつけて動き肌が敏感な反応を見せる。そんな悦を交えた刺激が与えられる度に腹から熱がせり上がりその熱を漏らさまいと、堪えようとなまえはきゅっと口を一文字に結ぶ。

「やっ....ぁ..!」

けれどそんな努力は気ままに動く手によって、ぴんっと人差し指で中心を弾いたマキマのお陰で無駄なものになり唇から熱と共に色づいた声が漏れる。続いて突起を摘んだマキマの指にクリクリと転がされ、ピリッと下腹部へと弱い電流のようなものが連続的に送られる。その度に潜めていた熱い吐息が唇から溢れ出て腰がくねりと捩れる。そんな風に身体が顕著な反応を示す度になまえは羞恥に襲われ、今すぐにこんな状況から、泣きべそをかきながらもマキマから逃れたくて仕方なかった。けれど本能が抗いようがないとなまえへと告げていて、必然的になまえはマキマから与えられる快感を甘受するしかない。

「あ、」

そんな皮肉な状況下に置かれたなまえの鼓膜を揺らしたのはマキマの気の抜けた声だった。「私ってばうっかりしちゃってたな 」とマキマは何かを思い出したかのような口ぶりで続け、弄っていた手をピタリと止めるとキャミソールから手を抜き出した。やっと...やっと終わった....?と生理的な涙の滲んだ瞳を恐る恐るといった様子で開眼すると直ぐにマキマと目が合った。眼前に佇むその無機質な瞳はなまえの目を映すと途端にすうっと伏せ気味に細まり、口元は緩やかな弧を描く。その面に背筋を冷たいものが駆け上がると同時になまえは悟ったのだった。

「胸は感じて当然だったね。だってみょうじちゃんがあげちゃった性感帯はココなんだから 」

終わりは愚か、これからが始まりなんだと。
ココ、という言葉を添えながらなまえの下腹部から真っ直ぐに降りた箇所を撫で上げるマキマ。割れ目から流れるように敏感な箇所を撫でられ布越しなのにも関わらず腰がピクンと跳ね、その素直すぎる身体の反応はなまえをどこまでも辱める。

「飲み会、ちょっと遅れちゃうって言っておいたから 」

スリッと再び其処を撫でながらなまえの耳へと唇を寄せたマキマの声のトーンは更衣室に入った時から気味が悪いほどに変わっていない。その声音になまえは絶望と共に諦めと、そして頭の中にこれでもかと刻みつけたのだった。

マキマさんは本当に底無しに恐い女の人だ、と。