今日の天気は快晴です

朝食を済ませたけれど今日はなんだかこのまま部屋に帰るのもなんだかな……と思い、ここに来て以来行っていなかった一階へと降りてみた
とりあえず行く宛もなくブラブラと廊下を歩いていると中庭へと続く扉が目に入った

今日はいい天気だし、中庭の散歩でもしてみようかな。
兄様も父様もいない本部なら中庭に出るくらいなら大丈夫だろう、なんて悪戯心で考えていると背後から声がかかる



「やぁティア嬢、おはよう」
「アヤカ様!おはようございます、今日もいい天気ですね」
「そうだね。こんな日は外を散歩したいなぁ」
「お散歩いいですねぇ」
「良かったら食後の運動がてら、散歩にでも行かないかい」
「私と……ですか?」
「おや、私の前にいるのはティア嬢だけだが……嫌なら断ってくれて構わないよ」
「い、いえ!是非ご一緒させてくださいっ」
「良かった」



クスリと微笑みながら聞いてくれるアヤカ様は聖女のような、そんな優しい雰囲気を纏っている

お散歩に誘って頂くのはリアちゃん以外では初めてで……
嬉しいような気恥しいような擽ったい気持ちになります



「何か買い物に行くのもいいし、テラス席のある店で珈琲を飲むのもいいな」
「本部から出るのですか?!私はてっきり、中庭をお散歩するのかと……」
「外の店を回るのは嫌かな?」
「そ、そうではないのですが……。あの、リボーン様に聞いてみてもいいですか?」
「リボーンの許可は別にいらないと思うけど」
「い、ち応、聞いておきたくて……です」
「そう?それなら私も付いていくよ」



ーーーーー






「失礼するよ」
「し、失礼します」



アヤカ様が扉をノックし、返事を聞く前に開けて中に入る

中には十代目様とリボーン様、それに骸くんがいらっしゃいました



「アヤカ、返事を聞いてから入れよ」
「いいじゃないか別に。小さいヤツは嫌われるぞ?」
「全っ然小さくないからな!」
「やれやれ。ああリボーン、ティア嬢が聞きたいことがあるって」
「どうしたんだ」
「あ、あの……ですね」



ここに来るまでに心の準備をしていたつもりだったけれど、いざ口にするとなると心臓が少し暴れはじめた

聞いてもいいのかな……
迷惑になるかもしれないし……
どう、しよう

目線を下に向けて口を噤んでいると、リボーン様が此方に歩み寄りいつものように私の頭に手を置いた



「言いたいことがあるなら自分の口からちゃんと言え」
「………………わかっ、て……ます。…………怒らないですか?」
「俺がお前に怒ったことあんのか」
「ない……けど、あの、ね。…………アヤカ様がお散歩に誘ってくださったんです」
「おう。良かったじゃねェか」
「それで、お買い物……とか、お茶とかどうかなって……だから……」
「…………」



「そ、外に……出てみたいな………って…」



言ってしまった

昔、兄様に言って拒否された言葉
いつもは優しい兄様だけど、それだけは許してくれなかったコト
リボーン様はいつも優しい
優しいこの人にまで拒否されたら、私は……



「いいじゃねェか」
「……へ?いい、の……?」
「なんだ、却下されたかったのか?」
「そ、そうじゃない!そうじゃない……けど、兄様には外に出るのはダメだってずっと言われてきたから……」


私が言い終わる前にリボーン様が頭を撫でていたその手でそのままクシャクシャに私の頭を掻き回した

乱暴な手つきなのに優しくて痛くない



「ふあっ!?か、髪がグシャグシャになるから!」
「お前ェが余計なこと考えてるからだぞ」
「よ、余計なことって……」
「お前を呼びに行ったときに言っただろ。これは、チャンスなんだってな」
「……うん」
「兄貴と親父を見返すんだろ?お前が外に出ても大丈夫って思い知らせるんだろ?ここでは自由にすりゃあいいって言ったハズだぞ」
「自由……」
「アヤカが一緒なら心配ねェ。行ってこい」
「あ、ありがとうリボーン!」
「ふっ。世話の焼けるヤツだ」



昔、いくら望んでも手に入らなかったモノ
何でも与えてくれるお父様も、何でも聞いてくれる兄様も、絶対にして唯一二人が赦してはくれなかったコト

私が嫌いだからじゃない
私が大切だからあげられないって言われてきた
そんなにも私を大切にしてくれる二人を困らせたくなくて、ずっとずっと言えなくなってしまった私の願い

十年もの月日が流れて、今更と諦めていたのに……



「いつもリボーンは私の味方になってくれるね」
「おお。当たり前ェだ」
「ひゅーひゅー。お二人さん、そろそろいいかい?見ているこっちは恥ずかしくなってきたよ」
「チッ」
「おわ!?ごごごごめんなさい!!」




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