紫が似合う君へ 2/4
一方。
ゆきはブチャラティに休みを欲しい旨を伝え、まさかの許可が降りた為、イタリアから直線距離で5823kmのタンザニア連合共和国に訪れていた。
時間にすると約8時間の飛行機の旅である。
腰をバキボキ鳴らし、ゆきは照りつける日差しの中を歩き出した。
「しっかし暑っついわね〜。」
手で顔付近に風を送りながら、ベタつく髪を後ろに払う。
たらりと流れる汗をそのままにして、目的地である露店へとたどり着く。
「こんにちは、やってますか?」
「…いらっしゃい。」
はっきりとは見えないが、しゃがれた声とシワのよった手からして、老婆である事が分かる。
そして、その手に紫色の宝石がキラリと輝いていることから、自分が探していた人物であると確信した。
「あなたが、ダニアンさんですよね?」
そう言うとその老婆は、訝しげな顔をしてゆきを見た。
「…あんたは」
そう静かにぽつりと呟く。
「イタリアから来た、ゆきと言います。あなたのアクセサリーを買いに、ここまでやってきたんです。」
老婆はしばらく黙り込んだ後、重々しく口を開いた。
「あんたに売るアクセサリーは無いよ。…帰りな。」
無情にもそう言い放ち、老婆は再び顔を伏せる。
しかし、ゆきもここで諦める訳にはいかなかった。
わざわざこの為だけにここまで足を運んできたし、なんとしてもアクセサリーを手に入れなければならない理由があるのだ。
「…これでもですか?」
そう言ってゆきは、もう1人の"片割れ"を出す。
「それは…!スタンド…。そうか、あんたは…。」
老婆は驚き、ぽつり、ぽつりと言葉を発した。
そして今度は、しっかりとした目付きでゆきを見た後、老婆はにやりと笑った。
「いいだろう、あんたにアクセサリーを売ってやろう。…ただし。」
老婆の引っ掛かる言い方にゆきは首を傾げる。
「加工はあんたがするのさ。」
そう、老婆は悪戯に笑った。