紫が似合う君へ 1/4
「おいブチャラティ。…最近ゆきを見かねェが、アイツはまたどっかフラついてんのか?」
「ゆきか?…ゆきならしばらく休みをくれって言ったきり、まだ帰ってきてないな。」
「…なに?」
ピクリとアバッキオの眉間には、濃いシワが刻まれる。
「ここの所仕事もよく頑張ってるし、ご褒美として許可したんだが…。アバッキオにも行先を告げてないのか…?」
「あぁ…。あのあばずれ女も困ったもんだぜ。まぁ、見かけたら声掛けてくれや。」
「もちろんだ。」
レオーネ・アバッキオとゆきは、恋人であると同時にギャングでもあった。
恋や愛などとうつつを抜かしていれば、命を落としかねない危険な職業だ。
お互い大人な考えを持つ2人は、愛し合ってはいるが依存してしまわないように、適度な付き合いを意識をしていた。
そんな経緯もあり、仕事で遠方へ行く時でさえ連絡は取り合う事はなかった。
しかし。
「(…さすがに、会わなすぎじゃあねェか?)」
そう思ったアバッキオはブチャラティに聞くという行動をついに起こしたのだった。
結局それもあまり意味をなさなかったのだが。
行き交う人の中で、アバッキオは空を仰ぐ。
清々しい程に青い空とは正反対に、とんでも無く憂鬱な気分になる。
チッと舌打ちし視線を正面に戻す。
「…ったく、どこほつき歩いてやがるんだアイツは。」
ポツリと呟いたアバッキオの声は、寂しく辺りの騒音に巻き込まれて消えた。