「挙手制でいこうか」

しんとした部屋、教卓の上に立って、ぐるりと睨みつけるように、いや全員の顔を睨みつけながら口を開く。

「最初に言っておくが、これは制裁を加えるためのものではない。不名誉な噂が事実かどうかを確かめるためのものだ。わかっているな?」

はい!と揃った返事が返ってくる。それに頷き、本題の問いを出した。

「会長と性行為をしていないもの、挙手」

しゅばばばっと手があがる。いい返事だ。見渡すかぎり上がっている。

「では、逆。したもの」

恐る恐ると一、二本腕があがる。最近入ってきた田中だか中村だかいった奴らだ。スッと目を細めた。

「その二名、何時、何処でかを」
「えっ」
「っ……!」
「何か?」
「っ、詳細は風紀に話しています。そちらをあたってください。僕は、もう、思い出したくない」

俯きガタガタと震えている彼らに分かったと頷き、あらかじめ風紀のまともな奴らからいただいていた書類を見る。

「ふむ、これなら証明が可能だ」
「え……?」
「ぁ、いや、うそ」
「……今ならお前らも、その会社も助けてやる。」

とっくに想像はついていた。噂とそれを煽るような写真が出回ってから、死に物狂いで反証をかき集めた。少し叩いただけで大量に出る埃。生徒会に、あいつらに、嫌気がさした。

泣き崩れる二人。親衛隊の幾人かが、慰めにかかる。語られた内容に、求めていたピースが揃ったと、安堵の息を吐いた。




「……隊長、会長、具合はいかがですか」

ベッドの上の二人は動かない。会長の過労で衰弱しきった身体は、点滴から栄養を受けている。隊長の身体にはぐるぐると包帯がたくさん巻かれている。見れば見るほど後悔がうずまく。痛いほどに拳を握った。

「ちゃんと、お二人の無実を証明します。お二人のしてきた事も、しらしめます。お家にも、いかにお二人が努力したか、お伝えします」

じわりと瞼の奥が熱くなり、ぎゅっと眉間にシワをよせる。泣くな。泣いちゃいけない。

「学校も整えます。お二人が、帰ってこれるように。帰っていただけるように。……でも、でもきっと、お二人はあんな学校嫌だろうから、整えられても来るのは嫌でしょうから」

顔が歪む。お二人が眠っている時にしか言えないであろう自分が嫌だ。目を覚ましたら、もう一度言わなければならないのに。

「お二人は、転校先で、幸せになってください」

ぼたぼたと溢れた涙をそのままに、震えながら笑顔を作った。

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